2017.02.10

【インタビュー】青山直晃(ムアントン・ユナイテッド)「タイ王者としてJ王者と戦う」

サッカー総合情報サイト

ムアントン・ユナイテッドに移籍してから2年が経過した。2016シーズンは多くのタイ代表選手と共にプレーし、タイ・プレミアリーグ制覇という目標を達成した。2017年にはタイ王者としてACLに出場し、Jリーグクラブとも対戦する。タイ国籍取得すら考えた男が、タイサッカーの威信を懸けてアジアとの戦いに挑む。

インタビュー・文=本多辰成 Interview and text by Tatsunari HONDA 写真=本多辰成、ゲッティ イメージズ Photo by Tatsunari HONDA, Getty Images

[Jリーグサッカーキング2月号増刊「進化を遂げるタイサッカー」]

タイの選手は能力が高い


ムアントン・ユナイテッドでの2シーズン目が終わりました。リーグ戦は国王の崩御で3節を残して終了(編集部注:2016年10月13日にプミポン前国王が亡くなり、サッカーの国内リーグやムエタイの試合などのイベントが中止になった)という意外な結末でしたが、優勝を決めました。
リーグ戦が終了すると最初に聞いた時は、「さすがにそんなことはないだろう」と思ったんですが、実際に会長と監督から「今シーズンはもう試合が行われない」と伝えられて、気が抜けた感じです。タイの人たちがみんな黒い服を着ている状況の中で、あまり喜ぶこともできませんでしたけど、残りの3試合も勝つ自信がありましたし、優勝は優勝だと思っています。これで来シーズンはACL(AFCチャンピオンズリーグ)に出場できますし、それは本当によかったと思います。

2016シーズンのムアントンはタイ代表の選手が大量に加入して“ドリームチーム”と呼ばれました。タイ代表のスタメンに外国人選手が加わったようなチームでしたが、勝つべくして勝ったという感じでしょうか。
タイ代表の選手たちが入ってきて、勝たなければいけないという雰囲気がありました。確かに選手の質は去年より上がったので楽に勝てる試合も増えましたが、ラッキーな試合も数多くありました。ロスタイムの得点でなんとか勝ち点を獲得するなど、運が良かったと思える試合も5、6試合あったんです。ロシア・ワールドカップのアジア予選があったので、タイ代表選手が多いぶん、コンディショニングが難しいところもあったと思います。終盤は疲れていたかなという部分もありました。

実際にタイのトップレベルの選手たちと一緒に戦ってみて、彼らの能力についてはどのように感じていますか?
タイに来て最初に驚いたのが、ムイ(ティーラシン・デーンダーの愛称)の能力の高さでした。ドリブル、パス、シュートとどれもレベルが高くて、キープもできる。攻撃の選手としてほとんど完璧と言ってもいいようなプレーヤーで、「タイにこんな選手がいるのか」と驚きました。Jリーグでもこれほどの質の選手がどれくらいいたかなと思うほどです。今年、入ってきたタイ代表の選手たちもみんな技術があって、個人の能力は本当に高いです。

チームとしては、1年目は近年のタイ最強クラブであるブリーラム・ユナイテッドとは力の差を感じたということでした。2年目は印象が変わりましたか?
そうですね。2016シーズンは公式戦で3回くらい勝ちましたし、去年とは印象が変わりました。ブリーラムに勝ったということは、タイのチャンピオンと言っていいと思いますし、実力も一番のチームになったと思います。

2年目はブリーラムに代わってバンコク・ユナイテッドが優勝争いのライバルとなりました。
勝ち続けてもバンコク・Uだけは離れずに最後までついてきたので、プレッシャーは感じていました。バンコク・Uは、2015年にムアントンにいた司令塔のマリオ(ジュロヴスキー)の加入が大きかったと思います。決定的なパスを出せて得点も決められる。僕らも15年はマリオに助けられて2位までいけた感じでしたし、独力でチームを変えられるような影響力のある選手なので。当時の監督と合わないところもあってムアントンを出ることになったんですが、今年のチームに彼がいたらもっと面白いことになっていただろうな、と思います。

