2014.09.10

26人もの選手をレンタル移籍に出すチェルシーの是非を問う

チェルシー
チャロバー(左)、マクイクラン(中)、カクタ(右)はレンタルに出されている [写真]=Getty Images

 9月9日、英紙『ガーディアン』にこんな記事が掲載された。

「チェルシー、26選手をローンへ。ルール改訂の時期か?」

 今シーズン、チェルシーは26人もの選手をレンタル移籍に出している。実に1チームを作れる人数で、レンタル選手の市場価値だけで「総額1億ポンド」と言われている。

 境遇は様々。たとえば、今夏アンヘル・ディ・マリアに塗り替えられるまで“英国最高額の男”だったフェルナンド・トーレスは、2年間のレンタルでミラノに旅立った。彼はチェルシーとの契約が残り2年。二度とスタンフォード・ブリッジで青いシャツをまとうことはないだろうというのが一般的な見方だ。

 マルコ・ファン・ヒンケル(ミラン)やマルコ・マリン(フィオレンティーナ)、ヴィクター・モーゼス(ストーク)あたりは代表クラスの実力者で、獲得にもそれなりの金額がかかったが、出場機会を求めてレンタルに踏み切っている。

 一方で、20歳のDFケネス・オメルオ(ミドルズブラ)はナイジェリア代表のレギュラーとしてワールドカップに出場しているが、2011年夏にスタンダール・リエージュから引き抜かれて以降、チェルシーのファーストチームでは一度もプレーしたことがなく、12-13はオランダのADOで、そして昨季後半と今季はミドルズブラへの“修行”だ。

 26人の大半はこのオメルオと同じく、10代後半~20代前半の若者で、チェルシーの公式戦では青いユニフォームを着たことがなく、そして今後もほとんど着ることがないであろう選手たちだ。

 多くは“フィーダークラブ”である2部のミドルズブラやオランダのフィテッセ、その他欧州各国のクラブに出向する。たとえそこで活躍しても、フィテッセで輝いたルーカス・ピアソン(フランクフルト)やトマス・カラス(ケルン)のように、復帰後すぐに再レンタルに出るパターンが多い。

 結果、同じ“フィテッセ組”で今夏サンダーランドへの完全移籍を選んだパトリック・ファン・アーンホルトのように、伸び悩んだままチェルシーと決別する選手も出てくる。彼はクラブが「アシュリー・コールの後継者」として名前を挙げた左サイドバックだったが、そうはならなかった。彼と並んで指名を受けていたライアン・バートランドも気付けば25歳になり、今季は買い取りオプション付きでサウサンプトンにレンタル移籍していった。

『ガーディアン』の記者は、この現状に懸念を投げかけている。もちろん選手個々の実力や資質も関わってくるが、ファーストチームでプレーすることすらなく潰れていく選手が多く生まれてしまうのは、チェルシーの戦略とレンタルのシステムに問題があるのでないか。それが同紙の主張だ。

 今夏、エヴァートンに完全移籍したロメル・ルカクのように、結果的に「安く買って高く売る」ことになってチェルシーに利益をもたらした選手や、アトレティコ・マドリードで飛躍し、チェルシーの正GKとなったティヴォー・クルトワのような“成功例”もあるが、それはひと握り。選手だけが“犠牲者”になるパターンがあまりに多いのだ。

 21歳のMFジョシュ・マクイクラン(フィテッセ)は、7歳からチェルシーに在籍する生え抜きで「未来のイングランド代表」と誉め称えられた選手だが、カルロ・アンチェロッティ時代にチャンスをもらって以降は伸び悩みが続いている。スウォンジー、ミドルズブラ、ワトフォード、ウィガンと渡り歩き、今季はオランダへ。イングランド国内では、チェルシーのレンタル戦略が彼の成長を阻害していると批判の声が挙がっている。

 国内では、今夏のプレシーズンで活躍したにも関わらず最終的にレンタルに出されたU-21代表MFナサニエル・チャロバー(バーンリー)がマクイクランの“二の舞”になってしまうのではないかと心配されている。

 国外組では、ガエル・カクタ(ラージョ・バジェカーノ)が象徴的な“犠牲者”とされる。小柄なドリブラーは07年にフランスのRCランスからやってきたが、当時は引き抜きを巡ってFIFAとひと悶着があったことで有名だ。そこまでして獲得した選手も、フルアム、ボルトン、ディジョン、フィテッセ、ラツィオとレンタルに出され、今季はスペインへ。チェルシーのファーストチームでプレーしたのはわずか6試合で、最後にプレーしたのは5年前。明らかに成長の跡が見えない。

 テクニカル・ディレクターのマイケル・エナメロは、「18歳~21歳は選手にとって大事な時期。チャンスがあるクラブで競争するのがベストな選択」と語る。だが、実際には有望株と言われた選手がファーストチームでチャンスをもらう例はほとんどなく、いたずらにレンタル選手が増えていく現状で、元々「若手にチャンスを与える」ために生まれたこのシステムが機能しているのかは議論の余地がある。

 現在、プレミアリーグの規約では、国内クラブからシーズンレンタルで獲得できる選手は1シーズンに2選手まで。同じクラブから同時に複数の選手を借りることはできない。ただ、FIFAの規約とも関わってくる“国外からのレンタル”に関しては規制がなく、レンタルに“出す人数”については国内外関係なくノールールだ。

 元々、「ビッグクラブの若手が成長できる」「ビッグクラブは労せず選手に経験を積ませることができる」「資金力のない中小クラブは補強がしやすい」という3点で全員に利益があったはずのレンタルシステムだが、肝心の1番目の要素が成り立たないならこれは機能していない。

 現状、プレミアリーグはU-21リーグを“育成の柱”としており、この件に関しての議論は盛んとは言えない。だが、こんな『ガーディアン』の声が、ここからどう波及していくのか。今後も注目してみたい。

(記事/Footmedia)

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