今季から、なでしこリーグ2部に参入した女子クラブ「FCふじざくら山梨」の新入団記者会見が、富士吉田市で行われた。
写真=北原基行
文=伊藤千梅
日本最高峰のアマチュアリーグとして、1989年の設立以来33年にわたり日本の女子サッカーをけん引してきた、なでしこリーグ。昨季、3度目の挑戦で入替戦を勝ち抜き、創部4年目でなでしこリーグ2部に昇格を決めたのが「FCふじざくら山梨」だ。
山梨県初のなでしこリーグクラブとなったFCふじざくら山梨は、「社会でも一流、競技でも一流である」のプレイングワーカーをコンセプトに掲げている。競技面の結果だけでなく、引退後のネクストキャリアにおいて、主体性を持った人生を歩めるよう、外部講師によるキャリア研修や選手主導のプロジェクト、そして普段の仕事を全力で行う。ピッチ内外の活動から女子サッカー界の変革を目指すチームだ。設立初年度よりこのコンセプトを大事にし、年々ピッチ内外での活動の幅を拡げる「FCふじざくら山梨」が、なでしこ元年と掲げる2023シーズンに向けて、記者会見を開いた。
新入団記者会見には、県内外から10社を超えるメディアが来場し、地域における注目度の高さを感じる。まずは、今季から新たに監督を務める渡辺海監督が登壇した。渡辺監督は、クラブらしさを表現するうえで、昨季に引き続き「走る」という部分を大事にしていくと話す。「チーム全員が守備に貢献する形が、昨シーズンの失点数の少なさにも紐づいていた。活動量のあるフットボールにさらに磨きをかけて、絶え間ない攻撃と、局面で守り抜く姿を見せたい」と意気込みを示した。
また、目標としてはなでしこリーグ1部への昇格も視野に入れながら、「感動が駆け抜けるフットボール」を目指していきたいという。「結果にとらわれすぎず、まずは自分たちが、目の前のお客さんの感動に寄り添うこと。その先に、自分たちが求めている結果というものがあると思っている」と語った。
なでしこリーグ元年となる今季は、20名の選手がチームに所属。そのうち新加入選手は、WEリーグから1名(MF、DF小鍜治旭)なでしこリーグから4名(MF菅百花、DF須田胡桃、FW永木真理子、MF徳田優香)、大学から3名(MF田尻沙妃、DF加村ななみ、GK清村珠幸)と、過去最多である8名が加入した。
昨シーズンのチームの課題は、得点力不足。渡辺監督はチームに求めるものとして、ゴールに向かう姿勢がポイントになると明かす。また、新加入選手たちには「経験の少ないチームであることから、各々がやってきたバックボーンをしっかりと表現し、新しい風を巻き起こしてほしい」と期待を寄せた。
選手たちもそれぞれ、入団の理由や意気込みを語った。大和シルフィードから加入した菅百花は、なでしこリーグ通算出場記録が94試合。経験豊富なベテランは「チームが苦しい時、しんどい時の一歩を背中で見せられるような存在になりたい」と副キャプテンとしてチームを引っ張る意欲を示した。また、同チームから移籍した須田胡桃は、体をはった泥臭いプレーが持ち味。まずは目の前の試合に勝つことを考えながら「チームのピンチを救えるように頑張りたい」と意気込んだ。
山梨大学出身で、スペランツァ大阪から加入の永木真理子は、県リーグからなでしこリーグ1部までの各カテゴリーで、昇格を経験。「これからなでしこリーグに挑むチームの力に少しでもなれば」と自らの経験をチームに還元していく姿勢をみせた。ディアヴォロッソ広島から加入した徳田優香の入団の決め手は、昨シーズン帝京平成大学から入団した中村の「サッカーでも人間としても成長したいなら、このチームを選ぶべきだよ」という言葉だったそうだ。チームのためにも、個人の成長のためにも努力をしていくという。
AC長野パルセイロから加入した小鍜治旭は、チーム最年少の20歳。レベルが高くなるにつれ競技を心から楽しめない時期もあったというが、このチームは相手のことを思い合う気持ちがあり「初日からサッカーが楽しいと感じられた」と明かした。今季の目標は「3得点5アシスト」と、チームを勝たせる選手を目指す。また、仙台大学から加入した、加村ななみは「FCふじざくら山梨の大谷翔平」になると宣言。高校、大学などで、さまざまなポジションを経験してきたことから、多様なポジションで通用する選手になっていきたいと語った。
クラブコンセプトに興味をもったとコメントしたのは、武庫川女子大学から加入した田尻沙妃。選手として活躍できる年数は決して長くないと考えている中で「このクラブで選手としても、社会人としても、人としても成長していきたい」と、競技以外の活動にも精力的に取り組む姿勢を示した。筑波大学から加入の清村珠幸は、大学時代から個人のSNSで積極的に発信を行う。チームが目指すところに共感したという清村は「自分を変えずして歴史を変えることはできない」と強調し、なでしこリーグ一部昇格に向けて、全身全霊で闘うと誓った。
意欲溢れる8名を新たに迎え入れ、初のなでしこリーグに参戦するFCふじざくら山梨。全員がハードワークをする姿で、チーム、そして女子サッカーに関わる全ての人の心を動かすサッカーを目指す。
将来のWEリーグ入りを果たすと公言するFCふじざくら山梨のなでしこリーグ初年度。なでしこリーグ入りを果たし、どんな変革を女子サッカー界に巻き起こすのか。ホーム戦開幕は4月9日(日)、富士山の銘水スタジアム(富士北麓公園陸上競技場)で行われる。