これでタイ王者としてACL本選に出場することになりました。Jリーグクラブとの対戦もありますが(編集部注:ムアントンは鹿島アントラーズと同じグループEに入った)、どんな展開をイメージしていますか?
タイに来た一番の理由が、ACLでJリーグのチームと対戦して勝つという目標があったからなので、ACL出場が決まってまずはホッとしています。やってみなければ分かりませんが、やれる自信はあります。正直、早い時間に失点してしまうと厳しいと思うので、DFとしてはやりがいがありますね。後半まで無失点でいけば相手も焦ると思いますし、そうなれば何が起きるか分かりません。まだJリーグのチームや選手の特徴が感覚として残っているので、このタイミングでやれるのはよかったと思います。

ロシアW杯のアジア最終予選では、タイ代表と日本代表が対戦


タイ人選手は欧州向き


ロシアW杯のアジア最終予選では、タイ代表と日本代表が対戦しました(編集部注:第2節で対戦し、2─0で日本が勝利した)。あの一戦にはどんな印象を持ちましたか?
タイは最終予選初戦のサウジアラビア戦で負けた(0─1)のが大きかったと思います。内容的には勝ちゲームだったのに、それが負けになってしまったことでメンタルや戦い方など、リズムが崩れた感じがしました。結果論ですけど、初戦はもったいなかったなと。初戦の内容を見て、タイのいいところが出たら日本戦も面白いと思ったんですが、厳しい試合になりましたね。

攻撃面でのタイの魅力が全く見せられない試合でした。
ロシアW杯のアジア最終予選では、タイ代表と日本代表が対戦しました(編集部注:第2節で対戦し、2─0で日本が勝利した)。あの一戦にはどんな印象を持ちましたか?
タイは最終予選初戦のサウジアラビア戦で負けた(0─1)のが大きかったと思います。内容的には勝ちゲームだったのに、それが負けになってしまったことでメンタルや戦い方など、リズムが崩れた感じがしました。結果論ですけど、初戦はもったいなかったなと。初戦の内容を見て、タイのいいところが出たら日本戦も面白いと思ったんですが、厳しい試合になりましたね。

攻撃面でのタイの魅力が全く見せられない試合でした。
日本を相手に引いて守りましたが、タイは今までそういうサッカーをしていないので、ただ走らされている感じで効率のいい守り方ではありませんでした。相手の長所を消す日本の戦い方もあって、タイにとっては全てが悪いほうに出たと思います。サウジアラビア戦でボランチのサーラット(ユーイェン)がレッドカードをもらって日本戦に出場できなかったのも痛かったです。守備もできて縦パスも通せて、彼は攻守全ての起点だったので。

タイの選手たちが、日本をリスペクトし過ぎていたようにも感じました。
そうですね。実際、選手たちは試合が終わってチームに戻ってきても「日本は強かった」、「あの選手はすごかった」という感じでしたから。日本であればみんなすごく厳しい顔で帰ってくるのが想像できましたから、もう少し悔しがってもいいんじゃないかと。ちょっとリスペクトし過ぎというか、もう少し何かしてほしかったとは思います。ただ、深刻に受け止めないですぐに切り替えられるのがタイ人のいいところでもあるので、難しいところです。いい部分として、それを伸ばしていったほうがいいのかもしれないとも感じるので。

今後、もしタイの選手たちがJリーグでプレーするようになれば、そういった面も変わってくるのでしょうか。
正直、個人的にはタイの選手はJリーグよりもヨーロッパに行ったほうがいいんじゃないかという気もしています。日本のサッカーは組織的で決まり事も多く、特殊だと思うので。そういう中でプレーすることがタイの選手にとってプラスになるのかというと、ちょっと疑問に感じるところがあります。サッカー自体は基本的に変わらないヨーロッパのほうが成長できるんじゃないかと。実際、ムイはスペインリーグを経験して(編集部注:14─15シーズンにアルメリアにレンタル移籍した)、今ではすごく余裕を持ってプレーしていますから。

