2017.02.10

【アジアサッカーの今】インド/進化を遂げるインドスーパーリーグ

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3年目を終えたインドスーパーリーグ。遊佐やカレンがプレーするなど、今後は日本人選手の選択肢にもなり得る。2017年にはインドリーグと統合することが決定しており、今後、さらなるレベルアップと知名度の上昇が見込まれる。インドサッカーは、新たな時代に突入しつつある。

文=木米貴久(アジアサッカー研究所)
Text by Takahisa KIYONE(Institute for Future Asian Football)
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

[Jリーグサッカーキング2月号増刊「進化を遂げるタイサッカー」]

広島や金沢でプレーした遊佐克美は2010年からインドで活躍する


日本国籍の選手も活躍


 インドスーパーリーグ(ISL)は3年目を終え、組織としての真価が問われるシーズンとなった。アレッサンドロ・デル・ピエロやダヴィド・トレゼゲがインドでプレーすることで話題を呼んだ2014年のオープニングゲームは、7万人を動員した。翌15年もロベルト・カルロスが監督兼プレーヤーとして参加し、プレーオフ決勝戦ではジーコ監督率いるFCゴアとマルコ・マテラッツィ監督のチェンナイインFCが激突するなど様々な話題を呼び、国民からの人気も徐々に高まっていった。そして16年10月1日、ノースイースト・ユナイテッドFC対ケララ・ブラスターズFCの開幕戦でシーズン3がスタートした。

 昨年は日本国籍のプレーヤーが初めて登録された。特に注目を集めたのは、インドリーグ(Iリーグ)のモハン・バガンからノースイースト・Uにレンタル移籍した遊佐克美だ。なんとシーズン開幕戦の最初のゴールを、遊佐が挙げたのだ。Iリーグで活躍していただけに元々、注目は集めていたが、地元メディアもこぞって遊佐の活躍を取り上げた。シーズン半ばには、かつてジュビロ磐田などでプレーしたカレン・ロバートも同チームに加入し、大事な試合でアシストを記録するなど、日本人選手のレベルの高さをアピールした。残念ながらチームはプレーオフ進出を果たすことはできなかったが、今後の日本人選手の増加につながる大きな要因となった。

 カレンはISLの印象について、次のように語っている。

「他国のリーグとは違って非常に短期間で行われるので、組織力というより個人のレベルが勝敗を大きく左右するリーグだと感じました。インド人選手と外国人選手の実力差も大きく、チームをまとめる監督は難しいのではないかと思います。今後はタイリーグのように、日本人がISLでプレーする機会が増えていくと思います」

 インドは日本よりもタフな生活を強いられるイメージがあるかもしれないが、ISLのチームに所属すれば待遇は良く、プレーに集中できる環境は整っているようだ。

昨シーズン、ムンバイ・シティFCに加入したディエゴ・フォルラン


往年の名選手も活躍


 そして昨シーズンも、各国の代表でプレーした経験があり、ワールドカップやヨーロッパのビッグクラブで活躍した往年のスター選手が各チームのマーキープレーヤー(別表参照)となり、ファンを楽しませてくれた。また、監督では引き続きジーコがFCゴアを、マテラッツィがチェンナイインFCを率いたのに加え、デリー・ダイナモスの監督にはユヴェントスやバルセロナでのプレー経験を持つジャンルカ・ザンブロッタが就任した。サッカーファンなら一度は耳にしたことのある有名選手たちが、インドサッカー界の成長に尽力しているのだ。

 特にセレッソ大阪でのプレー経験もあり、昨シーズン、ムンバイ・シティFCに加入したディエゴ・フォルランは、シーズン半ばの試合でハットトリックを達成するなどチームのプレーオフ進出に貢献し、存在感を示した。昨シーズンのISLの中で最も高額収入な選手でもあり、4カ月契約で報酬は6000万ルピー(約1億円)と言われている。シーズン終盤、フォルランは「インドサッカーのレベルはすでに高く、ヨーロッパでも通用するレベルにある」と地元メディアに語っている。

