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[捲土挑来――。指揮官、語る] 曺 貴裁「“らしく”あれ。」①

[写真]=神山陽平

今シーズンのキャッチフレーズは“捲土挑来”。再び勢いを盛り返して巻き返すことを意味する言葉の造語は、湘南ベルマーレを想う、すべての人が送る監督へのメッセージ。ベルマーレを率いて6年目。背負っているものは決して小さくはない。けれど―。「選手に対しても“らしさ”で勝負するしかない」「夢とか希望を捨ててやりたくないんだよ」曺貴裁監督の心は、いつでも真っ直ぐだ。

インタビュー・文=細江克弥

Jリーグサッカーキング5月号[湘南ベルマーレ特集]共走-KYOUSOU-

 いやー、とにかく最高に面白いインタビューでした。その面白さを文字で伝えるために試行錯誤した結果、曺貴裁監督の言葉がなるべくストレートに伝わるように、お預かりした言葉をそのまま文字に変換することにしました。

 インタビュー中、曺さんは初対面の自分にフランクな言葉で話してくれました。感情に任せて「俺」と言ったり「僕」と言ったり、大きく笑ったり少し強めに否定したり。誰に対しても平等で、オープンマインドで、いわゆる人間臭さを全く隠さないところがこの人の“らしさ”であることは、ファン・サポーターの皆さんならよくご存知だと思います。だから、この記事においては、いつもなら文語に直したくなる口語をそのまま使いました。「だもん」「じゃん」「だってさ」という言葉に乗る曺さんの感情を想像していただけたら、記事に臨場感と立体感が生まれるかもしれません。

 申し訳ありませんが、サッカーの話はほとんどしていません。でもインタビューの最後に曺さんが「そういうのもたまにはいいんじゃない」と言ってくれたので、安心して掲載します。いつもなら冒頭からこんな書き方はしませんが、インタビューを終えた僕が、少なからず曺さんの影響を受けてしまったことも併せてご想像ください。

[写真]=神山陽平

自分の中にはっきりとした“正”の方向がある

今日はよろしくお願いします!

こちらこそ!

実は僕、実家が●●●あたりでして……。

ホント!? すげー近いじゃん。

そうなんです。なので、曺さんとこうしてお話しするのは初めてなんですが、勝手に親近感を抱いております。

いいね、そういうの(笑)。

今回のインタビューなんですが、曺さんは取材を受けることも多いので少しテイストを変えたいなと思いまして。

どんなふうに?

ひとまずサッカーの話は置いておいて、曺さんの人間性をもっと知りたいなと。

おー、なるほど。

でも、まずは素朴な疑問から。曺さん、どうして今シーズンも湘南ベルマーレの監督を引き受けたんですか?

逆に、どうしてそう思うの?

指導者としての曺さんの評価が、ものすごく高いからです。曺さんのようなタイプの指導者に来てもらいたいと思っているクラブは、他にもたくさんある気がして。

ホントに?

分かりません(笑)。でも、あるとしたら、指導者としてステップアップするチャンスでもあるんじゃないかなと。

うーん……。これまでのキャリアで自ら環境を変えた、あるいは変えざるを得なかったことも確かにある。ただ、指導者としての今の自分としては、例えば「いい選手がたくさんいるから」「クラブハウスがすごいから」「資金が潤沢だから」という理由で仕事に対する温度が上下しないんですよ。つまり、環境の変化によってモチベーションが変わるなんてあり得ない。

なるほど。

育成年代を指導したからといって「ホントはプロを教えたかったんだけど」なんて全く思わないし、適当にやったこともない。あの頃だって、本当に毎日が真剣勝負。今と何も変わらない。

それは、何となく想像できます。

自分の中では、はっきりとした“正”の方向があるの。仕事に対する内的なモチベーションがその“正”の方向に向かっていると感じれば、環境なんて関係ない。今回に関してはクラブからそれを求められたし、クラブに対して“正”の方向性を感じているから引き受けたということ。

でも、指導者である以上「勝利」を求めますよね? 環境を変えることでその可能性を高めることもできると思うんです。

ある一つの角度ではそのとおりだと思う。能力の高い選手が多いクラブ、お金がたくさんあるクラブに行けば、試合そのものに勝つ可能性は高まるかもしれない。だけど、それはすごく一元的なものでしょ。日本代表クラスの選手がたくさんいたとしても、勝つために尽力する。でもそこには同じように難しさ、デメリットがあると思うんだよ。

う~む……確かにそうかもしれません。

例えば、試合に勝ちまくって、めちゃくちゃ順位も上がり、10億円稼いでお金持ちになれたとする。その状態が現状から見ればステップアップだとしても、俺自身がポジティブな意味でどう変わるのか全く見えない。間違いなく幸せだと自信を持って言うことはできないし、少なくともそれがチャレンジかどうかも自分では確信がない。もちろん、「ステップアップするために環境を変える」という決断も尊重するよ。特に選手はそれでいいと思うし、(永木)亮太(現鹿島アントラーズ)や(遠藤)航(現浦和レッズ)の決断は正しい。俺もあの年齢だったらそうすると思うもん。でも、今の俺は違う。ただ、目の前の「勝利」や「お金」を尺度とするステップアップなんて、全く望んでいないんだよね。

そっかあ……。

いや、たぶん、たぶんだよ。なんかすごい話があったら、意外とあっさり環境を変えちゃうかもしれない(笑)。

でも、それはそれで、いろいろなことを察することができそうです(笑)。

ハハ。つまり何が言いたいかというと、俺自身、ベルマーレに寄りかかっているわけじゃないし、ベルマーレだけが特別じゃないということ。ベルマーレは社会の一部で、地域の一部で、みんなのもの。悲しいかな、資金力のところで選手がどんどん出ていってしまうけど、そういうチームをどうステップさせるかに今の俺の内的モチベーションがある。だからここにいる。

やっていることの意味その尺度は勝利じゃない
指導者としての弱み? そんなのいっぱいあるよ

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