三笘薫も選出！　英解説者が選ぶプレミアリーグ年間最優秀選手の候補を紹介

　今シーズンのプレミアリーグは終盤戦に差し掛かったところ。ここからがシーズン佳境とも言えるが、3月に入ると年間最優秀選手などの個人賞の投票が始まりだすという。そこで、英国放送局『BBC』の解説者が今シーズンの年間最優秀選手の候補6名を選んでいるので紹介しよう。

　まず、イングランドには伝統的に2つの「年間最優秀選手賞」が存在する。1つ目は1947－48シーズンから続く、最も歴史ある記者協会（FWA）の年間最優秀選手賞だ。こちらは記者の投票によって選ばれる。そして、もう1つは1973－74シーズンに始まった選手の労働組合であるプロ選手協会（PFA）主催の年間最優秀選手賞である。これは現役選手たちの投票によって決まるもの。長らくFWA年間最優秀選手賞が最も栄誉あるとされてきたが、近年ではPFA賞の価値の方が高いという意見も聞かれる。

　今回、『BBC』で解説を務める元イングランド代表DFマイカ・リチャーズ氏（34歳）が、PFA年間最優秀選手の候補として6名の選手を挙げた。リチャーズ氏は現役時代にマンチェスター・Cで活躍し、イングランド代表13キャップ。2012年には英国代表としてロンドン五輪にも出場した。2019年に引退してからは『BBC』のみならず、その陽気なキャラクターで英国『Sky Sports』や米国『CBS Sports』といった複数の放送局で解説者として活躍している。

　そんなリチャーズ氏が今季の年間最優秀選手の候補として6名を選出。今シーズンの“顔”を選ぶわけだから、もちろん名プレーヤーばかりがずらりと並んだ。そんな中で「ワイルドカード」としてブライトンに所属する日本代表MF三笘薫（25歳）も選出されることに！

　それでは選考理由と共に「年間最優秀選手の候補6名」を紹介しよう。

[写真]＝Getty Images

■MFカゼミーロ（マンチェスター・U／ブラジル代表）

　まずはマンチェスター・U再建の立役者の一人とされるブラジル代表MFカゼミーロ（31歳）が選出された。昨年8月にレアル・マドリードから加入した世界的ミッドフィルダーは、中盤の軸として即座にチームにフィット。もちろんマンチェスター・Uを立て直した最大の功労者は今季からチームを率いるエリック・テン・ハフ監督だが、開幕2連敗を喫したチームの復調とカゼミーロの加入時期と重なったのは偶然ではない。

　今季マンチェスター・Uはプレミアリーグで6敗を喫しているが、カゼミーロが出場した18試合で3敗、彼が不在の7試合でも同じだけ負けているという。カゼミーロ出場時の敗戦率は「17％」だが、不在時になると「43％」まで引きあがるのだ。選考理由についてリチャーズ氏は「マンチェスター・Uのチーム全体に与えたインパクトが純粋に凄い」と説明。

「30歳にして新しいリーグに挑戦し、順応できるか、足は動くのか、ハングリーさは残っているのかという疑問符もあった。私も、運動量の多いハイプレスというテン・ハフ監督が目指すスタイルには合わないと思っていた。だが彼は、全ての懐疑的な声を黙らせた。今季マンチェスター・Uで傑出したパフォーマンスを見せており、セットプレーではゴールに迫り、チームの整とん役、そしてリーダーとして君臨している」

　さらにリチャーズ氏は自身の経験を振り返って「自分がマンチェスター・Cにいた頃、ダビド・シルバやヤヤ・トゥーレが加入した際に『実績が違うので彼らは信頼できる』と思ったことを覚えている。カゼミーロもマンチェスター・Uに同じ影響を与えている」と分析した。

■FWアーリング・ハーランド（マンチェスター・C／ノルウェー代表）

　昨夏ドルトムントからマンチェスター・Cに加入して以降、様々な記録を更新している“ノルウェーの怪物”も順当に選ばれた。FWアーリング・ハーランド（22歳）は、今季プレミアリーグで出場した最初の19試合で25ゴール。昨シーズンの得点王（ソン・フンミンとモハメド・サラー）の23ゴールをいとも簡単に超えて見せたのだ。

「ゴール数だけでなく、プレミアリーグに順応したスピードにも脱帽だ」とリチャーズ氏。「昨シーズンのマンチェスター・Cは、チャンピオンズリーグ準決勝のレアル・マドリード戦で終盤にDFを前線に上げる苦肉の策を取り、背番号9の不在を指摘された。その“答え”がハーランドなんだ。開幕時、リヴァプールに加入したダルウィン・ヌニェスとの比較が伝えられたが、それはヌニェスに気の毒だ。ヌニェス（23歳）は有望な選手で、偉大な選手の片鱗を見せ始めている。一方でハーランドは、すでに偉大な選手なんだ」

