[写真]=Getty Images
キム監督の采配で悪夢の初戦から立ち直る
東京オリンピック男子サッカー競技一次ラウンド・グループBを2勝1敗の首位で突破したUー24韓国代表。31日に行われる準々決勝では、グループAを日本に次ぐ2位で通過したメキシコと対戦する。
キム・ハクボム監督が率いる韓国は、2012年のロンドンオリンピックで獲得した銅メダル以上を目標に掲げて日本に乗り込んだ。だが、そのスタートは“最悪”と言えるものだった。
ニュージーランドとのグループ第1戦は、シュート数2本にとどまった相手をはるかに上回る12本を放ちながら得点できず、ニュージーランドにワンチャンスを決められて0ー1で敗戦。開幕前から懸念された守備陣の不安定さが露呈する形となり、国内からは「衝撃的敗北」、「グループ突破に赤信号」と落胆の声が噴出した。加えて、MFイ・ドンギョンの“握手拒否”問題で非難が殺到するなど、さまざまな意味で後味の悪い試合となってしまった。
決勝トーナメント進出へ早くも瀬戸際に追い込まれたかっこうとなったが、ここからキム監督の采配がさえ渡る。2戦目のルーマニア戦では初戦から先発を5人入れ替えると、相手のオウンゴールを皮切りにイ・ドンギョンが追加点で先発起用に応え、MFイ・ガンインも途中出場から2ゴールの活躍を披露し、4ー0で大会初勝利を収めた。
グループリーグ最終戦のホンジュラス戦では、左サイドバックを本職とするDFキム・ジンヤのウイング起用が的中。右サイドのFWイ・ドンジュンとともにスピードある両翼がホンジュラスの守備を崩すと、FWファン・ウィジョのハットトリックなどの大量得点で6ー0と完勝。一時はグループ通過すらも危ぶまれたが、終わってみれば首位で決勝トーナメントに駒を進めることになった。
3大会連続となるメキシコ戦は総力戦に
決勝トーナメント初戦ではメキシコと相まみえることになるが、同国との対戦はこれで3大会連続となる。
2012年ロンドン大会ではスコアレスドローに終わったが、2016年リオ大会では今大会にオーバーエイジ枠で出場しているMFクォン・チャンフンがゴールを決め、韓国が1ー0と勝利。オリンピック世代同士による通算対戦成績を見ると、7試合を戦って韓国が3勝4分けと勝ち越している。
そんな韓国にとって最も好材料と言えるのが、オーバーエイジ枠のファン・ウィジョにようやくゴールが生まれたことだろう。
ファン・ウィジョはUー24韓国代表に合流して以降、強化試合から本大会グループステージまで4試合連続で無得点が続いていた。決定機を迎えながらゴールを外す“らしくない”姿に不安の声も挙がっていたが、最終節のホンジュラス戦でようやくゴールをゲット。PKを2つ含むとはいえ、ハットトリックという数字は決勝トーナメントに向けて自信となったはずだ。
加えて、イ・ガンインの“ジョーカー起用”も効果を発揮している。先発起用されたニュージーランド戦こそ見せ場なくベンチに下がったが、途中出場のルーマニア戦では2ゴール、ホンジュラス戦では1ゴールと結果を残した。
イ・ガンインは途中出場の2試合をいずれも“ゼロトップ”で起用された。イ・ガンインのゼロトップといえば、パウロ・ベント監督率いるA代表が今年3月の“日韓戦”で奇策として用いて不発に終わったが、五輪代表ではここまで機能している様子だ。メキシコ戦でも、ファン・ウィジョが封じられた場合はイ・ガンインのゼロトップがプランBになるだろう。
追加招集から主力の座をつかんだ日本のFW林大地同様、韓国でも一度落選を味わった選手が存在感を見せている。キム監督は追加招集選手に「私の選択が間違っていたことを証明してほしい」と発破をかけたが、その期待に最も応えているのが、サイドバックのDFカン・ユンソンだ。
両サイドをこなせるカン・ユンソンはグループステージ全3試合で先発起用され、ニュージーランド戦以外でフル出場。「派手な選手ではないが粘り強い守備で安定感をもたらした」と、韓国メディアからも高い評価を受けている。ルーマニア戦では鋭い裏抜けからイ・ガンインの得点をアシストするなど、攻守両面で献身的に戦う姿勢がキム監督の信頼を得ている。
負けたら終わりの決勝トーナメントでは、グループステージ以上に総力戦となることは間違いない。キム監督も「メキシコは簡単には勝てない相手だ。我々は一つになっている。全員の力でメキシコに勝てるよう準備している。(期待に)勝利で報いたい」と並々ならぬ覚悟を明かす。
キム監督がピッチに送り出す11人は一体どんな顔ぶれとなるのか。20時のキックオフを楽しみに待ちたいところだ。
文=姜 亨起(ピッチコミュニケーションズ)