福岡DF安藤智哉 [写真]=J.LEAGUE
2026年FIFAワールドカップで躍進を目論む日本代表にとって、9月のアメリカ遠征は本番前の貴重なシミュレーションの場だ。1日からオークランドで始動し、まず6日に決勝トーナメント常連国のメキシコ代表と対戦。そこから東のコロンバスへ移動し、9日にコン大のホスト国の一つアメリカ代表に挑むことになっている。
メンバーの大半が欧州でプレーする日本代表は欧州内の移動や環境には慣れているが、広大なアメリカは未知の世界。そこで結果を残すというのは、想像以上に高いハードルと言っていいだろう。しかも、今回は主力級にケガ人が相次いでいる。特にDF陣は冨安健洋、伊藤洋輝が長期離脱中で、町田浩樹も左ひざ前十字靭帯断裂の重症に見舞われた。アヤックス移籍後の初戦だった17日のゴーアヘッド戦で途中交代した板倉滉は何とか復帰を果たしたものの、やはり手薄感は否めない。ゆえに、森保一監督も7月のE-1選手権で抜擢した国内組の荒木隼人と安藤智哉の招集に踏み切ったのである。
安藤は今季J1リーグ初参戦のDFだ。E-1選手権では空中戦の強さとパワーを発揮して、大きな存在感を示したものの、当時J3のFC今治、J2の大分トリニータという過去のキャリアを見ても、国際経験の不足は否めない。「アメリカやメキシコのようなレベルの相手との対戦はもちろん初めて。両国にはどのポジションにも個の能力の高い選手がいるので、ソロ(個人)で負けないというところが第一。あとは自分の持ち味を出しながらアピールしていくことが大事かなと思います」と本人も未知なる敵に果敢に挑んでいく構えだ。
その大舞台に向かうべく、渡米前のJ1で弾みをつけておきたかったところ。8月31日に対峙した柏レイソルは優勝争いを演じているチームで、ともに代表参戦する細谷真大もいる。腕試しには格好の相手だったはずだ。しかしながら、この日の安藤は思わぬ苦境に直面してしまう。まずは前半18分、小泉佳穂の突破を止めようとした際に、PKを献上してしまったのだ。これは不運にも見えたが、判定は覆らない。キッカー・細谷のシュートをGK小畑裕馬が止めて九死に一生を得たが、日本代表DFとしてはより緻密な対応が求められた。
試合はその後、1−1で後半へ突入したが、27分に安藤はこの試合2度目のPK献上という手痛いプレーを犯してしまう。瀬川祐輔のヒールパスが巧みだったこともあるが、一目散に抜け出してきた細谷に対して反応が一歩遅れたのは事実。これを瀬川に決められ、1−2の苦杯を喫する結果になったのだから、悔しさはひとしおだったに違いない。
「(PK)2本を与えていることは事実ですし、代表に行く前に課題が見えた。自分の甘さ、隙があるなと感じました。2本目のシーンはまだ映像を見ていないので分からないですけど、(細谷に)遅れて行っていましたし、あんなギリギリの対応はしなくても良かったのかなと。ポジショニングだったり、予測というところがまだまだ足りないと感じます。上位を走っているレイソル相手にできなかったことが多かったのも確か。またここから這い上がっていきたいと思います」
神妙な面持ちでこう語った安藤。今回の9月シリーズは移動を伴う中2日の強行日程。同じメンバーが出ずっぱりになることはないと考えられるため、安藤もどちらかの試合で出番があるだろう。約1週間後の大一番を前に、自身の課題や足りない部分を今一度、直視する機会が得られたのはむしろポジティブなこと。そう捉えて、世界基準を貪欲に追い求めていくしかないのだ。本人も頭を切り替えていくという。
「本当に大事なのはこの後。(柏戦で)起こってしまったことはしょうがないですし、ここから自分に何ができるかというのが試されていると思います。自分のストロングは高さ。最近はチームで3枚の左やってますけど、前の厚みを出すことはE-1から帰った後により意識してます。そういう部分も含め、まずは守備のところで持ち味を出せるように頑張ります」と191センチの“成り上がりDF”は闘志を燃やしていた。
板倉、瀬古歩夢、渡辺剛、関根大輝といった欧州組とは全く面識がないというが、自分から彼らにぶつかって行き、対応力や駆け引き、海外スタンダードを短期間で吸収することが肝要だ。爆発的な成長曲線を描いてきた26歳の遅咲きDFは、そういったアグレッシブさを出していくしか、生き残りへの道はない。ここで開き直ってポテンシャルを遺憾なく発揮し、大ブレイクする安藤の姿をぜひとも見せてほしいものである。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子

