2014.12.14

アンチェロッティ監督のカウンター戦術とレアルの公式戦20連勝

カルロ・アンチェロッティ
レアル・マドリードの指揮を執るアンチェロッティ監督 [写真]=Real Madrid via Getty Images

 12日、リーガ・エスパニョーラ第15節、レアル・マドリードはアウェーでアルメリアと戦った。9月16日のチャンピオンズリーグ・グループステージ第1節、FW柿谷曜一朗が所属するバーゼルとの対戦で5-1と完勝してから、リーガ、国王杯、CLと公式戦では負け知らずの19連勝を飾っている。

 20連勝を目指すレアル・マドリードは、MFイスコのミドルシュートで先制すると、前半から攻守に渡り激しい運動量で応戦していたアルメリアの選手の動きが、後半になって落ちたところをFWクリスティアーノ・ロナウドの駄目押しの2得点を含め4-1で勝利した。

 アルメリアは、監督の解任によってBチームのミゲル・リベラ氏が暫定的に指揮を執る。次期監督と言われるフアン・イグナシオ・マルティネス氏がスタンドから戦況を見守る中、敗れたアルメリアは9試合勝利から遠ざかり、勝ち点10で暫定的(注)ながら降格圏内の18位に留まっている。

(注)レアル・マドリードが、クラブワールドカップに参加するために、対アルメリア戦が金曜日開催なった。それ以外の試合は、14日から16日の間に行なわれるので、アルメリアが、暫定で18位に位置している。

■アンチェロッティ監督のカウンター戦術の特徴点

 2013年12月にスイスのジュネーヴで、欧州サッカー連盟内のクラブチームの監督が一同に集まる会合があった。その会合に参加した監督の中にカルロ・アンチェロッティ氏がいた。アンチェロッティ監督は、「カウンターアタックという戦略の積極的な採用が現代サッカーの戦術のひとつの大きなトレンドになっている」と、会合で話題になったと述べている。

 カウンターと一言で述べても、ゲームの中の置かれた状況によって様々なやり方がある。たとえば、成績が下のチームで戦力的に見ても相手に太刀打ちできないチームが、自陣に引きこもってボールを奪ったらすばやく前方にボールを送り込む「引いて守ってのカウンター」がある。アンチェロッティ監督が目指すカウンターは、そうしたカウンターではなく「組織的なカウンター」であると話す。彼が問題にしている点は、いかに数的優位を短い時間に作るのかということだ。

 バルセロナは、時間をかけてボールを回しながら数的優位を作り出そうとする。ポゼッションサッカーを志向するバルセロナとは、数的優位という言葉は同じでも概念がまったく違うのである。

 アンチェロッティ監督が志向する数的優位を実現するためには、味方がボールを奪った直後に相手がボールを奪い返そうとプレッシャーをかけにくるところを逆に利用して数的優位を作ることにかかっている。

■カウンターアタックを成功させるための約束事

 監督がチーム戦術を試合の中で成功させるためには、選手たちに約束事を提示してしっかりそれを守らせる必要がある。監督には、様々なタイプがいる。ロシア代表のファビオ・カペッロ監督は、選手とまったくコミュニケーションをとらないという点で有名なタイプである。カペッロ監督とは逆に、アンチェロッティ監督は選手とコミュニケーションをとるタイプの監督だ。アンチェロッティ監督は、選手たちが雑談している時間のロッカールームに入っていき、あるいはトレーニングの合間にも頻繁にコミュニケーションをとろうとする監督である。

 したがってチーム戦術の約束事は、ミーティングやトレーニングの中で口酸っぱく伝えられている。アンチェロッティ監督が考える、カウンターアタックの約束事に沿って、実際に、アルメリア戦で見られたカウンターアタックの場面を見てみよう。

 レアル・マドリードのシステムは[4-3-3]で、中盤が逆三角形になっている。逆三角形の底にはトニ・クロースがいてイスコアシエル・イジャラメンディが前に並ぶ。一方のアルメリアは[4-2-3-1]でFWトメル・ヘメドが1トップを務める。

 特徴的なシーンとして、11分50秒から始まる場面に注目してもらいたい。

【1】ピッチをワイドに広く(横の幅)使う。
 DFのペペが後方でボールをもらってドリブルを開始する。このときに、レアル・マドリードの両SBはタッチライン沿いに張ってポジショニングしている。

【2】ボールをサイドに持ち出す。
 ペペは、ドリブルで右サイドを駆け上がりセンターラインまで進行する。

【3】ボールホルダーを追い越して走り込む。
 ペペは、ボールをC・ロナウドにパスする。C・ロナウドは一度ぺぺにボールを返す。ペペは、今度は右サイドでポジショニングしているカリム・ベンゼマにボールを渡す。ボールホルダーのベンゼマを追い越して、C・ロナウドがDFの裏に走り込む。ベンゼマは、C・ロナウドがオフサイドにならないタイミングでC・ロナウドの前方にボールを送る。一瞬にしてC・ロナウドが相手DFと1対1の状況を作った。

【4】中央にいる選手が裏のスペースをアタックする。
 中央にいるガレス・ベイルは、C・ロナウドがDFの裏に走り込んだ瞬間にDFの斜め前を走って裏をとりバイタルエリアに侵入する。

【5】ボールと反対のサイドにいる選手はワイドなポジションを保つ。
逆サイドにいた左SBのマルセロはワイドにポジショニングして状況をうかがう。

■個人戦術や個人技術の優位性によって隠された組織的な戦術

 レアル・マドリードの選手たちがもっている個人戦術や個人技術の高さに目を奪われてしまう。たとえばこの試合でも見られた、ベンゼマがいったんオフサイドポジションにいて、味方がボールをパスする少し前に戻ってきて、オフサイドポジションから逃れた瞬間に、タイミングよく相手DFの裏に飛び出してフリーでボールをもらうシーン。または、先制点になったベンゼマからのパスを胸でトラップして足元に落として、横にドリブルしながらシュートコースを作っていくシーン。

 こうした個人の技術にしばしば見とれてしまうのだが、実は、公式戦20連勝を成し遂げた最も大きな要因は、アンチェロッティ監督の組織的な戦術を選手たちに実践させたことにあると思われる。

 上記で説明したように、カウンターアタックの【1】〜【5】までの約束事を選手たちが完璧に作り出していることを見れば、アンチェロッティ監督の技量の大きさがわかるというものだ。それも、技術が高い選手になればなるほど、個性的で独創的な思考の持ち主たちの集まりになってくる。そうした選手たちに約束事をきちんと守らせて勝利し続けることはとても難しい仕事になる。

 レアル・マドリードは、アンチェロッティ氏の監督としての技量によって支えられているのである。

文=川本梅花

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