年代別日本代表で五輪予選に出場した経験がある青山。A代表での試合出場歴がないため、タイ国籍取得も真剣に考えたという

タイ国籍取得も考えた


今の日本代表には、北京オリンピック予選を共に戦った青山選手の同年代が多くいます。もう一度日本代表のユニフォームを着たいという思いはありますか?
タイに来てから成長した部分もありますし、そういう思いが出てきた時もありました。でも、年齢を考えても今は正直ほとんどなくなりましたね。逆に最近は、自分がタイ代表としてプレーすることはできないんだろうかと考えることがあります。タイ国籍を取得するにはどういう条件が必要なのか、ちょっと本気で調べてみました。タイに5年間滞在していることに加えてタイ語の能力も必要みたいなので、年齢を考えると実際には難しいと思いますが。

その思いは、どういったところから生まれたのですか?
やっぱりチームメートにタイ代表の選手が多いので、力になりたいという思いからだと思います。これだけチームメートがいなければ、タイ代表の試合もそこまで見ていないと思うので。やっぱりチームメートが日本にああいう形で負けるのはつらいですし、複雑な思いがありますから。

青山選手がセンターバックに入ることで、タイ代表でもムアントンのチームメートたちの力になりたいと。
そうですね。具体的に言うと、ムアントンではボランチをしているタナブーン(ケサラット/16年11月にチュンライ・ユナイテッドへの移籍が発表された)がタイ代表ではセンターバックをしているんです。個人的に彼は最高のボランチだと思っているので、代表でもボランチに入って攻撃の起点になってほしい。自分がセンターバックに入れば、彼がボランチに入ることができます。そうすることで、中盤のサーラットも前線のムイも一つ前のポジションでプレーできて、よりゴールに近づく戦い方ができると思うので。

ムアントンでやっていることが、そのままタイ代表でもできるということですね。
そうなんです。それを実現できるのがACLなので、その意味でもACLでのJリーグクラブとの対戦を楽しみにしています。ACLで日本のクラブといい試合ができれば彼らも自信がつくと思いますし、W杯予選の戦い方も変わってくると思います。リーダーシップを発揮して引っ張るタイプではないので、プレーで貢献できればと思っています。

青山直晃(あおやま・なおあき)
1986年7月18日生まれ、愛知県出身のDF。前橋育英高校から2005年に清水エスパルスに加入し、横浜F・マリノス、ヴァンフォーレ甲府を経て2015年にタイ・プレミアリーグのムアントン・ユナイテッドに移籍。2016シーズンの国内リーグ制覇に貢献した。

総力特集~進化を遂げるタイサッカー~ Jリーグサッカーキング増刊『アジアサッカーキング』

[主なコンテンツ]

1月20日(金)、アジアサッカー界のコアな情報をお届けする『アジアサッカーキング』の待望の2号目が発売されます。今号では「進化を遂げるタイサッカー」と銘打ち、隆盛著しいタイサッカーを総力特集。元Jリーガーであり、現在はタイ王者ムアントン・ユナイテッドに所属する青山直晃選手のインタビューをはじめ、タイリーグ全体や2017シーズンの1部昇格を決めた日系クラブのタイ・ホンダFC、そして近年目覚ましい成長を続けるタイ代表にスポットを当てた重厚なコラムをお届けします。さらに第2特集では「躍進するアジアフットサル」に焦点を当てます。フットサル日本代表を長年率い、現在はタイ代表の指揮官を務めるミゲル・ロドリゴ監督のインタビューを掲載。また、“アジアの盟主”であるイランやアジアフットサル界で存在感を高める東南アジア各国のコラムは必見です。その他にも、インドリーガー孫民哲選手のインタビューをはじめ、Jリーグのアジア戦略について取り上げた「Jリーグとアジア」など注目コンテンツが目白押し。「日中韓データで見る サッカー三国志2017WINTER」では、日本、中国、韓国を国内リーグや代表チームのデータから徹底比較します。圧倒的なボリューム感でお届けする『アジアサッカーキング』。ぜひご堪能ください。

  • 発売日:2017年1月20日

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