[写真]=ラ・リーガ
ラ・リーガにおけるバレンシア州の第三のクラブとして知られるレバンテ。今季2部リーグを制覇し、2021-22シーズン以来となるトップリーグへの復帰が決まっている。
今回レバンテの本拠地であるシウタ・デ・バレンシアを訪れ、国際アカデミー部長を務めるダニエル・パストール氏に、レバンテの成り立ちや国際アカデミーの取り組みなどについて話を聞いた。
インタビュー=篠﨑友耶
―――まずは、レバンテとはどのようなクラブなのかを簡単に紹介してください。
パストール 私たちは、もともとは別々だった2つのチームが合わさって1909年にできたサッカークラブであるため、正式名称をレバンテUD(ユニオン・デポルティーボ)と言います。クラブの愛称は「グラノタ」(バレンシア語で蛙の意)で、客席には蛙のシルエットが大きく描かれています。創設当時に使用していたコートが川沿いにあり、周辺に多くの蛙が生息していたことから、いつの間にかクラブの愛称となりました。
創設から長らく下部リーグを主戦場としており、決して大きなクラブではありませんが、2000年代以降は1部リーグに所属する期間も増え、国際的な知名度も上がってきました。かつては、あのヨハン・クライフが在籍したことでも知られています。
―――バルセロナのレジェンドであるクライフが、スペインの他クラブに所属していたことは知りませんでした。
パストール 彼が所属していたのは1981年からの1シーズンです。当時2部リーグにいたレバンテは、昇格のための切り札として彼を獲得しました。その時の契約条件がユニークで、「クライフが出場した試合におけるチケット収入の一定割合を彼に支払うこと」だったのです。彼は、自分が出場することで多くの観客が集まることが分かっていたのでしょう。
しかしこのシーズン、最終的にクラブは降格してしまいます。クライフは期待されたような活躍を見せることはなく、わずか10試合に出場しただけで去っていきました。これはクラブの苦い思い出として、今も語り継がれています(笑)。

[写真]=ラ・リーガ
パストール チーム全体の強化はもちろんですが、それ以外にもトップリーグにふさわしい環境を整えるべく、現在はスタジアムの改修に注力しています。これはラ・リーガが主導する「Boost LALIGA」計画(投資ファンドと連携して得た資金を分配し、各クラブの底上げや競争力強化を図る計画)の一環で、レバンテでは主にその資金をスタジアムの拡張計画にあてています。
―――具体的に、どのような点が変わったのか教えてください。
パストール スタジアム改修の第一段階として、巨大スクリーンの設置、照明のLED化、ルーフの改修などを行いました。また、選手たちが通るピッチへの入場口付近にガラス張りの歓談ルームを増設するなど、ホスピタリティを強化したVIP席を増やしてさらなる収入アップも図っています。
今後に向けて、スタジアム近くに新たな複合運動施設や商業施設の建設を計画しています。スタジアムに来てサッカーの試合を見るだけでなく、買い物や体験型アクティビティなども楽しめる複合施設にすることで、来場者数や満足度の底上げを図ります。
ラ・リーガのハビエル・テバス会長の言葉通りに、「Boost LALIGA」計画によって、リーグ全体でクラブの成長が加速したと感じています。

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■選手として、人としての成長を促すレバンテの育成
―――次に、パストールさんが担当しているアカデミー関連のお仕事について教えてください。
パストール アカデミーの国際展開として世界各国を訪れ、現地のクラブや学校などでサッカーを教えるだけでなく、子供たちや両親にレバンテの価値観や教育方針なども伝え、クラブの認知度向上を図っています。現在は日本を含む、26カ国と連携するまでになりました。
日本では大阪、埼玉、千葉の提携スクールで多くの子供たちが学んでいます。彼らはスキルが高いだけでなく辛抱強く努力家で、しつけもしっかりとされていますね。自分で課題を解決できる力を持っている子が多い点も特徴だと思います。
―――レバンテが育成において大切にしているポイントを教えてください。
パストール 私たちのクラブでは、「量より質の教育」、「現実的な目標を立て必ず実現すること」、そして「アットファミリーなケア」の3つを柱に指導を行っています。多くの子供たちがプロ選手になることを夢見てサッカーに取り組んでいますが、その夢を実現できるのはほんの一握りです。そのため、将来どのような道に進んでも困ることのないよう、学業とスポーツを両立できる総合的な人材育成を目指しています。
―――国際展開や育成に関して、他にどのようなことに取り組んでいますか?
パストール 各国でサッカーを指導する一方で、レバンテへの留学の受け入れも行っています。ここではサッカー以外にも、他国の生徒と交流して文化や価値観を学ぶ、言語を覚える、課題を解決するなど、国際的でオープンなマインドを身に着けてもらうことに注力しています。
生徒の中には、自国の経済や治安の問題から、必ずしも良い教育を受けてこられなかったケースもあり、この合宿がそんな子供たちのターニングポイントとなって、人生を変えるチャンスを提供できればと思っています。
―――今までにどれぐらいの子供たちを指導してきたのですか?
パストール これまでの9年間で約3500人の育成を行ってきました。レバンテを訪れた子供たちは、クラブの歴史や価値観を知り愛着を持ってくれますし、中にはスペインに家族と移り住んできたケースもあります。ここで学んだ子供たちが人として、サッカー選手として成長してくれればうれしいですし、いつかレバンテでプレーしてくれる選手が出てくれば、なお素晴らしいですね。
―――最後に、今後の展望について教えてください。
パストール これまで通り、選手やその家族のサポートを第一に、世界中で子供たちの成長を手助けしてサッカー界に貢献できればと思います。夢を叶えるためには、将来の目標を定めて前向きに取り組んでいくことが何よりも大事ですから、そのマインドを伝えていきたいですね。
国際展開の面では、伝統的に深いつながりを持つ中南米に加えて、アジアでの展開にも注力していきます。フィリピン、マレーシアなど新たな市場を開拓しつつ、日本など既存のマーケットも大切にしていければと考えています。

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