2016.05.27

これを読めばすべてわかる! プレミアリーグ 15-16シーズン「全クラブ通信簿」(11位~20位編)

「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

 イングランド・フットボールの歴史と常識がひっくり返ったシーズンだった。ミラクル・レスター、まさかのリーグ制覇。クラブ創設132年目の初優勝は、未来永劫語り継がれる歴史的快挙にして、世界中の話題をさらう世紀のサプライズとなった。

 一方では、完全崩壊でジョゼ・モウリーニョ更迭に踏み切ったチェルシーが前年王者の歴代ワースト順位となる10位に沈み、真逆の意味で常識を覆した。チェルシーほどではないにせよ、マンチェスターの2強にアーセナル、リヴァプールとビッグクラブはいずれも不完全燃焼のシーズンに。その間隙を縫うように、先鋭的なプレッシング戦術で観る者を楽しませたトッテナムが、最後までレスターと優勝争いを演じて大きなインパクトを残した。

 中小クラブではサウサンプトンとウェストハムが好補強と高品質なパフォーマンスで爽やかな風を吹かせ、初めて残留を勝ち取ったワトフォード、プレミア初挑戦ながら志の高さを見せたボーンマスと昇格組の健闘も光った。こうしたクラブの躍進に気圧される形で降格の憂き目に遭ったのが、アストン・ヴィラニューカッスルという歴史ある名門2クラブ。優勝争いから残留争いまで、漏れなく波乱と驚きに満ちた、記憶に残るシーズンだった。

Everton v A.F.C. Bournemouth - Premier League

■11位:エヴァートン(30点)
 シーズン18ゴールと結果を出したロメル・ルカク、8得点8アシストをマークしてたしかな成長を示したロス・バークリー。攻撃の2枚看板がそろってPFA年間最優秀ヤングプレーヤーの最終候補6名にノミネートされたにも関わらず、チームは目標としていたトップ4争いにまったく絡めなかったのだから、大いに失望のシーズンである。大事な場面になればなるほど集中力を欠き、ここ一番で踏ん張れない守備の拙さによって、彼らが演出したゴールはどれだけフイになったことだろうか。重度の“勝ちきれない病”の諸症状は、リーグ最多タイの「14分け」という数字によく表れていた。
 とりわけシーズン後半はホームで元気のないパフォーマンスが続き、ラスト6試合未勝利でグッディソンのサポーターはロベルト・マルティネス監督に容赦なく怒りをぶつけるようになった。さらにはレイトン・ベインズが「選手間にケミストリー(相互関係)がない」と発言するなど、もはやチームは空中分解。クラブは最終節を待たずして、ファンの要求通りにマルティネスの解任を発表した。
 かくして、デイヴィッド・モイーズ前監督に続く「10年計画」は、わずか3シーズンで崩れ去った。

Swansea City v Manchester City - Premier League

■12位:スウォンジー(50点)
 バフェタンビ・ゴミスの開幕4戦連発弾で無敗スタートを切った8月こそ期待を抱かせたが、直後の9月から12月までわずか1勝という“なぜか勝てない”スランプ期に突入。クラブはたまらず、夏の時点で「未来のイングランド代表監督」と持ち上げられていたガリー・モンク監督のクビを切った。
 新監督の選定が難航し、その後も暫定政権のまま降格ラインすれすれをさまようも、1月に経験豊富なイタリア人指揮官フランチェスコ・グイドリンがやってくるとようやく船が安定。8月以来沈黙したゴミスに代わってギルフィ・シグルズソンやアンドレ・アイェウが攻撃をリードし、グイドリン就任後の成績はリーグ7番目だったが、“安全第一”のアプローチがもたらした安定感と引き換えに、クラブの代名詞だった魅力的なパスワークは鳴りを潜めてしまった。
 スモールバジェットの小クラブにとって、残留は何よりの成果。だが、苦労して築き上げたスタイルを放棄したことで、選手時代を含めクラブ歴10年以上を誇ったモンクの解任は今なお賛否両論だ。グイドリン続投が決まった来季のスワンズも、華麗な白鳥ではなく泥臭いアヒルなのかもしれない。

Watford v Aston Villa - Premier League

■13位:ワトフォード(60点)
 今シーズン、9年ぶりのトップリーグ復帰を果たすと、シーズンを通して一度も降格圏に沈むことなく、プレミアでのクラブ最高勝ち点となる45ポイントを獲得。プレミア挑戦3度目にして、初の残留を達成した。またFAカップでも、2007年以来のベスト4進出。1881年のクラブ創設以降で、最高の1年を過ごした。
 しかしクラブは、シーズン最終節を前にしてキケ・フローレス監督と袂を分かつことを決断。21日になって、かつてインテルを指揮したワルテル・マッツァーリの新監督就任を発表している。
 とはいえ、それがイタリア人のポッツォ・オーナーによる“ご乱心”かと言えば、そうでもない。勝ち点45の内訳をみると、前半戦の19試合で稼いだ勝ち点が29であるのに対して、後半戦のそれはわずかに16。後半戦の成績は、残留圏ぎりぎりの17位だった。冬の移籍市場では欧州で最も多くの補強費を費やしたにも関わらず、トロイ・ディーニーとオディオン・イガロの看板2トップを封じられると打つ手なしだったことも、キケ・フローレス監督の印象を悪くした。就任1年目で残した成績としては申し分なく、監督交代が吉と出るか否かは蓋を開けてみないと分からないが、致し方ない決断だったと言える。

