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【インタビュー】Jリーグを追われた男――元群馬・磐瀬剛がKリーグ2部で過ごした1年

安山グリナースでプレーする磐瀬剛(右) [写真提供]=韓国プロサッカー連盟

 2021年のKリーグは日本人選手の活躍が目立ったシーズンだった。

 誰よりも話題をさらった選手としては、Kリーグ2(2部)の大田ハナシチズンに在籍したMF石田雅俊が挙げられるだろう。ハットトリックを達成した試合後のヒーローインタビューで語った「自分は敗者。人生を懸けて昇格しましょう」という言葉は韓国全土に衝撃を与え、シーズン終了後には2部の年間ベストイレブンに選出されている。

 そんな今季のKリーグ2では、実は石田と同世代の日本人選手が多く戦っていた。そのなかの一人が、安山グリナースでプレーしたMF磐瀬剛だ。

■選手権を沸かせた元市船主将にも、Jリーグの壁は厚く……

 市立船橋高校で石田と同学年だった磐瀬は、1年時から主力として活躍して同年冬の全国高校サッカー選手権優勝に貢献し、優秀選手に選出。3年時はキャプテンを務め、夏のインターハイ優勝も経験した。卒業後は石田とともに京都サンガF.C.に入団し、以降はFC岐阜、ザスパクサツ群馬に在籍していた。

 ちなみに、磐瀬のほかでは同じ市立船橋高校出身のMF室伏航(富川FC 1995)、京都時代に同期入団したMF田村亮介(FC安養)といった選手も、2021年をKリーグ2で戦っていた。

 では、なぜ磐瀬が隣国・韓国へ渡ることになったのか。オンラインでの単独インタビューで経緯を聞くと、本人の口から出たのは石田の名前だった。

「(2020年に)群馬でほとんど試合に出られず、契約満了になると思っていたところでマサ(石田)が韓国で話をしてくれて、それで安山が僕を獲得してくれました。なので、僕に今年プレーできるチームがあったのもマサのおかげです」

 2020年シーズン、群馬所属の磐瀬はJ2リーグ出場5試合、うち3試合が途中出場という成績に終わり、代理人からも「来年どうする」、「今のところ選択肢ないよ」と伝えられていた。そこで、普段から連絡を取り合っていた石田が、自身が2019年にKリーグへ進出した当時に加入した安山に掛け合い、移籍が実現したという。

■飛び込んだ未知の世界――異国でぶつかった試練

磐瀬剛(右) [写真提供]=韓国プロサッカー連盟

 こうしてプレーの場を韓国に移すことになった磐瀬だが、チームに合流してからは試練が続いた。何よりも苦戦したのは言葉の問題だった。チームから通訳が付かず、コミュニケーション面で苦労を強いられたという。

「“マサの友達”ということで周りがたくさん話しかけてくれました。でも、通訳がいなかったので韓国語を上手く理解できないまま話していました。練習でも、最初は周りが何を言っているか分からない状態でやっていました」と振り返る磐瀬。幸い、キャプテンのDFヨン・ジェミンが2019年に鹿児島ユナイテッドFCに在籍していたため、多少日本語を話せたこともあり、彼とは会話を交わすことができたという。

 ただ、加入当時はチームからの期待感をあまり感じられなかった。日本では本職のボランチのほかセンターバック、サイドバックでプレーすることもあった磐瀬だったが、「監督が僕のプレースタイルを知らなかったんです。“マサが連れてきた日本人だから、技術があって攻撃的な選手なんだろう”って認識ぐらいだったと思います」と当時の状況を明かす。

■プロ初ゴールも記録。磐瀬が「吹っ切れた」理由とは?

 もっとも、シーズンを終えて磐瀬の今季成績はリーグ戦26試合出場、1ゴール1アシスト。シーズン中盤以降はフル出場の試合がほとんどで、結果として多くの出場機会を得ることができた。Kリーグでの初のシーズンを終え、「ある程度試合に出場できて実戦感覚も上げられました。プロ初のゴールも決められたので、点数を付けるなら60~70点ぐらいです」と磐瀬は総括する。

「試合には出ていた方だと思いますが、絶対的な存在というより、同じポジションに人がいなくて消去法で出ていただけです」と磐瀬は謙遜するが、リーグ最終節ではその節のベストイレブンにも選ばれるなど、徐々に自身の存在感を示していた。Kリーグでは「日本にいた頃よりも楽しくプレーできた」という磐瀬は、韓国で感じた心境の変化をこう語る。

「日本にいた頃はちゃんとボールをつながないといけない、ミスをしたらいけないという思考が常に頭にありました。もちろん、ミスはしない方がいいですが、韓国ではあまり考えないようになりました。(Jリーグと違って)試合展開がとにかく前に速いこともありますが、ミスをしてもいい気楽さというか、難しく考えず楽しくサッカーをしようというマインドで、吹っ切れてプレーできましたね」

 高校来の友人に導かれて飛び込んだ韓国の地で充実の一年を過ごした磐瀬。来季はさらなる飛躍を期待したいところだ。

取材・文=姜 亨起(ピッチコミュニケーションズ)

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