2017.06.07

これを読めばすべてわかる! プレミアリーグ 16-17シーズン「全クラブ通信簿」(10位~20位編)

16-17シーズンのプレミアリーグを総括 [写真]=Getty Images
「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

 誰が言ったか、「監督の世界選手権」。2016-17シーズンのプレミアリーグは、伏兵レスターの優勝で混迷を極めた前シーズンとは打って変わって、希代の名将たちが率いるビッグ6による完全な支配体制が築かれた。

 その意味で言えば大きな波乱はなかったが、遠くから見たら“凪”の海も、近づいてみたら“時化(しけ)”だったなんて場合もある。つまり6強内の勢力図には数々の驚きがあった。アントニオ・コンテのチェルシーは予想を上回る強さを見せた。優勝候補筆頭だったペップ・グアルディオラや、欧州カップ戦不参加の優位性を持っていたユルゲン・クロップを抑えて輝いたのはマウリシオ・ポチェッティーノ。一方でアーセン・ヴェンゲルは来てから初めてチャンピオンズリーグ出場権を逃し、ジョゼ・モウリーニョも“帝国の逆襲”ならず。プレミアの盟主だったアーセナルとマンチェスター・Uが、そろってトップ4を陥落したのは初めてのことだった。

 6強が例年よりも高いポイント水準で上位を争った一方、それ以外の14チームは7位エヴァートンを除いて勝ち点が伸びなかった。ボトム3のハルとノースイースト組(ミドルズブラ&サンダーランド)を除いた10チームはいずれも勝ち点「40」台で、このミドルエリアが大混戦だったのも今季の特徴だ。その中でシーズン途中での監督交代に踏み切ったレスター、クリスタル・パレス、スウォンジーが、それを機にチームの運命を大きく変えることに成功したのが印象深かった。


■11位:ウェスト・ハム(55点)
 7位と躍進した昨季の再現を。意気揚々とシーズンに臨んだウェスト・ハムだったが、EL予選敗退、そしてプレミア開幕6試合でまさかの5敗とスタートダッシュに大失敗し、ものの見事にファンの期待を裏切った。
 アップトン・パークから引っ越した広大な新本拠地ロンドン・スタジアムの水になかなか慣れることができず、ユーロ2016を決勝まで戦って調整に出遅れたディミトリ・パイェの気まぐれにも振り回された。そのパイェとは1月にケンカ別れ。シーズン途中でエースを失ったチームは他にも、アンドレ・アイェウ、マイケル・アントニオ、アンディ・キャロル、アンジェロ・オグボンナといった主力が続々と負傷離脱し、1年を通して台所事情が苦しかった。
 3月から4月にかけて5連敗を喫したことでようやく尻に火がついたのか、スラヴェン・ビリッチ監督は「3バック採用」という答えをやっとの思いで見つけ出した。第36節では気迫のこもったハードワークでトッテナムを1-0と撃破。同じ街のライバルから優勝の望みを奪い去り、新スタジアムのファンを熱狂させることができたが、ベストゲームが5月ではいささか遅すぎる。ラスト1カ月の逆襲で帳尻を合わせたが、総じて失望のシーズンだった。


■12位:レスター(50点)
 奇跡の代償は長すぎる「二日酔い」。CLとの両立で昨季ほどのインテンシティを発揮できなかった部分はあるが、それにしたって前半戦の不振は度が過ぎた。
 エンゴロ・カンテの後釜を確保できなかったこと、コロコロとチームを入れ替える“ティンカーマン”ぶりが選手の混乱を呼んだことはクラウディオ・ラニエリ監督の失態だった。だが、選手たちにも責任はある。ジェイミー・ヴァーディ、リヤド・マフレズ、ウェズ・モーガンを筆頭に2年目のジンクスにやられた選手が続出。昨季と同等レベルのハイパフォーマンスを継続したのは、最終的にクラブ年間MVPに輝いたGKカスパー・シュマイケルくらいだろう。
 降格ゾーンが近づくにつれて求心力を失っていったラニエリは、2月にとうとう解任。ただ、この苦渋の決断をターニングポイントにできたのが救いだった。クレイグ・シェイクスピア暫定監督は「原点に立ち返る」ことを強調し、チームを昨季の姿に戻すことに成功。政変後の初戦となったリヴァプール戦に3-1で勝つと、そこから5連勝で一気に安全圏へ。欧州でも強豪セビージャに逆転勝利を飾り、敗退こそしたがアトレティコ・マドリー相手にも白熱の接戦を演じ、初出場で8強と爪痕を残した。と、このように終わってみればまずまずの成績だったが、その道中はまるでジェットコースターだった。