■MF三笘薫（ブライトン／日本代表）

　世界最高リーグのベストプレーヤー候補に日本代表のドリブラーも選ばれた。三笘薫を選んだ理由についてリチャーズ氏はこう説明する。「今回選んだ選手のうち、他の5名は実際にPFA年間最優秀選手の候補に選ばれるだろう。三笘については、ちょっとした“ワイルドカード”だ」

　MFケヴィン・デ・ブライネ（マンチェスター・C）、MFトーマス・パルティ（アーセナル）、FWイヴァン・トニー（ブレントフォード）、FWハリー・ケイン（トッテナム）、MFジョアン・パリーニャ（フルアム）といった今シーズン活躍している選手たちの名前を出しながらもリチャーズ氏は三笘を選出。

「実質的にドリブルの学位を取得したのもいいね」と筑波大学での卒業論文のテーマが「ドリブル」だったことにも触れて三笘薫を絶賛。「3、4試合ほど絶好調という選手はいるが、三笘の場合は毎週のように活躍している。必ずゴールやアシストを記録するわけではないが、常に敵を抜き去ってしまうのさ」

　ちなみに、今季プレミアリーグで敵陣ボックス内での一対一のドリブル突破回数が最も多いのが三笘薫（17回）だという。

■MFマルティン・ウーデゴーア（アーセナル／ノルウェー代表）

　当然、首位を走るアーセナルの司令塔も選出された。MFマルティン・ウーデゴーア（24歳）は今季プレミアリーグで9ゴール6アシストと結果を残しているほか、オープンプレーからのチャンス演出数はマンチェスター・UのMFブルーノ・フェルナンデスやマンチェスター・CのMFデ・ブライネに次いでリーグ3位（47回）だという。

「中盤の原動力としてアーセナルを優勝候補に押し上げた」とリチャーズ氏は絶賛し、マンチェスター・Cで活躍した同じ“レフティ”を引き合いに出した。「ウーデゴーアを見ていると、マンチェスター・C時代に私のチームメイトだったダビド・シルバ（元スペイン代表）を思い出す。ギャップに入り、ボールを受けて試合を支配する。それを無造作にやってのけるのさ。だからウーデゴーアのプレーが大好きなんだ」

■FWマーカス・ラッシュフォード（マンチェスター・U／イングランド代表）

　マンチェスター・U復活の象徴であるFWマーカス・ラッシュフォード（25歳）も選ばれた。選考理由についてリチャーズ氏は得点数だけでなく、そのゴールの重要度も指摘。「ワールドカップ以降、21試合のうち15試合でゴールを決めており、そのうち10ゴールは先制点か決勝点なんだ」

　昨シーズンの不振の原因については「チーム再建のプレッシャー」に加え、FWクリスティアーノ・ロナウドの影響があったと考察。「（11月に退団した）C・ロナウドがいた頃は、彼の影響もあったのだろう。ラッシュフォードは、自分がゴールを狙うべきか、C・ロナウドにお膳立てすべきなのか迷っていたはずだ。それが今は、彼が主役なんだ。だから自信を取り戻したのだろう」

　ラッシュフォードは今季ここまで公式戦25ゴール。2019－20シーズンの22ゴールを超えて、すでに自己ベストを更新している。「今季は非凡な活躍をしているが、彼ほどの能力があれば、これくらいは期待してしまう」と、リチャーズ氏は今の活躍が基準になることを願っているそうだ。

■FWブカヨ・サカ（アーセナル／イングランド代表）

　ラッシュフォードがマンチェスター・U復活の象徴なら、アーセナルの覚醒の象徴はFWブカヨ・サカ（21歳）だろう。アーセナルの19年ぶりのリーグ制覇の鍵を握るのは、今シーズンすでに直接ゴール関与数（10ゴール9アシスト）の自己ベストを更新しているサカだ。

「プレー全般もそうだが、鋼のメンタルも驚異的だ。重要な場面でのPKを蹴るし、肝心なときに力を発揮する。アーセナルが優勝を狙えている要因の1つがサカだ」とリチャーズ氏も手放しで称える。「ウィンガーだが、マンチェスター・Uのアントニーなどとは違い、常にプレーに絡んでいる。今季アーセナルが優勝するかどうかかかわらず、サカは信じられないような活躍をしているし、まだまだ成長し続けている。」

　こうして、三笘薫を含めて6名の世界的プレーヤーを選出したリチャーズ氏。最終的には「アーリング・ハーランドが受賞」と予想したが、果たして実際の年間最優秀選手賞はどうなるのだろうか？

（記事／Footmedia）