 プレーオフはリーグ戦で上位に入ったムンバイ・シティ、アトレティコ・デ・コルカタ、ケララ・ブラスターズ、デリー・ダイナモスの4チームで行われた。決勝はケララ・ブラスターズ対アトレティコ・デ・コルカタ。前者の本拠地であるケララ州コチのジャワハルラール・ネルー・スタジアムで行われた。同スタジアムは17年のU-17W杯の会場にも内定しており、6万人収容可能の巨大なスタジアムだ。決勝は1-1のまま突入した延長戦でも決着がつかず、PK戦の末にアトレティコ・デ・コルカタが2度目の優勝を飾った。

2リーグの統合が決定


 16年11月5日、カルナータカ州に本拠地を構え、Iリーグに所属するベンガルールFCが、インドのクラブとして初めてAFCカップで決勝進出を果たした。キャプテンのスニル・チェトリが「自身のキャリアで最も大事な試合」と位置づけた決勝は、惜しくもイラク・プレミアリーグのアル・クウワ・アル・ジャウウィーヤに0-1で敗れてしまったが、インドサッカーのレベルが上がっていることを証明したと言っても過言ではないだろう。

 これを受け、全インドサッカー連盟(AIFF)はISLとIリーグの統合を本格的に検討し始めた。07年にインド初のプロサッカーリーグであるIリーグが設立され、13年にはISLが設立された。FIFAの規定で1国1リーグ制が定められているので、今までISLは「トーナメント戦」と位置づけられていた。しかしAIFFとFIFAの度重なる協議の末、AIFFは17年U-17W杯後に両リーグを統合すると発表した。ISLが1部、Iリーグが2部となる見込みだ。

 もちろん課題は山積されている。ISLは多くの外国人選手が登録されている。しかし統合後はアジアサッカー連盟(AFC)の規定に従って最低7名のインド人選手がピッチに立たなければならなくなる。ISLではこれまで半分以上が外国人選手で占められていたが、今後はその数を減らし、インド人プレーヤーを確保することが急務となっている。このルールに準じれば、既存のISLのチームがAFCカップに出場することが可能になるので、今回のベンガルールFCの戦いぶりを参考にしながらAFCカップでの初優勝を目指すことが当面の目標になるだろう。

 なお、IリーグからはベンガルールFCのみが1部リーグに参戦する予定だ。ISLに参入するには莫大な資金が必要となるため、大口のスポンサーがついていないIリーグクラブの1部リーグ参戦は難しい。100年以上の歴史を持つモハン・バガンでさえ、1部には参戦しない意向を示している。しかし、Iリーグクラブの中で1部リーグに参戦できる資金力を備えているのは、インド国内でも最大手企業の一つであるJSWグループがスポンサーになっているベンガルールFCだけだ。

インドサッカー“元年”


 新たなリーグ発足に向けての歩みを進めるインドサッカー界。17年10月にはU-17W杯も控えている。日本代表は16年9月から10月にかけてインドのゴアで行われたAFCU-16選手権で4強入りし、U-17W杯への出場を決めている。バルセロナの下部組織に所属していた久保建英(FC東京U-18)も同大会に出場する予定だ。準備も着実に進んでおり、会場もデリー、コルカタ、ムンバイ、マドガーオン、グワーハーティー、コチに決まった。AIFFは将来的にインドにW杯を誘致する意向を示しており、19年U-20W杯の開催地にも立候補する予定だ。

 インド代表も着実にFIFAランキングを上げているが、16年12月時点で135位と、アジアの中でも低い位置にいる。しかし今後、ISLとIリーグの統合によって自国リーグの活性化と自国プレーヤーの技術発展、U-17W杯の開催によって育成年代の技術向上が進めば、インドサッカーはさらにレベルが上がり、世界での知名度やFIFAランキングはどんどん上がっていくだろう。

 16年10月には、U-19インド代表に名を連ねるアシク・クルニヤワンがビジャレアルのアカデミーと1年間のローン契約を結び、インド人初のスペインクラブ所属選手も誕生した。インド人プレーヤーやインドサッカーが世界中から熱い注目を浴びる日も、そう遠くはないだろう。2017年は、その始まりの年となりそうだ。

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