W杯ではピッチに立つことができなかった町野 [写真]=Getty Images
3月に発足する第2次森保ジャパンに元日本代表の名波浩、前田遼一両コーチの加入が正式決定するなど、2026年のFIFAワールドカップ北中米大会に向けた陣容が固まりつつある。
選手も新たなサバイバルを視野に入れ、自己研鑽を図らなければならない。カタールW杯メンバーの数少ない国内組である湘南ベルマーレFW町野修斗は目の色を変えている1人。湘南に残留した新シーズンは「チームの5位以内」と「J1得点王」という2つの目標を達成すべく、高い意識を前面に押し出していく覚悟だ。
「自分がいろいろな形からゴールを取れることは分かっている。あとは質を上げていくだけだと思います」と目下、鹿児島県指宿市でキャンプ中の本人は目をギラつかせた。
昨季のJ1で13ゴールをマークし、日本代表としてもEAFF E-1選手権で結果を残した町野はカタールW杯に追加招集され、チームに帯同した。が、ふたを開けてみると出番なし。前田大然や上田綺世ら同世代のFW陣が強豪相手に真っ向からぶつかっている姿をベンチから見て、かつてないほどの悔しさと焦燥感を覚えたという。
「W杯に行って、対人も相当すごかったし、スピード感も全然違った。攻守の切り替えも縦の速さもありましたし、隙があればどんどんゴールに迫っていくスピード感というのは、やっぱりJリーグとは全く違いましたね」と彼自身も世界基準を痛感させられた。
それを日常の戦いの場に落とし込まなければいけない。そうしなければ、ヨーロッパでしのぎを削っている面々には勝てないからだ。
3年半後のW杯でエースの座を射止めようと思うなら、Jリーグで圧倒的な存在感を示す必要があるという事実を町野は誰よりもよく分かっている。だからこそ、今季に向けて鼻息が荒いのだ。
「Jリーグでは簡単にボールを失ってはいけないと強く思っています。国内でやる時はポストプレーで失う回数がゼロに近いくらいになりたい。以前はペナルティエリアで多少止まってしまうシーンがあったので、動き出しだったり、入っていくスピードであったりはもっと改善できると思います。ただ、スピードと言っても、単なる足の速さだけではなくて、判断のスピードや質で違いを見せないといけない。そこは特に意識して戦っていきたいと思っています」と自身のやるべきことを明確に見据えている。
そうやって町野は「前田や上田に、追いつけ追い越せ」と闘争心を燃やしているが、目先のJ1の舞台にもライバルはいる。横浜FCをJ1復帰に導いた昨季J2得点王の小川航基、6年ぶりに古巣の鹿島アントラーズに復帰した垣田裕暉などはその筆頭だろう。
小川に関しては、2019年E-1選手権ですでにA代表デビューしており、香港戦でハットトリックという実績を持つ。垣田はA代表経験こそないものの、長身で走れてアグレッシブにゴールに向かうというストロングが町野に通じる。彼らも虎視眈々と森保ジャパン入りを狙っていると見られるだけに、カタールW杯メンバーの点取屋もウカウカしてはいられないのだ。
「今年は代表に1年通して選ばれたい。結果で証明します」
年男の町野は、改めてこう宣言した。
その言葉通り、J1得点王のタイトルを手中にできれば、近未来の海外移籍への道も開けてくるだろう。
同じ湘南でプロの土台を築いた遠藤航が「湘南には申し訳ないけど、早く海外へ行けとは言ってます(苦笑)。町野自身、昨年9月のアメリカ戦に出た時、海外選手の当たりの強さに差を感じたと思うから」と話していたが、より高い環境に赴きたいという野望は本人の中にももちろんあるはずだ。
遠藤自身も2018年夏にシント・トロイデンへ赴いた時は25歳。そこから一気にブンデスリーガに上り詰め、カタールW杯で高評価を受けるまでになった。そんな先輩の系譜を継ぐことができれば、まさに理想的。その布石を打つ意味でも、2023年J1での一挙手一投足が重要になってくると言っていい。
今季の湘南には小野瀬康介、山下敬大ら新戦力が加入。前線の構成も多少なりとも変化する。昨季は瀬川祐輔(川崎フロンターレへ移籍)といいコンビネーションを見せていた町野だが、それ以上の連携を他のアタッカーと構築していかなければいけない。自分がゴールを量産できる形を作って行けるように、彼にはより積極的にアクションを起こすべきだ。
代表で長友佑都というコミュニケーション・モンスターから学んだことを大いに生かし、湘南の背番号18にはピッチ内外で影響力のあるプレーヤーへと飛躍を遂げてほしいものである。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子