2016.08.19

【リーガ開幕展望】エイバル エース移籍で得点力が大幅ダウン。乾はゴールという結果で存在感を示したい

「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

 リーガ・エスパニョーラを戦う20チームのなかで最低レベルの予算しか持たないエイバルにとって、今シーズンの目標はこれまでと同じ「残留」で変わらない。就任2年目を迎えるホセ・メンディリバル監督が「このクラブにいる人間は勘違いすることがない」と言うように、背伸びしようにも、届く範囲というのは限られている。それでも、彼らがスペイン国内で着実な成長を遂げているクラブの1つであるのは間違いない。

 わずか4年前まで、彼らが主戦場としていたのは3部リーグだった。しかし、そこから2年連続の昇格を成し遂げると、2014-15シーズンにはクラブ史上初めて1部に参戦。“奇跡のクラブ”として、多くの注目を集めた。ただし現実はそう甘くなく、同シーズンは最終節を終えて18位。2部降格が決定し、運は尽きたと思われた。

 ところが、残留圏にいたクラブが財政難による強制降格処分を受けたことで、棚ぼたでの繰り上げ残留を果たす。奇跡は確かに起きたのだ。しかし、そんな奇跡がいつまでも続くと勘違いすることはなかった。以降、エイバルは1部仕様のクラブに変貌すべく、本腰を挙げて強化に乗り出したからだ。

 昨シーズンの開幕前には、本拠地の拡張工事を完了。そしてシーズン途中には、新たな練習場をオープンさせた。また同じ頃には、年間予算をクラブ創設以降最高額に引き上げた。町の人口は3万人にも満たず、90年近い歴史を持つリーガにおいて「史上最もホームタウンの人口が少なく、最も小さいホームスタジアムを持つクラブ」という事実は変わらないが、積極的な投資はチームの成績にも確かに反映された。

 昨シーズンは前半戦を望外の6位で折り返すと、後半戦になって多少失速したとはいえ、最終節を迎える前に残留を決定。選手はもちろんのこと、フロントを含めたクラブ全員で正真正銘の残留を掴み取ったのだ。

初めて自力での1部残留果たした昨季はクラブ史上最高の1年となった [写真]=Getty Images

初めて自力での1部残留果たした昨季はクラブ史上最高の1年となった [写真]=Getty Images

 そうして迎えるトップリーグ3年目。今シーズンも、クラブに携わる全員の“チームワーク”と“ハードワーク”がエイバルの生命線となる。

 バスク人指揮官が志向するのは、前から積極的にプレスをかけるアグレッシブなスタイル。敵陣でプレーする時間をできるだけ増やし、サイドを起点に攻撃することで守備のリスクを回避するという基本的な考えは変わらない。彼らの技術レベルからして、ボールを保持する時間はそう長くならないため、攻守の切り替えを素早く行うことも徹底されている。そして選手にはまず、ピッチ上で“戦う”ことが求められる。「全員守備・全員攻撃」がモットーであり、今の監督である限りチームの方針がブレることはない。

 すでに戦術的なベースが固まっている以上、浮沈のカギを握るのは新戦力ということになる。エイバルは今夏も、フリートランスファーやレンタル移籍を駆使して、大量の選手を獲得。その数は二桁にのぼる。ただ、決して寄せ集めという訳ではなく、ブレーメンから獲得したスペイン人DFのアレハンドロ・ガルベスとヘタフェから獲得したスペイン人のMFペドロ・レオン、そして昨シーズンは共にレンタル契約でラージョ・バジェカーノに在籍したスペイン人GKのジョエルとポルトガル人FWのベベ、彼ら4人のニューフェイスはいずれもリーガ1部でのプレー経験が豊富で、戦力として確実に計算できる存在である。各々が早い段階でチームにフィットして、本来の実力を発揮できれば、昨シーズンのようなスタートダッシュを見せられるかもしれない。

昨季、18ゴールを挙げたボルハ・バストンは退団。新たな得点源の確保が急務となっている [写真]=Getty Images

昨季、18ゴールを挙げたボルハ・バストンは退団。新たな得点源の確保が急務となっている [写真]=Getty Images

 もっとも、1部生き残りに向けて最大のポイントは、“第2のボルハ・バストン”を見つけられるかどうか。昨シーズン1人で18ゴールを挙げたストライカーはレンタル契約だったために、1年で退団。彼に次ぐゴール数を挙げたセルジ・エンリクは今シーズンもエイバルでプレーするが、1部のカテゴリーで10ゴール以上を奪ったことがなく、爆発力にも欠ける。また、ここまでFWとして唯一の新戦力であるベベにしても、どちらかといえばウイングタイプであり、昨シーズンも得点(3)よりアシスト(7)の方が多かった。

 戦術がいくら高い完成度を誇ったとしても、ゴールを奪う作業は個のタレント力に左右される部分が大きい。メンディリバル監督もそれを承知しているからこそ、ストライカーをあと1人補強するようリクエストを出しているところだ。夏の移籍市場が終了する今月末までにシーズン2桁得点を期待できるようなFWを獲得できるか。ここから先はフロントの腕の見せ所でもある。

 ただし、エイバルはあくまで“スモールクラブ”であり、高望みはできない。ビッグネームの獲得など夢のまた夢だろう。そのため、現有戦力の中から少しでも多くのゴールを奪う選手が登場することが期待され、その1人が乾貴士ということになる。

 乾は昨シーズン、リーガ戦で27試合に出場(先発18試合、途中出場9試合)して、3ゴール、3アシストを記録。過去に多くの日本人選手が苦戦を強いられたスペインでの1年目ということを考えれば、及第点の成績を残したと言える。とはいえ、クラブ史上最高額の契約金で雇われた選手の数字としては、物足りなさが残ったのも事実だ。今夏は、サウール・ベルホンやケコというポジションを争っていたライバルたちが次々に退団したが、代わりにやってきたのはベベとP・レオンという実力者2人。エイバルのメインシステムが4-2-3-1か4-4-2であることを考えると、中盤サイドの2つのポジションを巡って、ペペ、P・レオン、乾の3人が熾烈なレギュラー争いを繰り広げることになるだろう。

リーガ2年目のシーズンに臨む乾には得点力が求められる [写真]=Getty Images

リーガ2年目のシーズンに臨む乾には得点力が求められる [写真]=Getty Images

 なお、彼ら3人に共通するのは、守備がそれほど得意ではないということ。それだけに定位置確保への評価軸は、ゴールに直結する仕事量ということになる。現状では、プレシーズン中に3ゴールを奪ったベベが、その他2人を一歩リード。一方、ノーゴールのままリーグ戦開幕を迎える乾は、ここからどれだけ得点に絡むことができるかが焦点となってくる。昨シーズンも序盤戦ではなかなか出場機会に恵まれなかったが、1つのゴールをきっかけとしてレギュラー昇格を実現しただけに、開幕戦からゴールを奪うことができれば一気に視界は開けるだろう。もちろん、なかなか結果を出せない場合は、ベンチで過ごす時間が多くなることを覚悟しなければならない。

 2年前の初昇格以降、積極果敢なチャレンジで進化を続けてきたエイバル。今シーズンは1部定着を見据えた重要な1年となる。そして、乾にとっても真価が問われる2年目だ。入団時に3年契約を結んでいるとはいえ、この1年間の成績次第では彼自身の残留も危うくなってくる。中心選手としてチームを残留に導く――今シーズンはまさにそういう活躍が求められている。

(記事/Footmedia)

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