West Bromwich Albion v West Ham United - Premier League

■14位:ウェスト・ブロムウィッチ(75点)
 背伸びをせず、手堅い守備とロングボールが基本の“ミッドテーブル仕様”で残留だけを目指したチームゆえ、降格の危機と無縁のまま14位フィニッシュはまさに狙い通りだった。得点数はリーグワースト2位、枠内シュート0本の試合がリーグ最多の7回で、サポーターは「退屈」と嘆く。だが、そんな不満もどこ吹く風で“通常運転”を続け、7年連続となるプレミアの椅子を確保したトニー・ピュリス監督は、残留請負人の面目躍如を果たしたと言っていい。
 とはいえ、夏にトッテナム移籍を破談にされたエースのサイード・ベラヒーノが首脳陣と揉めて調子を崩し、クラブ史上最高額で獲得したホセ・サロモン・ロンドンにもなかなかエンジンがかからないなど、主に攻撃面で総じて順風満帆だったわけではない。それでもノルマを達成できたのは、「つまらない」ゲーム展開を甘んじて受け入れ、ベタ引きの守備とセットプレーに活路を見出す姿勢をチーム一丸となって貫いてこられたからだ。
 ちなみに今季のスタメン平均年齢「29歳197日」はリーグ最年長だったが、1999年生まれの逸材ジョナサン・レコが16歳でデビューを飾ったことは、ファンにとって数少ない喜びだったはず。

Manchester United v Crystal Palace - The Emirates FA Cup Final

■15位:クリスタル・パレス(45点)
 トップ10を狙って然るべき戦力をそろえ、昨季終盤からの好調をスムーズに受け継いだシーズン前半戦は、レスターやウェストハムにも負けないキレ味のカウンター&クロス攻勢が冴えわたった。
 だが、5位につけていた年末から4月上旬にかけてリーグ戦14試合未勝利と調子が急降下。原因はコナー・ウィッカムやマルアーヌ・シャマフ、加えて1月に契約したエマニュエル・アデバヨールも含めたストライカー陣の不発による得点力不足だった。その弱点をカバーしてきた2列目からヤニック・ボラシーとバカリ・サコが負傷離脱し、さらにジェイソン・パンチョンのスランプまで重なったことで、破壊力が失われてしまったのだ。守備を支え続けたスコット・ダン、額面通りの活躍を見せたヨアン・キャバイエ、手負いの2列目でひとり気を吐いたウィルフレッド・ザハなど健闘が光った選手もいたが、崩れたリズムを取り戻すのは簡単ではなかった。
 一方で快進撃を見せたFAカップでも、ファイナルでマンチェスター・Uに惜敗。現役時代もパレスで準優勝に終わっているアラン・パーデュー監督は、またも“あと一歩”で涙をのんだ。

A.F.C. Bournemouth v Swansea City - Premier League

■16位:ボーンマス(80点)
 レスターやウェストハムほどではないにせよ、「大変よくできました」は“プレミアリーグ1年生”の彼らにも贈るべきだろう。クラブ史上初のプレミア参戦にして、年間予算はリーグ最少レベル。それ故、開幕前には、多くのメディアで降格候補筆頭に挙げられていた。実際、11月までは2勝しかできず、プレミアの高い壁を前に苦しんだ時期もあった。しかし12月に入って、チェルシーとマンチェスター・Uを相手に立て続けに金星を挙げたことが、ターニングポイントとなる。以降は上昇気流に乗り、残留争いとは無縁のままにシーズンを締めくくった。
 特筆すべきは、リーグトップの1試合平均走行距離(115.22 km)を記録したハードワーク。かといって、ただただ守備に忙殺されるわけでもなく、本来のスタイルである攻撃的なパスサッカーを最後まで貫いた。ニューカッスルアストン・ヴィラといった名門クラブが内容も結果も乏しいシーズンを送るなかで、“スモールクラブ”にカテゴライズされる彼らの健闘は清々しく、またエディー・ハウ(38歳)という青年監督の奮闘ぶりも見る者に強い印象を残した。

