2019.05.08

【先行公開】MR.MOTIVATOR ユルゲン・クロップ「モチベーションの勝利」

サッカーの「物語」を届け、読者の「見聞」を広げる総合サッカー雑誌

 チャンピオンズリーグ準決勝、2ndレグ。ユルゲン・クロップ率いるリヴァプールが、見る者の心を揺さぶる大逆転劇を演じた。クロップは試合後、「Fxxxing mentality giants」という言葉とともに選手たちの精神力を称えたが、彼らをモチベートして、奮い立たせたのは他でもないクロップだ。

 5月15日に発売する月刊誌『SOCCER KING』6月号では、「The Art of Motivation」(モチベーションの技法)と題し、フットボール界における「モチベーションの重要性」に迫っている。言うまでもなく、表紙を飾るのはクロップだ。世紀の大逆転劇が起きたわずか数時間前に完成した誌面から、クロップのコンテンツを一部先行公開しよう。

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

文=寺沢 薫

 マネジメントスキルとリーダーシップは、似て非なる言葉だと思う。組織のリソースやリスクを管理・統制し、物事がうまくいく仕組みを作る(またはそのための規律を守らせる)のがマネジメントだ。これに対してリーダーシップとは、新しいビジョンを定め、自らが背中を見せながら組織をある目標に向かって前進させていく類のものをいう。

 フットボールの監督にはどちらの資質も必要だし、どちらかに優劣をつけるつもりはない。だが、どちらが色濃いかは監督によってそれぞれで、マネージャー色が強い監督がいれば、リーダー色が強い監督もいる。この場合のリーダーを「モチベーター」と言い換えたとき、真っ先に挙がるのはユルゲン・クロップの名前だ。

 クロップが当代きっての「モチベーター」として名を馳せている理由はいくつかある。たとえば、3年前の4月14日に行われた試合がその一つだ。

■「ゲームを変えるのは“感情”だ」

 それはまるで、イスタンブールで奇跡を起こした夜のようだった。この日、リヴァプールはヨーロッパリーグの準々決勝でクロップの古巣ドルトムントと戦っていた。1stレグは1-1のドローに終わり、アンフィールドでの2ndレグで、リヴァプールは前半に2失点を許した。勝ち抜けるためには、残り45分間で3ゴールを奪う必要がある。諦めムードが漂っていたハーフタイム、クロップは熱っぽく口を開いた。

「私はそこにいなかったが、今テレビで解説をしているような少し上の世代のOBたちは、0-3という状況から同点に追いつき、ヨーロッパを制覇した。どんなに難しくても、逆転は可能だ。チャレンジしよう。子供や孫に語り継げるような瞬間を作ろう。そしてファンにスペシャルな夜を届けるんだ!」

 そんな言葉をかけられて、再びピッチに立った赤いユニフォームの選手は見違えるようなプレーを見せる。リヴァプールはこの試合に3-2で勝利し、歴史に残る逆転劇を再現した。2005年のイスタンブールでは、スティーヴン・ジェラードのゴールとサポーターを煽る姿が起爆剤となったが、このときはクロップという指揮官の“チームトーク”がそれだった。

「フットボールでは人生と同じように、根性を見せなければならない瞬間がある」とクロップは言う。もちろん戦術は大事だし、戦術なしで勝利はない。だがクロップの場合、それは「ハートが伴った戦術」でなければいけない。「ゲームを変えるのは“感情”だ」というのが彼の持論だ。

 だからクロップは、いつだって人の感情を煽る。上述したドルトムント戦が終わったあとのインタビューは「なぜだか分からないが右腕が痛いよ」という一言から始まった。原因はガッツポーズをしすぎたからだ。トレードマークの眼鏡を壊したのも一度ではない。ゴールが決まれば、彼は誰よりも高く跳び、顔を真っ赤にして叫び、のこぎりを引くみたいに腕を振る。試合終了間際のゴールに喜んで選手たちとめちゃくちゃに抱き合い、喜ぶあまり肉離れをしてしまったことだってあったし、試合中にもかかわらずGKのアリソンとハグをするためピッチに駆け入り、協会から罰金処分を食らったこともあった。毎試合スタジアムに足を運ぶファンと同じように一喜一憂する、その情熱的なパフォーマンスは彼の真骨頂だ。

 自分がピッチに立っているかのように振る舞うクロップについて、ジェイムズ・ミルナーは「すべてのボールを一緒に蹴っている感覚」だと語っている。「とにかく熱いし、疲れている時間帯に監督がタッチラインの外で飛び跳ねているのを見ると、誰もがもっと走ろうという気持ちになるんだ。それに、観客の乗せ方もうまい」

 今年4月、2-0で勝利したチェルシー戦では、選手たちの足が止まり始めた終盤にアンフィールドの観客を煽り、選手への後押しを促した。別の試合では、選手のミスに落胆するサポーターに怒りをぶちまけ、「ため息よりも応援を」とばかりに、スタジアムの空気を強引に盛り上げたこともある。

■クロップのシンプルな真理

 クロップがこれほどまでに周囲を感化させ、モチベーションを高めることができる秘訣は「連帯感」だ。・・・(続きは本誌で!)

『SOCCER KING』2019年6月号

The Art of Motivation モチベーションの技法

発売日:2019年5月15日(水)
定価:980円(税込)/発売:(株)朝日新聞出版
「SOCCER KING公式Twitter」@worldsoccerking

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