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【インタビュー】森山直太朗が語るCL決勝、アヤックス、バルセロナ…『そしてイニエスタ』

チャンピオンズリーグ決勝やお気に入りのクラブについて語った森山直太朗氏 [写真]=島崎雄史

 世界中のサッカーファンが、6月1日を心待ちにしている。チャンピオンズリーグ・ファイナルを――。大のサッカー好きとして知られる歌手、森山直太朗氏もその一人だ。

「こういう話なら、いつまででもしていたいなあ」。約1時間のインタビューを終えたあとで漏らしたこんな感想からも、彼のサッカー愛が伝わってくる。そんな森山氏が、過去のチャンピオンズリーグの思い出、好きなクラブ、さらにはあの話題曲『そしてイニエスタ』の制作秘話を明かしてくれた。

インタビュー・文=本間慎吾
写真=島崎雄史

■好きなチームに共通するのは「個性の生かし方」と「組織の作り方」

――まずは歴代のチャンピオンズリーグ決勝のなかで、最も印象に残っている試合を教えてください。
これ、“決勝縛り”はけっこうきついなと思って(笑)。だってリヴァプールが大逆転した試合(04-05)とか、マンチェスター・U対バイエルン(98-99)は絶対、歴史に残る名勝負ですから。でも、すごいなと思うし当時はすごく興奮して見ていたんだけど、そこまで思い入れはないんですよ。そう考えると、94-95シーズンのアヤックスvsミランになるかな。やっぱり思い返してみると、アヤックスがCLで優勝したっていうことに一番興奮したなって思う。

――この優勝が、アヤックスを好きになったきっかけですか?
遡ると、もともとはマンチェスター・Uが好きだったんです。シュマイケル、ギグス、カントナ、ベッカムってみんなキャラが立っていて、ファーガソン監督もカッコいいし、もう漫画みたいなチームで。時代としてはゾーンプレスを導入したミランを中心にセリエAへと流れていっていたんだけど、僕は小学生の頃にウイングを置いた4-3-3のサッカーをやっていたから、やっぱりウインガーが好きで、なんか馴染めなかったと言うか……。そんなときに、ふとした拍子にアヤックスのサッカーを見たんです。

アヤックスはクライフが体現した“トータルフットボール”をもとに、ユース世代、もっと小さい頃からシステムが浸透していて、中高一貫教育みたいな。ボールを持ったら誰がどこにいるかがわかっている。それでいてちゃんと10番もいるし、ウインガーもいる。僕はそういうサッカーが好きだから、「アヤックスめちゃくちゃ面白い!」って思って追いかけるようになった。だけど同時に、それは国内リーグだけの話であって、ヨーロッパの舞台では通用しないんだろうって、どこかで思っていたんです。そしたら破竹の快進撃でCLを制したから、これはちょっとヤバイなって思いましたよ。今思えば、GKがファン・デル・サールで、ダーヴィッツもセードルフもいて、リトマネン、ブリント、デ・ブール兄弟にライツィハー、ミランから帰ってきたライカールトもいたし、そりゃ強いわってなるんですけどね(笑)。

――それからバルセロナにハマっていくわけですね?
優勝メンバーの多くがバルセロナに移籍することになって、クラブの凄さは知っていたから、これどうなっちゃうんだろうって思って。まあ、失敗に終わりましたけどね……(笑)。でもバルサもマンチェスター・Uもアヤックスも、個性の生かし方とか組織の作り方がすごく共感できるから、見ていてめちゃくちゃ楽しいんです。

■ずっと忘れない理由

――話をCL決勝に戻します。またまた“縛り”があって申し訳ないのですが、歴代の決勝戦で生まれたゴールの中からNo.1を選んでください。
これも、決勝に限っちゃうとね……(笑)。一番お気に入りなのはイニエスタなんですよ、チェルシーとの準決勝の(08-09)。だけどそれじゃダメなんですよね?(笑)
決勝ってなると……(91-92シーズンの)ロナルド・クーマンがFKをぶち込んだやつかな! あれはすごかった。

CLってここ15年くらいはちゃんと見る環境が整っていて、今はスマホやタブレットでも見られる時代ですよね。でも、それに慣れちゃった分、ちょっと希薄になっているのかなとも思うんです。91-92シーズン当時なんかは今と違ってサッカーを映像で見るっていうのがすごく難しかった。だから刻まれるというか、苦労してたどり着いた試合、ゴールシーンっていうのはずっと忘れないんですよ。

――“決勝縛り”の質問は次で最後です。数々の名勝負が生まれたCLファイナルの舞台において最も輝いていた選手を1人選ぶとしたら、誰になりますか?
……これもすごく難しい(笑)。クライファートもよかったし、渋いけどブリントだってすごかった。でも、今回の決勝ってポチェッティーノvsクロップですよね? 結局、監督って重要だなって(笑)。選手じゃなきゃ、やっぱりダメですか?

