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【W杯最終予選展望】進化を続けるベトナム代表の強みと弱み。日本戦の勝負を分けるポイントは?

2021.11.10

ベトナム代表を率いるパク・ハンソ監督 [写真]=AFC

 韓国人のパク・ハンソ監督率いるベトナム代表は、11月11日にハノイ市ミーディン国立競技場で開催されるFIFAワールドカップ・アジア最終予選グループB第5節で日本代表を迎え撃つ。最終予選初出場のベトナムはここまで4戦全敗。一方の日本も初戦を落とすなど苦しい戦いとなっているが、前節オーストラリアとの死闘を制して2勝2敗のイーブンに戻した。

 ベトナムはW杯2次予選で、UAE、タイ、マレーシア、インドネシアと同組となり、東南アジアのライバルを退けてUAEに次ぐ2位で最終予選進出を果たした。ベトナムは2017年のパク監督就任以来、対東南アジアで無類の強さを誇っており、4年負けなし。パク監督はU-23代表も兼任し、これまでにAFC U-23選手権準優勝、アジア大会ベスト4、AFFスズキカップ優勝、アジアカップベスト8など数々の快挙を達成している。ベトナム代表はもともと足元の技術が高いが、フィジカル強化にも力を入れ、韓国サッカーの特徴である激しさも加わってアジアの列強ともいい勝負ができるまでに急成長を遂げた。

 パク監督はベトナム代表を率いたこの4年で、森保一監督の日本代表とも2回対戦している。最初の対戦は2018年のアジア大会グループリーグ。オーバーエイジを加えたU-23ベトナム代表は、東京五輪世代のU-21日本代表を内容的にも圧倒して1-0で勝利。2回目の対戦は、2019年のアジアカップ準々決勝。A代表同士の真剣勝負となった試合は、VARにより得たPKを決めた日本が1-0で勝利を収めた。

 今回の最終予選では、実力的に見れば日本の優位は揺るがないが、今節はベトナムが得意とするホームゲームだ。ベトナムのホーム無敗記録は、同予選オーストラリア戦での敗戦(0-1)により17試合で途切れてしまったが、今節は久々の有観客開催となる。ワクチン2回接種とPCR検査の陰性証明、収容制限30パーセントという条件つきながら、サポーターの後押しを受ける今節は一味違うところを見せてくれるはず。先日オンライン販売されたチケットはわずか20分で完売。国内ではベトナム代表の初の勝ち点獲得に向けた応援ムードが高まっている。

■見え隠れする国際基準とのズレ…ベトナムサッカーの懸念点とは?

 とはいえ、ここまで4試合を終えたベトナムに懸念材料が多いのも事実だ。ロシア出身の守護神ダン・バン・ラム(セレッソ大阪)や、メインシステムの5-3-2(または5-4-1)で両ウイングバックを務めるドアン・バン・ハウ(元ヘーレンフェーン)とグエン・チョン・ホアンなど守備陣の主力に故障者が多いのも気になる。

 また、ベトナムが同予選で苦しんでいる理由の一つとして不要なファウルの多さがある。これはVAR経験値の低さにも関係するが、2次予選から数えると実に7本ものPKを献上しており、このことは国内外のメディアからも指摘されている。

 アウェイで迎えた最終予選初戦サウジアラビア戦では、立ち上がりにMFグエン・クアン・ハイのミドルシュートで先制したものの、後半退場者を出したベトナムは2本のPKを与えて最後は1-3の逆転負けを喫した。

 同じく1-3のスコアで逆転負けとなった第4節オマーン戦でも、ベトナムは2本のPKを与えている。いずれもセンターバックが相手と競り合った際、クリア後に腕が相手の顔に入ってVARの結果PK判定となったもので、どちらのケースもVARのないVリーグでは見逃されていた可能性が高い。ボールがないところでのファウルも含め、過度な接触プレーは国内リーグでも散見され、ベトナムサッカーの悪癖と言える。

 今季サイゴンFCでプレーした松井大輔(現Y.S.C.C.横浜フットサル)が「試合中、顔面にエルボーが飛んできた」と日本メディアに話していたが、相手を止めるために腕を使うといったファウルは、Vリーグでは見逃されるケースが多い。国内リーグのさじ加減でやっていてはことごとくファウルになることを、ベトナムの選手は学習しなければならない。

■あくまでも挑戦者…対日本戦のカギは攻撃陣

 もちろん、ポジティブな要素もある。前述のように久々の有観客でホームゲームを開催できることは大きなモチベーションにつながるし、気候の面でも地の利がある。代表チームに圧倒的なプライオリティを置くベトナムでは、数週間~1カ月の長い時間を代表合宿に費やすことが可能であるため、コンディション調整の面でも日本より優位だ。

 それに、格上ばかりの最終予選でも攻撃陣が一定の結果を残していることは評価していい。ベトナムはここまで4試合4得点、得点数だけ見れば日本の3得点を上回る。1点差で負けたオーストラリア戦(0-1)と中国戦(2-3)でも、シュート数では相手を上回っていた。4戦全敗と結果は出ていなくとも、ベトナムはあくまで挑戦者の立場。焦りもなければ、気負いもない。ボールを持たれる時間が長くなると予想される日本戦では、守備陣の踏ん張りはもちろんのこと、攻撃陣の奮起に何より期待したいところだ。

 ベトナムサッカー界は、2024年のパリ・オリンピック出場、2026年のW杯出場という長期的目標を掲げており、今回初出場となったW杯最終予選は、アジアにおける現在のベトナムの立ち位置を確認し、長期的目標を達成する上でのマイルストーンという位置づけにある。同予選でのベトナム代表の目標は至ってシンプルなものだ。まずは最終予選初の勝ち点獲得、そして初勝利。一つひとつの積み重ねが4年後の大きな結果につながると信じている。

文=宇佐美淳

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