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「代表へ行ったら最初から自分のプレーはできない」 昌子源の“金言”、日本代表初招集の望月ヘンリー海輝はどう生かす?

2024.09.02

日本代表初招集となった望月 [写真]=兼子愼一郎

 9月5日の中国戦からFIFAワールドカップ26アジア最終予選の戦いがスタートする日本代表。森保一監督が選んだ27人には遠藤航、板倉滉ら手堅いメンバーが並んだが、今季の明治安田J1リーグを席巻しているFC町田ゼルビアの右サイドバック、望月ヘンリー海輝のリスト入りは驚かされた。「自分も言われた時は驚きという部分もあった」と本人も神妙な面持ちで言う。

「重圧の掛かる試合には平常心でプレーできないメンタルの弱さもありますし、まだプレッシャーを力に変えられるような選手ではない」と黒田剛監督も課題を指摘していたが、そのナイーブさをどう克服していくのか。それが192センチの大型右サイドバックに託された重要命題と言っていいだろう。

 8月31日の浦和レッズ戦でも、そのウイークが微妙に出た。試合が進むにつれて、高い位置を取っていいクロスを入れ、藤尾翔太の決定機を演出するようなシーンも作ったが、全体に固さが見て取れたのも確かだ。

「個人的に入りがあまり良くなかった。なるべく試合に集中しようというのは常に考えていたんですけど、ちょっと難しかった部分もあったのかなと思います。(中山)雄太君からのダイレクトのボールを受けてクロスだったり、自分の強みも少しは出せた部分はありましたけど、外から見ると100%集中していないような印象や立ち振る舞いがあったのかな…。そこは改善しないといけないと思います」

 前半45分のみで退くことになった22歳の若武者は不完全燃焼感を色濃く押し出した。チームも勝利を逃してしまい、3カ月ぶりに首位から陥落。危機感を強めたことだろう。

 それでも、彼には圧倒的なポテンシャルがあるのは紛れもない事実。ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ望月の身体能力は常人の領域をはるかに超えている。浦和戦の45分間でも縦への推進力や競り合いの強さ、リスタート時のヘディングの迫力などを見せつけたが、それが日本の力になると森保監督も考えたから、あえて抜擢したに違いない。

「僕のスタイルに近いと言えば、酒井宏樹選手です。高さもあって、フィジカル的にも優れて、対人能力も高いという部分で、憧れていました」と本人も言うように、”ポスト・酒井宏樹”としての期待値は非常に高い。

 振り返ってみれば、2012年に初めて代表入りした頃の酒井宏樹も決してうまいタイプではなかった。内田篤人という絶対的存在に挑みつつ、ドイツやフランスで修羅場をくぐりながら、時間をかけて自分のスタイルを確立させていった。

 今の望月も菅原由勢という1つ上のプレミアリーガーを追いかける立場にいるが、菅原とは明らかに異なる魅力がある。そこに自信を持ちつつ、思い切ってピッチ上で表現すればいい。若い分、トライ&エラーがあるのは当然だ。

 実際、最終予選になれば、パワープレーで1点がほしい状況というのは必ず起きる。そういう局面で望月の高さや強さを使えれば、チームにとって新たなオプションも生まれる。逆に相手がパワープレーで攻め込んできた時にも跳ね返すことも可能だ。

 そうやって少しずつ存在感をアピールしていくことができれば、代表定着も見えてくるのではないか。

「代表へ行ったら最初は自分のプレーなんてできないですよね。自分も(2014年に)初めて呼ばれた時には、(本田)圭佑君に『もっと速いパスをよこせ』と言われたし(苦笑)。なんやかんやありながらも、僕も代表に7年入っていたので、そう考えるとちょっと強くなったなと思う。ヘンリーも打たれて、打たれて、強くなることが大事ですよ」

 町田でともに最終ラインを形成する昌子源も強調していたが、周囲の”ダメ出し”を糧にしていくことが、先々につながるのである。

 望月の場合、幸いにして同じチームの中山、谷晃生がいるし、三菱養和で過ごした中学・高校時代の1つ先輩の中村敬斗もいて、代表に溶け込みやすい環境ではある。長友佑都のようなメンタルモンスターの大先輩もいるから、どうすれば成長できるかを自然と学べるはずだ。

「最終予選は絶対に負けられない戦い。なかなか難しいですけど、何かしら貢献できるように頑張っていきたい。町田でやってきた守備の徹底だったり、自分のフィジカルのスピードだったりをよりアピールして、生かしていけたらと思います」

 毅然とこう語った望月。中村敬斗がゴールという結果を出し続けて一気に這い上がったように、彼自身も凄まじいフィジカル能力で森保監督やチームメイトを驚かせるしかない。今の望月には失うものは何もない。普段のいい人キャラはいったん横に置いて、2日の初日から遠慮することなく貪欲にぶつかっていってほしい。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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