――今回は特別に、監督もアリにしましょう(笑)。
それだったら、今はちょっとトレンディではないですけど、ポルトを優勝させたモウリーニョですね。あれはすごい、本当に。あんなことできないですから。今はみんなが彼の戦い方をわかってしまっているのかなっていうのはありますけど、インテルでもCLを獲った。間違いなく、彼の時代はあったんですよ。

■バルサの敗因は…「ごめんなさい、俺だ」

――今シーズンのCLはどのようにご覧になっていますか?
決勝はめちゃくちゃ面白そうですよね。トッテナムとリヴァプール、どっちかに思い入れがあるっていうわけではないけど、すごく好意的です。ポチェッティーノは戦術オタクって感じだし、クロップは最強のモチベーター。森保監督も素晴らしいけど、クロップみたいな人が日本代表の監督になってくれたらいいですよね。彼は今、世界で上司にしたい人ナンバー3に入るでしょう(笑)。あと、プレミアは今、上位6チームの高め合いがリーグの底上げになっていますよね。ほかは一強のような状態だから。やっぱりリーグ戦で何度も決勝戦のような試合を経験しているから、良い意味で緊張感が途切れないっていうのもあると思います。

――バルセロナとアヤックスはともに、衝撃的な敗退となってしまいましたね……。
絶対に決勝に行くと思っていた。ファーストレグが終わってなおさら。特にバルサはね……。だけど、そうは問屋が卸さないっていうか。そこが見どころでもあるんだけどね。バルサに関しては、リヴァプールにケガ人がいたっていうのも安心になっちゃったんでしょうね。だってフィルミーノとサラーがいないって……もう勝ったよ、って感じ。だから僕は、思ってるんですよ。「あ、俺が油断したせいだ」って(笑)。

――なるほど(笑)。すべてのファンが、自分に責任があると感じているんですね?
「俺だー」って(笑)。決勝はバルサと、向こうはアヤックスか、もしかしたらトッテナムが来るかもとは思っていたけど。だから「ごめんなさい、俺のせいです」って、そんな風に無意識で思った人がきっとたくさんいるんじゃないかな(笑)。

■『そしてイニエスタ』制作秘話

――バルセロナの話題になったので、気になっていたことをお聞きします。楽曲『そしてイニエスタ』ができたきっかけを教えてください。
震災なんですよね。ちょっと、震災がきっかけと言うと起こったことに対してあまりにもカジュアル過ぎる部分はあるんだけど……。もともとの曲作りはサッカー部の後輩だった御徒町凧(詩人。森山直太朗の楽曲共作者)と、替え歌を作ったり、文化祭で歌ったり、路上に出たりっていうのが始まりだったんです。彼もサッカー観戦は好きで、はじめはレアル・マドリードにハマっていたんだけど、気づいたら僕の隣でバルセロナを応援するようになっていて(笑)。とにかく、高校時代から面白い演劇があれば見に行って、日韓W杯も一緒に見て、ライブにも一緒に行って、要するに面白いもの、共有できるものを探していたんですね。で、バルサもそれだった。バルサのイズムとかを掘り下げてみると、みんな兄弟、みんな家族みたいなのがあって、それに惹かれたんです。

これは共感してもらえるかはわからないけど、サッカーで、土壇場で試合をひっくり返したり、神がかった連携だったり、そういうのって、僕はスピリチュアルだなって思っているんです。スピリチュアルっていう言葉以上に的確な言葉を探したいんだけど……“気の世界”なんですよね。親友っていますよね? そういう存在の人って、なにか言いかけたときに「あ、それな」ってなる時があるじゃないですか。何かアクションを起こす前にわかる時が。サッカーってその差だと思うんです。「これやりたいのね、オッケー」みたいな。

――私もサッカーをやっていたので、すごくよくわかります。
手前味噌ながら僕たちの曲作りとか関係性も同じだと思っているんです。言葉や行動に表れているものではない何かを探しながら、黒目には映っていないけど、白目には映っているというか。そういう部分がバルサは抜きん出ているんです。それで、一緒にバルサを応援するようになってしばらくした頃に東日本大震災が起こりました。僕らには被災っていう言葉は当てはまらないかもしれないけど、東京に住んでいる人たちも路頭に迷ったし、テレビをつければ震災のニュースばかりだし、「ああ、緊急事態だな」って。でもそれはあくまで国内の話で、パッとWOWOWをつけたときに、カンプ・ノウが映ったんです。僕らが打ちひしがれていても、海の向こうではいつもどおりに試合が行われている。試合前の整列で日本に向けて黙祷が捧げられた瞬間は、自分たちもつながっているっていう特別な感覚になったけど、試合が始まれば何事もなかったかのようにいつもどおりで。例えば失恋したときとか悩んでいるときって、いつもと変わらない景色とか変わらない人たちっていうのが一番励みになるじゃないですか。まさにその象徴だった。今、思い返すだけでも胸が熱くなる瞬間です。だから、イニエスタは好きだけど、これはイニエスタを歌っているわけではない。バルセロナへの言葉にならない愛情を歌にしたら、こういう形になったんです。

――とても深い意味が込められていたのですね。てっきり、イニエスタへの愛を表現する曲だと思っていました。
あとはもう一つ、実況の倉敷(保雄)さんが必ず「シャビ……メッシ……そしてイニエスタ」って言うんです(笑)。シュートを打つ前とかも「そしてイニエスター!」って。なんで「そして」が入るんだろうっていう疑問が記憶の片隅にあって、でもそれを日常のなかで言葉にすることってないじゃないですか。そういう、いろいろな“言葉にならない思い”が相まって、この曲が完成しました。

 長時間に及ぶ取材のなかで、真面目に熱く、時には冗談を交えながら、真摯に答えてくださった森山直太朗氏。インタビュー終盤、そんな彼の足元にふと目を向けると、大好きなサッカーボールと戯れていた。


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