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【AFFスズキカップ】タイ代表の目標は「王座奪還」以外にない

2021.12.05

[写真]=Getty Images

ベトナムから覇権を奪い返せるか

 タイにとって今回のAFFスズキカップは、東南アジアの盟主の座をベトナムから奪い返すための大会となる。

 東南アジアサッカー界において、タイは長く盟主として君臨してきた。1996年に「タイガーカップ」としてスタートした東南アジア選手権(現AFFスズキカップ)では、大会最多となる5度の優勝。準優勝も3回あり、全12大会中8大会で決勝まで駒を進めている。東南アジア諸国にとって最も重要な大会の一つである同大会での結果から見ても、タイが安定して東南アジアをリードする存在であったことは間違いない。

 しかし、3連覇を狙った前回のAFFスズキカップはその地位を脅かされる大会となった。セルビア人のミロヴァン・ライェヴァツ監督に率いられたタイはグループリーグを3勝1分けの首位で通過したものの、準決勝でマレーシアにアウェイゴールの差で敗戦。東南アジアの覇権は、韓国人指揮官パク・ハンソのもとで急速に力をつけてきたベトナムに明け渡すこととなった。2018 FIFA W杯 ロシアではアジア最終予選まで進出するなど、東南アジアでは頭一つ抜け出た存在となりつつあった矢先であっただけに、AFFスズキカップでの敗北はタイにとってショッキングな出来事だった。

 その後、タイは西野朗監督体制となり2022 FIFAワールドカップ カタール・アジア予選に臨んだが、2大会連続の最終予選進出はならず。一方で2次予選を同組で戦ったライバルのベトナムが初の最終予選進出を果たしたことで、東南アジアの盟主の座がタイからベトナムへと移行しつつある構図はより鮮明なものとなった。その流れを断ち切るためにも、タイとしては今回のAFFスズキカップでなんとしてもベトナムから覇権を奪い返したいところだ。

チャナティップ、ティーラトンら海外組も招集

 カタールW杯アジア2次予選で敗退したタイは、今年7月に西野監督を解任。AFFスズキカップへ向けて準備期間のないなか、新指揮官にはドイツ系ブラジル人のアレシャンドレ・ポルキンが就いた。同氏はドイツ人のヴィンフリート・シェーファーがタイ代表監督を務めていた2012年に同代表のアシスタントコーチとしてタイでの指導者キャリアをスタートさせ、アーミー・ユナイテッド、スパンブリーFC、バンコク・ユナイテッドとタイリーグのクラブで監督を歴任してきた。コロナ禍で代表活動にも制限のある状況下、タイ代表はタイサッカーに精通したブラジル人を新監督に選んだ。

 前回のAFFスズキカップの主役がベトナムであったことに疑いの余地はないが、同大会におけるタイはベストメンバーで臨むことができなかった。AFFスズキカップの開催期間は国際マッチデーには当たらないため、海外でプレーする選手の招集は困難なのが実情だ。東南アジアにおいては他国に先駆けて本格的に「海外組」が生まれていたタイだけが、前回大会ではその影響を大きく受けることとなった。すでにJリーグでプレーしていたMFチャナティップ、DFティーラトン、FWティーラシンらを欠いたことによる戦力ダウンは決して小さなものではなかった。

 現在もタイはJリーグや欧州などでプレーする複数の海外組を抱えているが、今大会には海外でプレーする選手たちも招集されている。Jリーグ組のチャナティップ、ティーラトンをはじめ、レスター所属のMFタナワット・スンジッターウォン、ベルギーでプレーするGKカウィン・タマサッチャナンらもAFFスズキカップを戦うタイ代表に名を連ねている。招集されたメンバーからもこの大会に懸けるタイの意気込みが分かるが、ベストメンバーで再びベトナムに覇権を譲る結果となれば、もうエクスキューズは許されない。

 グループリーグ初戦の東ティモールとの一戦が、ポルキン監督体制での初陣となる。その意味ではぶっつけ本番となるが、どんな形であれ今大会は結果が求められる。タイにとっての「結果」とは、ベトナムを下しての王座奪還以外にない。

文=本多辰成

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