2017.02.09

【未来のスターたち】確実に成果を上げているドルトムントの育成戦略とは?

注目クラブ、テーマをピックアップし、多角的に掘り下げるワールドサッカー誌。チャンピオンズリーグやワールドカップなどの特集企画も掲載。幅広い海外サッカーファンに向けたワンテーママガジン。

不本意な戦いが続く今シーズン、ドルトムントの明るい話題と言えば、20歳前後の若手プレーヤーが次々とピッチに立っていることだろう。さらにこの冬には、17歳の“怪物”アレクサンデル・イサクを獲得。長期間かけて築いた育成戦略が、確かな成果を出しつつあるのだ。

文=鈴木智貴 Text by Toshiki SUZUKI
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

[ワールドサッカーキング3月号「BORUSSIA DORTMUND プライドと狂気のフットボール」]

次々と頭角を現すフレッシュな才能


 現在のドルトムントにとって明るい話題と言えば、若手の台頭が著しいことだ。今シーズン開幕前に補強した8人全員が25歳以下で、うち4人は23歳未満。オサスナからやって来たMFミケル・メリーノはアピールの場が限られているものの、23歳のラファエル・ゲレイロ、ともに10代のMFエムレ・モルとMFウスマン・デンベレは、早くも重要なピースとなりつつある。昨年1月末、わずか17歳でブンデスリーガデビューを飾ったMFクリスティアン・プリシッチも、生きのいいパフォーマンスで評価を上げている。

 昨年8月中旬に開催されたドイツ・スーパーカップの試合後、香川真司は新加入の若手についてこう語っていた。

「(新加入選手は)サイドアタッカーが多い。だからバイタルで受けることだったり、中盤の中で受ける選手という意味では、特徴は僕と違うところがあると思うので、そこは(自分の)メリットを感じている。もちろん彼らのスピードやドリブルはすさまじいクオリティーがある」

 ところが、サイドアタッカーと見なされていたデンベレ、モル、ゲレイロは中央のポジションも任せられるようになり、攻撃のオールラウンダーとして起用されている。まだ連動性が不十分なシーンも見受けられるが、彼らの強烈な個の力がチームを救ったことも、1度や2度ではない。

 これほど有能な若手を、なぜドルトムントは次々と獲得できるのだろうか。もちろん、世界中にネットワークを張りめぐらせ、新たな選手を発掘できる勤勉なスカウティングチームがあることが大前提だろう。ただし、そこから先はミヒャエル・ツォルクSDの出番になる。数々のビッグクラブから誘いを受けていたデンベレは、ドルトムントを選んだ理由についてこう語っていた。

「ドルトムントはとても早い段階から、僕の獲得を目指していつもコンタクトを取ってくれた。僕はそこに感銘を受けたんだ」

 一般紙『フランクフルター・アルゲマイネ』によれば、ツォルクはデンベレだけでなく、周囲の人間も巻き込んで動いていた。デンベレの代理人が「どのクラブに移籍するか、最後に決断をしたのは彼のお母さんだ」と明かしたように、ツォルクはデンベレの母親ファティマタと何度も話を重ね、ドルトムントに移籍させるよう説得していたという。


育成クラブとして築いた戦略と評価


 若手選手がドルトムントを移籍先に選ぶもう一つの理由は、確実な成長が見込めることだ。

 近年のドルトムントはMFマリオ・ゲッツェ、FWロベルト・レヴァンドフスキ、DFマッツ・フンメルス、MFイルカイ・ギュンドアンなど、才能ある選手をスターに育て上げ、最終的にはバイエルンを筆頭とするビッグクラブへ引き渡してきた。最近も、ハンス・ヨアヒム・ヴァツケCEOは『キッカーTV』に出演した際、ギリシャ神話の“シーシュポスの岩”を引き合いに出した。シーシュポスは神を欺いた罰として巨大な岩を山頂まで運ぶように命じられるのだが、岩は山頂に届く寸前で必ず転がり落ちてしまうのだ。

「素晴らしいチームを作ったと思ったら、バイエルンがやって来て選手を持っていってしまう。我々のチームは壊され、再び上っていかなければならないんだ。それを防ぐことはできないだろう。我々の上をいくクラブが存在することを認識しなければ。バイエルン、レアル・マドリード、マンチェスター・ユナイテッドへの移籍は今後も起こり得ることだ」

 1億2000万ユーロ(約144億円)もの負債が発覚し、クラブが破産寸前まで追い込まれたのは12年前。そこから立ち直るために、彼らは強化方針を抜本的に見直さなければならなかった。

「我々は資金力のあるクラブと異なる道を歩まなければならない。(年俸が高い) 28歳の選手だけで戦うのは無理なんだ。まだトップレベルに到達していない選手も獲得するしかない」

 ツォルクがそう話したように、ドルトムントは「将来性のある選手を育てる」、「若手がトップレベルに到達してもとどまらせるが、無理なら高値で売却する」というクラブ戦略を作り上げた。

 先日、“イブラヒモビッチ2世”の呼び声も高い17歳のFWアレクサンデル・イサクを獲得できたのも、この戦略のおかげだ。ドルトムントが若手に十分な出場機会を与え、成長を促すクラブだということは、すでに広く知れわたっている。ヴァツケも「その評判は救いだ」と語っている。“ビッグクラブのための育成工場”になるつもりはない。しかし、クラブの伝統を守りつつ成長していくために、目の前の現実とも向き合う││その軸がブレない限り、ドルトムントからは今後も、世界中の注目を集めるビッグプレーヤーが誕生し続けるはずだ。

ワールドサッカーキング2017年3月号「BORUSSIA DORTMUND プライドと狂気のフットボール」では、ドルトムントを大特集。ホームに8万人もの熱狂的な観客を集める、このクラブの魅力の秘密はどこにあるのか? 一冊を通してさまざまな観点から考察しています!

ワールドサッカーキング3月号

[主なコンテンツ]

ワールドサッカーキング2017年3月号はドルトムントを大特集。ブンデスリーガの得点ランキングトップを快走する(2月9日時点)ピエール・エメリク・オーバメヤンのインタビューや、マルコ・ロイスの“クラブ愛”に迫るストーリー記事、香川真司選手のレポート記事はドルトムントファン必読の内容。他にも、過去20年のメンバーと成績を網羅したデータページや、かつてのこのクラブで大活躍したFWヤン・コレルのインタビューなど、オールドファンにもなつかしい企画を詰め込んだ一冊になっています。

Jリーグ順位表

川崎F
72pt
鹿島アントラーズ
72pt
C大阪
63pt
Jリーグ順位をもっと見る
湘南
83pt
長崎
80pt
名古屋
75pt
Jリーグ順位をもっと見る
秋田
61pt
栃木
60pt
沼津
59pt
Jリーグ順位をもっと見る