日本代表MF鈴木唯人 [写真]=兼子愼一郎
9月24日のウルグアイ代表戦を3−1、28日のベネズエラ代表戦を2−1で連勝。ここからはキリンカップサッカー2026という大会形式で、初戦のエクアドル代表戦に勝たなければ、ニュージーランド代表との決勝に進めない。
ホームでの優勝にこだわる日本代表の森保一監督は、現有戦力のベストに近い陣容で挑んだ。攻撃陣は初招集の谷村海那が最前線に陣取り、シャドーには久保建英と鈴木唯人というフレッシュなトリオ。特に長年、南野拓実が担い続けてきた左シャドーに入った新背番号8を着ける鈴木には、今回こそ“確固たる違い”を見せてもらう必要があった。
「レギュラーを取るため、どれだけ今まで主力と言われる選手たちと融合できるかが一番キーになるのかなと。個人的に結果は後からついてくると思っているので、そこまで求めていないですけど、周りとどれだけいいコミュニケーションを取れているのかが、今後に向けて大事だと思っています」
前日練習後にこう話した鈴木にとって、右に久保、左ウイングバックに中村敬斗、ボランチに田中碧と佐野海舟という、ワールドカップメンバーが取り巻くのは悪くない環境。彼らと連動しながら、ブンデスリーガ開幕から4戦4発とブレイクしているフライブルクで見せているようなゴールに鋭く迫っていくパフォーマンスを発揮してくれればベストだった。
エクアドルは日本と同じくワールドカップでベスト32の強国。球際の激しさ、一人ひとりのボール扱いの技術は非常に高かった。ピッチ状態が悪い中でもボールを失わないため、序盤の日本はなかなか主導権を握れない。そういう中でも鈴木は久保と臨機応変に立ち位置を変えながら起点を作り、チャンスを伺っていった。最初の見せ場は前半25分、田中碧の縦パスが谷村に入り、その落としに反応。ペナルティエリア外側からフィニッシュに持ち込んだが、惜しくも枠を外してしまった。37分にも、中盤に下がった久保からボールを受け、中央をドリブルで一気に持ち運んでチャンスを作る。所属するフライブルクではこういったプレーが多いが、代表ではまだ回数が少ない。「自分の良さをどう出すか」という命題と彼は真剣に向き合いつつ、自分なりに工夫しているのだろう。
後半頭に上田綺世が入ってからは、より高い位置でボールを受ける意識が高まっていく。それが一つ結実したのが、後半20分の決定機だ。左サイドを中村敬斗と伊藤洋輝が崩し、伊藤のクロスを上田が落とし、鈴木が右足を一閃。これはネットを揺らしたかと思われたが、GK正面だった。この日の日本はシュート6本と決定機自体が少なかったが、うち2本を鈴木が放った。このいずれかでも決められていたら、レギュラー獲りの道は大きく前進していたはず。後半23分に下がった本人は少し不完全燃焼感を覚えた様子だが、“ブレイク前夜”という予感も漂わせてくれた。
「久保選手と距離感近くやろうということは考えていましたし、左の敬斗くんからは『あんまり行き過ぎないでくれ』とも言われていたので、もうちょっとやっていけば、もっと良くなるかなと思いました。代表の左シャドーには素晴らしい選手が集まっているのが大前提。人それぞれに良さは違ったところがあるので、他の選手から盗むところは盗みますけど、僕自身は僕自身。全然違った選手だと思っていますし『特別、他の選手がこうだから自分もこうしないといけない』とは全く思っていない。ドイツで充実しているんで、自信を持って積み重ねていければ、何の問題もないと思います」と新背番号8は模索の中にも前進への手応えを得た様子だ。
2024年6月のミャンマー代表戦で初キャップを飾ってから約2年4か月。鈴木の仕事ぶりはこれまでの代表活動の中で一番良かった印象もある。本人は「もうちょい」を繰り返していたし、0−0のPK勝ちという結果にダイレクトに関与したわけではないが、周囲も存在感の高まりを認めている。その筆頭が鎌田大地である。
「唯人は今季フライブルクであれだけ活躍していて、かなり好調。ポテンシャルもあるし、クオリティは本当に間違いない。でも、代表ではフォーメーションが違ったりしているので、改善できるところはまだまだある。試合数を重ねていけば、もっともっと良くなるんじゃないかなと思います」
シャドー、ボランチ、アンカーをマルチでこなした30歳のベテランも、かつては鈴木のように代表適応に苦しんだ。2019年に招集され始めた頃は1トップで起用されたこともあった。それだけチームでの活躍を代表に持ち込むのは難しいことなのだ。
「僕自身もフランクフルトで優勝しても代表に選ばれなかったりした。代表は別だと思ってやるべきですね。日本のファンから認められるには、代表で活躍するしかない。今、彼はドイツの中で確実にトップタレントの一人で、ドイツ人みんなが知っている存在なので、まあ時間の問題かなと思います」
鎌田からここまでの賛辞を受けた以上、次こそゴールやアシストという結果で勝利に貢献したい。本人の感触が「もうちょい」から「しっくり来ている」に変化すれば、その時点で主力組の地位を確立できる。本当にあと一歩のところまで来ているのは事実だ。だからこそ、5日のニュージーランド戦、そして11月のシンガポール遠征を大事にしてほしい。新8番の本領発揮はもうすぐだ。
取材・文=元川悦子
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