■13位:ストーク(40点)
 3季連続「9位」の壁を破り、欧州カップ戦出場権獲得に挑戦するはずだった4年目のマーク・ヒューズ監督だったが、待っていたのはトップ10陥落。勝ち点50を切ったのも、2ケタ順位に沈んだのも4シーズンぶりだった。残留争いにこそ巻き込まれなかったが、予算的にも戦力的にも、もはや降格候補とは呼べないリーグの“中堅どころ”なのだから、期待外れな1年だったと言わざるをえない。
 目利きで知られるヒューズ監督の補強が、珍しく外れくじばかりだったのが痛かった。リヴァプールから加入したジョー・アレンこそトップ下で攻撃の要になったが、決定力不足解消の切り札として、それぞれ夏と冬に獲得してきたウィルフリード・ボニー、サイード・ベラヒーノという2人のストライカーが、2人合わせてわずか2ゴールだったのは大誤算だった。
 マルコ・アルナウトヴィッチやジェルダン・シャキリという強力な仕掛人がいても、頼れるスコアラーなしで格上クラブと渡り合うのは難しい。順位表で自分たちよりも上にいる12チームとの対戦で、勝利できたのは最終節サウサンプトン戦ただ1試合だった。過去には数々のアップセットを演じてきたストークだったが、安定と引き換えに往年の“クセモノ”ぶりは徐々に失われているのかも……。


■14位:クリスタル・パレス(35点)
 トップ10はノルマと言うべき戦力をそろえながら、10月の6連敗で残留争いの仲間入り。ウィルフレッド・ザハや新加入のクリスティアン・ベンテケのハイパフォーマンスによってゴール数は稼げるものの、守備の崩壊を食い止められなかったアラン・パーデュー監督がクリスマス前に更迭された。
 後任を託されたのは“残留請負人”のサム・アラダイス。9月にスキャンダルでイングランド代表監督の座を追われたビッグ・サムは、名誉挽回を懸けたミッションを達成すべく、冬の移籍市場でママドゥ・サコー、パトリック・ファン・アーンホルト、ジェフリー・シュラップ、ルカ・ミリヴォイェヴィッチと即戦力を4人も加えてチームを立て直した。とりわけ、リヴァプールで干されていたサコーをローンで獲得したことが運命の変わり目に。彼が加入して守備が見違えるように粘り強くなり、勢いづいた4月にはチェルシー、アーセナル、リヴァプールを相手に次々と番狂わせを起こしてなんとか生き残りを果たした。
 終盤戦の逆襲劇は鮮やかだったが、それでも「神様、仏様、アラダイス様」だった感は否めない。なお、その救世主は汚名を返上したシーズン終了後、辞任と監督業から退く意向を表明している。


■15位:スウォンジー(45点)
 1シーズンで3人の監督がベンチを預かったという事実が、スワンズの混乱を物語っている。まずは開幕7試合で5敗を喫したフランチェスコ・グイドリンが、自身の誕生日だった10月3日に解任された。続いてオーナーのコネでやってきたボブ・ブラッドリー監督は、アメリカ式が選手にもファンにも受け入れられず、わずか85日でクラブを去った。幸運だったのは、“3人目の正直”でいい人材を発見できたこと。チェルシー、パリ・サンジェルマン、バイエルンでカルロ・アンチェロッティの右腕を務めてきたポール・クレメント新監督は、師匠譲りの巧みなマネジメントで選手たちを一致団結させ、最下位にいたチームをどん底から救った。
 最大の問題は守備陣で、シーズン70失点を喫して残留できたケースはプレミアが38試合制になってから2チーム目だった。クレメント就任後に大量失点が目に見えて減ったことも残留を成し遂げた要因だったが、翻って攻撃陣はどうだったか。プレミア初挑戦で15得点のフェルナンド・ジョレンテが輝いた。しかし、最大の功労者はなんといってもギルフィ・シグルズソンだろう。残留争いに苦しむチームで9ゴール13アシストは見事のひと言。彼の存在がなければ、スワンズは間違いなく降格していた。


■16位:バーンリー(80点)
 10勝3分け6敗、26得点20失点だったホームでの成績はリーグ9位。一方でアウェー成績は1勝4分け14敗、13得点35失点で19位。内弁慶の典型といえるチームだった。
 だが、その“内での弁慶ぶり”がとにかく凄まじかった。リヴァプールやエヴァートン相手に金星を挙げ、チェルシーからドローをもぎ取った要塞ターフ・モアでの強さが大きなアドバンテージとなり、一度も降格ゾーンに落ちることなく悠々と残留を達成。クラブの規模や戦力値、それに過去2度のプレミア挑戦はいずれも1年で2部に逆戻りしていたことを考えれば、ショーン・ダイシ監督がプレミアリーグ年間最優秀監督の候補者にノミネートされたのも納得である。
 残留は選手全員が一丸となったハードワークの賜物だったが、中でもチームをけん引する存在だったのが、主将で守護神のトム・ヒートン、センターバックのマイケル・キーンの両名だった。粘り強い守備を束ねた彼らはそろってギャレス・サウスゲイト代表監督からお呼びがかかり、バーンリーから同時に2選手がイングランド代表に呼ばれたのは、実に1974年以来、42年ぶりという快挙だった。


