史上初の“3アシスト”、歴代最高勝率、“赤い三連星”…歴史を塗り替え続けるアーセナルのスターたち

　プレミアリーグで首位を走るアーセナルが歴史を塗り替え続けている。現地時間12日に行われたプレミアリーグ第27節のフルアム戦でも新たな記録を生み出した。
 
　19年ぶりのリーグ制覇を目指すアーセナルは、敵地でフルアムを圧倒。開始直後から主導権を握ると、前半のうちに3点を奪い、3－0で危なげない勝利を収めた。前日に試合を行った2位マンチェスター・Cに「2」ポイント差まで迫られていたが、再びリードを「5」ポイントに戻して悲願のリーグ制覇にまた一歩近づいた。
 
　それでは、新たな記録が生まれたフルアム戦を振り返ろう。

[写真]=Getty Images、Offside via Getty Images
 

■「134年」の歴史で初の快挙

 
　今シーズンのプレミアリーグでわずか3敗のアーセナルは、とりわけ“ロンドン内”の試合で抜群の強さを見せている。宿敵トッテナム相手に9シーズンぶりのダブル（ホーム＆アウェイで勝利）を達成するなど、ロンドンダービーでは未だに負けなし。9試合を戦って8勝1分0敗の成績だ。ホームで勝ち切れなかった2月11日の第23節ブレントフォード戦（1－1△）を除けば全勝中だ。
 
　そのため、アウェイゲームに限ると、今季の“ロンドンダービー”は直近のフルアム戦を含めて5戦全勝。しかも、その5試合で11得点0失点の好成績を収めている。1888年に発足されたイングランド・フットボールリーグにおいて、アウェイゲームの“ロンドンダービー”で5試合連続の完封勝利は史上初。実に「134年」の歴史において初めての快挙を達成したのだ！
 
　ちなみに、今シーズンのアーセナルの“ロンドンダービー”は、次節にホームで行われるクリスタル・パレス戦を含めて残り3試合。このまま“ロンドンダービー無敗”でシーズンを乗り切るかもしれない。
 

■プレミアリーグ史上初の“3アシスト”

 
　アーセナルでは1月にブライトンから加入した28歳のベルギー代表FWレアンドロ・トロサールがシーズン後半戦の起爆剤となっている。獲得を狙っていた22歳のウクライナ代表FWミハイロ・ムドリクをチェルシーに横取りされたため、仕方なく引き抜いたトロサールだが“代役”以上の活躍を見せている。
 
　ムドリクがチェルシーでプレミア6試合に出場して0ゴール1アシストに留まるなか、トロサールはアーセナルで9試合に出場して1ゴール5アシストをマーク。そのうち3アシストを今節のフルアム戦で記録した。トロサールは21分にCKからガブリエウ・マガリャンイスのゴールを演出すると、5分後には左サイドでのドリブル突破からファーサイドにクロスを送り、ガブリエウ・マルティネッリのヘディングシュートをアシストした。さらに前半アディショナルタイムには、再び左サイドからピンポイントクロスでマルティン・ウーデゴーアのダメ押しゴールをお膳立てし、アシストによるハットトリックを達成した。
 
　今シーズンのトロサールはブライトンに所属していた10月にリヴァプール戦で3ゴールを決めており、1シーズンのうちに「1試合3ゴール」と「1試合3アシスト」を達成したことになる。データサイト『Opta』によると、これは2012－13シーズンのサンティ・カソルラ（当時：アーセナル／現：アル・サッド）以来の快挙だという。
 
　それどころかトロサールの3アシストは、プレミアリーグ初の快挙でもあったそうだ。1992年に発足されたプレミアリーグにおいて、アウェイゲームで前半のうちに3アシストを達成したというのは史上初の記録だったという。
 
　トロサールの活躍にはチームメイトもご満悦だ。試合後にウーデゴーアは「彼はチームに素晴らしいものをもたらした。正しい判断でパスを出してくれるので、一緒にプレーするのが楽しいんだ」とトロサールを大絶賛している。
 
　チームを率いるミケル・アルテタ監督も「ボックス内は密集しており、多くの選手が焦ってプレーしてしまう。しかし彼はその逆なんだ。冷静に味方を見つけ出してくれる。フットボールIQが高く、我々のスタイルをすぐに理解してくれた」と試合後の会見でトロサールを称えた。さらに「彼は3日前までケガを負っていた。あと1週間ほど休んでもおかしくなかったが、強い意志で早期復帰を目指してくれた。今日は彼が必要だったので、本当に大きかったね」と語り、同選手の意欲の高さに関心していることを明かした。
 
　なお、この試合ではブラジル代表FWガブリエウ・ジェズスがFIFAワールドカップカタール2022で負ったひざのケガから待望の復帰を果たしたが、トロサールの活躍を受けて「ジェズスはポジションを勝ち取らないといけないね。選択肢があるということは素晴らしい問題さ」とアルテタ監督も笑みをこぼした。
 

■歴代最高の勝率

 
　そんなアルテタ監督にとってもフルアム戦は記念すべきゲームとなった。2019年12月にアーセナルの監督に就任した若きスペイン人指揮官は、今回の勝利が同クラブでの通算100勝目。168試合で100勝（24分け44敗）を達成した。アーセナルの公式サイトによると、勝率「59.5％」はクラブ史上最高の勝率だという。クラブ史に燦然と輝く偉業を成し遂げたハーバート・チャップマン氏やアーセン・ヴェンゲル氏といった歴代の名将よりも高い勝率を収めているのだ。
 
　100勝についてアルテタ監督は「素晴らしいし、私も嬉しいが、これはタイトルじゃないからね。まだまだ成長しないといけないよ！」と謙虚な姿勢を忘れなかった。
 
　ちなみに、アーセナルは「100勝」と発表しているが、そのうち2勝はPK戦によるもの。厳密にはPK戦は引き分け扱いなので、本来はまだ98勝なのかもしれない…。
 

■赤い三連星

 
　チームの主将を務めるノルウェー代表MFウーデゴーアは、フルアム戦のゴールが今シーズンのプレミアリーグ10得点目。昨シーズンのの7ゴールを大幅に更新している。アーセナルではマルティネッリ（12ゴール）とサカ（10ゴール）も今シーズンのプレミアリーグで2桁ゴールを達成している。
 
『Opta』によると、今シーズンの欧州5大リーグで2桁ゴールを決めている選手が3名もいるのは、アーセナルのほかにリーグ・アンのパリ・サンジェルマン（PSG）だけだという。アーセナルの“赤い三連星”は、キリアン・エンバペ、ネイマール、リオネル・メッシの世界的3トップと肩を並べる存在になったのかもしれない。

（記事／Footmedia）