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【CL決勝展望】普遍的な正論を打破したシメオネ・アトレティコの戦術

2014.05.23

レアルとの決戦に臨むアトレティコのシメオネ監督 [写真]=Getty Images

文=河治良幸

「ポゼッションには興味が無い」。3年前の就任会見でそう言い放ったシメオネ監督が率いるアトレティコ・マドリーが18年ぶりのリーガ優勝。堅実な守備と鋭いカウンターを武器に、チャンピオンズリーグでも見事に決勝進出を果たした。

ポゼッション型の象徴であるバルセロナとは今季の戦いで4度引き分けた後、5度目となったチャンピオンズリーグ準々決勝の第2レグで1-0と勝利した。数年間の“黄金期”でもバルセロナがカウンター型のチームに敗れるケースは何度かあったが、より固い守備と質の高いカウンターを持つアトレティコはバルセロナとの相性も非常に良く、それが結果に表れた形だ。

アトレティコは中盤にコンパクトなブロックを築いて相手の攻撃を引き込み、そこでボールを奪ってミドルレンジのカウンターにつなげるのが基本スタイルだ。カウンターでは素早い攻守の切り替えからFWジエゴ・コスタのポストプレーとサイドのアルダやコケによるワイドな仕掛けを使い分け、ボール保持者に周囲の選手が連動する。厚みとバリエーションに溢れる速攻は的確に相手の嫌なところを突く。

チャンピオンズリーグでは決勝まで166本のシュートを記録し25得点。およそ6.6本に1本が得点になっている。ボール支配率は46%しかなく、チャンスも多い訳ではないが、高い確率でゴールに結び付けているのだ。その理由は単純にシュートの精度が高いといったことではなく、少ないながら着実にいい形を作ってフィニッシュできていることを意味する。

分かりやすいのが今季、元バルセロナのグアルディオラ監督が率いて大きな注目を集めたバイエルンとの比較だ。準決勝でレアル・マドリーに敗れたバイエルンは65%のボール支配率を記録したが、230本のシュートで24得点、9.6本に1本しか得点にならなかった。アトレティコがカウンターから相手のブロックが崩れている、あるいは薄い状態でシュートしているのに対し、バイエルンは守備を固められている状態が多い。それだけカウンターは効率がいいということだ。

もう1つ注目したいのはアトレティコが12試合で6失点しかしていないこと。これは全体で最小の数字だ。ボールを長く持っている方が高いポジションをキープでき、守備の時間も短くなるというバルセロナの伝統的な哲学が、ここ数年は普遍的な正論の様に言われてきた。シメオネのアトレティコは今季、その定説に真っ向かって挑み打破したのだ。

昨季はドルトムントが42%のボール支配率で決勝まで進出したが、しっかり守備の組織を固めていい形のカウンターを繰り出せば、ポゼッションのチームを打破できることを堅守速攻型のチームが証明している。ドイツではポゼッション志向のバイエルンが優勝し、イングランドではパスサッカーを掲げるリバプールとマンチェスター・シティが最後まで優勝を争うなど、ポゼッションとの立場が完全に逆転したわけではないが、カウンターの波が着実に来ている。

そもそもポゼッションとカウンターは相反するスタイルとして、どちらかが上昇すればもう一方は下降する関係にある。近年あまりにポゼッション志向が強くなった中で、カウンターがはまるシチュエーションが増えてきているのは確かだ。そうした流れはJリーグでも出て来ている。J1では鳥栖がハイプレスと自陣に引いてのブロックを時間帯や得点状況で明確に使い分けるスタイルを打ち出し、大方の予想を上回る2位で中断期間を迎えた。J2では湘南が豊富な運動量をベースとしたハードプレスとショートカウンターで、ここまで14勝無敗という記録的な連勝街道を突き進んでいる。

一口にカウンターと言っても、アトレティコやドルトムントにしても、またJリーグの鳥栖や湘南にしても戦術に違いはあるわけだが、共通しているのは質の高いカウンターを繰り出し、効率よく得点を重ねていることだ。安易にカウンターを選択したからポゼッションの相手を上回れるわけではないが、しばらくは質の高いカウンターを実現するチームがタイトル争いの上位に多く絡んでくるのではないか。

 25日のチャンピオンズリーグ決勝でシメオネ・アトレティコの戦術が、ヨーロッパの頂上に上り詰めることができるか。

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