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「人生最悪の日」からどう這い上がる?不完全燃焼の初W杯、南野拓実に突きつけられた現実

2022.12.08

背番号10を背負った南野拓実 [写真]=Getty Images

 前田大然とイヴァン・ペリシッチのゴールで一進一退の状況が続いた5日のFIFAワールドカップカタール2022決勝トーナメント1回戦、日本vsクロアチア。森保一監督は後半から浅野拓磨、三笘薫、南野拓実といった攻撃カードを次々と投入したが、相手の老獪な守備組織に跳ね返され、決め手のないまま120分間が終了した。

 決着は2010年南アフリカW杯と同じPK戦へ。12年前は3番手の駒野友一が失敗し、苦杯を喫したが、今回は新しい景色が見られるはず。誰もがそう信じていた。

 そこで指揮官が採ったのは、挙手制のキッカー選定。2021年夏の東京五輪準々決勝ニュージーランド戦でもそのやり方で成功したため、今回も同じ方法を踏襲したという。

 5秒間の沈黙を経て、最初に手を挙げたのは、背番号10をつける男、南野だった。

「チームを救いたかった。PKには自信があったし、1番か5番を蹴りたかった」と彼はその瞬間の思いを吐露する。

 ただ、彼には2014年AFC U-19選手権準々決勝の北朝鮮戦でPKを外し、世界舞台を逃した苦い過去があった。見る側としてはそのシーンがよぎったが、本人は長い時間をかけて挫折経験を克服。絶対的自信を持って立候補したのだろう。日本中が大きな期待を寄せた。

 ところが、10番が右方向に蹴ったシュートはGKドミニク・リヴァコヴィッチの正面。彼は天を仰ぐ。ここで流れをつかめなかった日本は三笘、吉田麻也も失敗し、悲願の8強をつかみ損ねてしまったのである。

 一番手の南野はピッチに崩れ落ちて号泣。しばらくは微動だにできないままだった。

「本当に悔しいのと自分に対しての怒り。励ましてくれるチームメイトの言葉が痛いというか、申し訳ないなと。前を向くことができなかったですね。間違いなく自分が生きてきた中で最悪の日だった。難しいですね…」と南野は自分を責め続けた。

 19歳の時、2014年ブラジルW杯行きをあと一歩のところで逃し、23歳だった2018年ロシアW杯は代表定着が叶わなかった。だからこそ、強い思い入れを持って挑んだ初の大舞台だったが、実に残酷な幕切れを強いられたのだ。

 10代の頃から年代別代表のエースだった南野にとってW杯は「必ず出なければいけない大会」だった。3歳の時に見た98年フランスW杯でブラジルの若きエース、ロナウドに憧れたくらいだから、その思い入れの強さがよく分かる。

 ロシア大会の後に発足した森保ジャパンで最初から攻撃陣の主軸と位置づけられたことで、「チームを勝たせる存在にならなければいけない」という彼の自覚は日に日に強まっていった。

 2020年1月のリヴァプール移籍もその一環だったはずだ。コンスタントに活躍していたザルツブルクから世界最高峰クラブへ赴けば、試合に出られなくなり、代表から外れるリスクもあったが、森保監督の言葉に背中を押されたという。

「自分がリヴァプールで試合に出てない時期に森保さんが代表に呼んでくれている時期があったんです。『ビッグクラブに挑戦して出番を失って代表に呼ばれなくなるということになると、ビッグクラブに挑戦できない選手が出てくる。それは日本サッカー界にとっていいことじゃない』という話を聞いて、僕は森保さんにすごく感謝した。恩返ししたいと思いましたね」と南野はしみじみと語る。

 指揮官にしても、最高峰クラブでモハメド・サラー、サディオ・マネらとしのぎを削る選手へのリスペクトがあったのだろう。最終予選で彼を使い続けたのも、ハイレベルの国際経験を日本代表に還元してほしいと強く願っていたからだ。

 そんな森保監督に応えたいと、南野はW杯を半年後に控えた今夏、モナコに赴き、トップフォームを取り戻した状態で大舞台を迎えようとしていた。だが、ウィサム・ベン・イェデルやアレクサンドル・ゴロヴィンといった百戦錬磨のアタッカー陣が揃う新天地は想像以上に競争が厳しかった。欧州随一と言われる負荷の高い練習に適応するのも時間がかかり、彼は今季序盤に出遅れを余儀なくされてしまう。

 その傍らで同じトップ下やシャドーに入る鎌田大地が大活躍。最終的にポジションを奪われる形になった。

「大地が調子よかったし、誰も文句なしのパフォーマンスを出していたから、自分の中では納得していました」と南野は素直に認めたが、森保ジャパンで最多出場・最多得点の選手としては、不完全燃焼感が強くて当然のはず。そういった苦境もあって、クロアチア戦ではPKを決めて日本を救いたい一心だったのだろうが、全てが裏目に出てしまった。

 南野が今、やるべきなのは、どん底から這い上がること。サッカー人生は山あり谷あり。4年に1度しかないW杯にピークを持ってくるのは本当に至難の業だが、31歳で迎える2026年北中米W杯では最高の結果を手にできるようにクラブで一花咲かせるしかないのだ。

「絶対に4年後のW杯でリベンジしたいと思ってますし、レベルアップしてこの場に戻ってきたい。モナコもいいチームですけど、欧州CLで決勝トーナメントに残るレベルのチームにまたチャレンジできるように頑張っていきたいと思ってます」

 代表10番の先輩である香川真司も最初のブラジルW杯で大きな挫折を味わい、それを糧に努力を続け、2度目のロシアでゴールをゲット。日本の躍進に貢献した。南野も同じことができるに違いない。人生最悪の日から貪欲に泥臭く這い上がる彼の姿を見守りたい。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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