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■17位:サンダーランド(70点)
 彼らが来季もプレミアリーグに在籍できるのは、ビッグ・サムとFWジャーメイン・デフォーのおかげだ。開幕から8試合に勝利がなかったサンダーランドは、ディック・アドフォカート前監督に代えてサム・アラダイス監督を招聘。一度もプレミアから降格したことがない指揮官は、すぐに問題点を特定し、フィットネスレベルを強化。これが、シーズン終盤のラスト11試合でわずか1敗という粘り腰を生むことになった。
 さらにアラダイスは戦術もテコ入れ。前任者が敬遠してきたデフォーの1トップを採用。すると同ストライカーが圧巻の決定力を見せて、シーズン後半戦の18試合で11ゴール。最終的に15得点で、ハリー・ケインやジェイミー・ヴァーディに次いでイングランド人得点ランク3位に入った。
 冬の補強も実を結んだ。DFラミヌ・コネ、MFワビ・カズリ、そして本職はDFながら中盤の底で起用されたヤン・キルヒホフは、3名ともすぐにレギュラーに定着し、チーム再建に大きく貢献した。その結果、サンダーランドはシーズン282日のうち237日間も降格圏で過ごしながら残留という快挙を成し遂げたのだ。本当は60点だが、宿敵ニューカッスルを突き落とせたのでプラス10点。

Aston Villa v Newcastle United - Premier League

■18位:ニューカッスル(10点)
 何ともニューカッスルらしいシーズンだった。2014-15シーズンの最終節に何とか残留を決めたニューカッスルは、再スタートを誓い、シーズンオフに元イングランド代表監督のスティーヴ・マクラーレンを連れてきた。さらに移籍金1000万ポンド超の選手を3名(ジョルジニオ・ワイナルドゥム、アレクサンダル・ミトロヴィッチ、フロリアン・トヴァン)も獲得。シーズン開幕前のオッズを見れば、レスターやワトフォードなどより残留の可能性が高いと見られていた。ようやく眠れるビッグクラブが目を覚ます――そう期待させたが、全ては机上の空論だった。
 シーズン序盤に難しいカードが続いたこともあり、リーグ戦では開幕から8試合に勝利できず、過去117年間で最悪のスタートを切ることに。宿敵サンダーランドは、この時期に監督交代して見事に残留。そう考えると、マクラーレン続投を選んだフロントの判断に疑問が残る。
 冬の移籍市場ではイングランド代表歴もあるジョンジョ・シェルヴィーやアンドロス・タウンゼンドを買い集め、ワトフォードに次いで欧州で2番目に大枚を叩いたが、状況は好転せず。ようやく3月に監督交代に踏み切り、残り10試合のところでクラブの命運をラファエル・ベニテスに託すも、時すでに遅し。7年ぶりに2部へ降格することに。これだけ派手にお金を使っての降格となると、同情の余地もない。

Norwich City v Watford - Premier League

■19位:ノリッジ(70点)
 19位で降格したチームに及第点をつけるのは可笑しな話かもしれないが、彼らは間違いなく健闘した。1年でプレミアリーグに戻ってきたノリッジは、無謀な補強を避け、まるで残留のレシピを知っているかのように、主にプレミア経験者を獲得。唯一の誤算は、FWが不発に終わったこと。そして、この決定力不足が降格の原因となった。チーム得点王は、ディナモ・キエフからローン加入したディウメルシ・ムボカニ(7得点)。確かに高い身体能力で存在感を示したが、昨季2部では活躍できたキャメロン・ジェローム同様、決定力に難があった。1月に850万ポンドの大金で連れてきたスティーヴン・ネイスミスも、点取り屋ではなくチャンスメーカー。最後まで得点力不足に喘ぐことに。
 それでも、26年ぶりにオールドトラッフォードで勝利を収めるなど印象的な戦いも見せた。悔やまれるのは1月のリヴァプール戦。92分に同点に追いつくも、95分に再逆転され、せっかく4得点した試合で勝ち点を稼げず。あそこで勝てていれば、何かが変わっていたのかもしれない。それから献上したPKの数がリーグ最多と、少し判定に泣かされた側面もある。最終的にプレミアで歴代最多に並ぶ4度目の降格を味わうことになったが、堅実運営のおかげで、次も1年でのプレミア復帰が期待できる。

Aston Villa v Everton - Premier League

■20位:アストン・ヴィラ(5点)
 これほど分かり易い破滅はないだろう。141年の歴史を誇り、1888年のフットボールリーグ創設メンバーの1つ。リーグ優勝回数も歴代5位で、1982年にはチャンピオンズカップも制覇。そんな古豪が、28年間過ごしてきたトップリーグに別れを告げることになった。
 近年ヴィラは、オーナーがクラブ売却を明言して以降、緊縮経営で残留争いの常連に。昨夏は、エースのクリスティアン・ベンテケと主将のファビアン・デルフを引き抜かれながら、補強はフリーエージェントや手頃なフランスの若手など。新エースに迎えたのは、2部から獲得したリュディ・ジェストゥードというありさま。
 指揮官についても、監督経験の乏しいティム・シャーウッドに始まり、プレミアでは実績ゼロのレミ・ガルドへの移行という迷走ぶり。そのガルドも、クラブ史上最短での退任。そして最下位にもかかわらず、冬に1人も補強を行わず。リーグ戦19試合連続で勝利なしというクラブワースト記録も樹立。最終的にクラブ史上最少勝ち点の17ポイントで降格。唯一の朗報は、シーズン終了後に中国のビジネスマンに買収されたことくらいか。

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