■17位:ワトフォード(25点)
 正直、今季のプレミアリーグで最も印象が薄かったチームかもしれない。エティエンヌ・カプーがダイナミックな攻撃参加を見せ、ロベルト・ペレイラが攻撃のアクセントになった前半戦こそまずまずの出来だったが、ペレイラが長期離脱となった12月中旬以降は10位〜15位の辺りをさまよい、残留争いに絡むわけでもなく、かといって上位を脅かすわけでもなく、地味で平凡なシーズンを過ごした。スポットライトが当たったのは、9月にマンチェスター・Uを、1月にアーセナルを破った2つのアップセットくらいか。
 開幕前はリーグに新風を吹き込むかと期待されたマッツァーリ流の3バックも、セリエA時代のライバルだったアントニオ・コンテが「3-4-3」でリーグを席巻し、他クラブもオプションとして3バックを次々と導入したことで、すっかり霞んでしまった感がある。
 イマイチ波に乗り切れなかったチームは、ラスト6連敗でシーズンフィニッシュ。特に最後の2試合は守備が崩壊し、チェルシーに4発、マンチェスター・Cに5発も被弾して最悪の印象だけが残った。案の定、気が短いイタリアのオーナーたちはたった1年でマッツァーリの解任を決定。ただ、彼の退団を嘆くサポーターもそう多くはない。


■18位:ハル・シティ(40点)
 8月13日の開幕戦で前年王者レスターを撃破すると、1日限りだったがクラブ史上初めてプレミア首位に立った。続くスウォンジー戦にも勝利して、マイク・フィーラン監督は8月の月間最優秀監督に輝いた。ところが9月から10月にかけての6連敗で真っ逆さまに順位表を転がり落ちると、12月にはとうとう一番下まで落下し、同じシーズンで首位と最下位を経験したプレミア史上8チーム目となってしまった。
 年明け直後に、クラブはフィーランからマルコ・シウヴァに指揮権をスイッチ。冬の移籍市場で主力だったロバート・スノドグラス、ジェイク・リヴァモアを引き抜かれたこともあり、英国では無名だったポルトガルの青年監督はかなり苦しい立場に立たされたが、新監督の下でチームは劇的な変化を見せた。2月、マンチェスター・U、リヴァプールとの連戦で1失点も許さずに1勝1分けと最高の結果を出して残留に望みを繋ぎ、4月に入ると一度は降格ゾーン脱出に成功。しかし、勢いもここまで。ホームでの好調をアウェーゲームに持ち込めなかったことが災いし、最後は力尽きて再び18位に転落。緻密な戦略とマネジメントで評価を高めたM・シウヴァ監督だったが、あと一歩で「大脱出」ならず。


■19位:ミドルズブラ(30点)
 8シーズンぶりのプレミアリーグに向け、準備は万全のはずだった。何しろ、アイトール・カランカ監督が2部時代から丹念に築きあげてきた守備組織が美しく整っていた。クリスマスまでに消化した18試合でわずか20失点。これは上位6強にもひけをとらない数字だった。その時点で順位は14位。過去のケースと比較しても、当時のボロは安全な場所にいるように思えた。
 ところが、とにかくゴールが遠かった。総得点「27」はリーグワースト。いくら失点を抑えても、1試合平均「0.7ゴール」で勝ち点を積み重ねていくのは難しい。それがたたって、クリスマス以降はリーグ戦16試合連続未勝利と大きくつまずいた。その16試合のうちノーゴールが10試合、1ゴールが5試合と得点力不足は深刻に。3月にはカランカ解任という“劇薬”も注入したが、コーチから昇格したスティーヴ・アグニュー暫定監督も雪崩を止めることはできず、2試合を残して降格が決まった。
 チーム全体の攻撃意識があまりに低く、期待されたアルバロ・ネグレドも、抜群の突破力が注目されたアダマ・トラオレも、組織重視のチームで中心選手にはなれなかった。攻撃陣は総じて苦々しい1年を過ごしたに違いない。評価を上げたのは会長の甥っ子でもあるDFベン・ギブソンくらいだった。


■20位:サンダーランド(15点)
 過去5季連続で、シーズン途中の監督交代という荒療治を施してプレミアに生き残ってきたブラックキャッツだったが、首脳陣が我慢してデイヴィッド・モイーズのクビを切らなかった今季はついに“残留力”を発揮できず。2部ではせっかくニューカッスルが1年でのプレミア復帰を決めたのだが、ノースイースト・ダービーは来季もまたお預けである。
 11月まで1勝もできず、シーズン全体で最下位にいた日数は189日間。チームの型がまったく定まらないまま時間だけが過ぎていき、全日程のおよそ7割を順位表の底で過ごしていたのだから降格は必然だった。2月1日以降は110日間も最下位から這い上がれず、そのまま4節を残して最初に降格が決定。採点するなら「5点」でもいいくらいだが、そこは前線で孤軍奮闘した34歳、ジャーメイン・デフォーのゴール数に敬意を示し、あえて「15点」をあげたい。
 代表に引き抜かれたサム・アラダイス前監督の後釜を開幕直前に任されたというエクスキューズはあったにせよ、モイーズの元教え子で固められたチームは単なる寄せ集めでしかなかった。1年前の夏、監督キャリアを再起動すべく満を持して4年契約を結んだモイーズだったが、シーズン終了後には辞任を発表。汚名挽回に向けたチャレンジはたった1年で幕引きとなった。

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