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前田大然、引退する“先輩”の言葉を胸に 鬼プレスと裏抜けでドイツ撃破の急先鋒に

2022.11.22

[写真]=Getty Images

 FIFAワールドカップカタール2022もついに開幕。日本代表も初戦となる23日のドイツ戦が目前となった。

 森保一監督は19日から続く連続非公開練習でドイツ戦対策を入念に落とし込んでいるが、最大のカギは高い位置からのハイプレスがハマるか否かだろう。

「ドイツの試合をたくさん見てきましたけど、中途半端にハイプレスに行くと、剥がすのがメチャメチャうまいので、行くべきところ、行かないところを明確にしないとやられてしまう」と長友佑都も指摘していたが、チームとして組織的かつ連動性の高い守備を見せない限り、ドイツを苦しめ、勝ち点を奪うことは至難の業だ。

 そのスイッチ役を担うと見られるのが、最前線に陣取る前田大然。9月のアメリカ戦でも“鬼プレス”と言われる彼のチェイシングが相手の脅威となり、日本は高い位置でボールを奪って得点チャンスを作ることができた。

 2016年から2年半の間、坊主頭の韋駄天を松本山雅FCで指導してきたJFAの反町康治技術委員長も「スピード系のタイプはなかなか連続してスピードを維持できない。一回走ったら歩く時間が長くなって、少しコントロールできたらまた行くという形になる。それが彼は連続して行ける。Jリーグでも測しているスプリント数でも驚異的な数字になる。彼の持っているポテンシャルなんです」と太鼓判を以前に押していたが、あのハードワークは真似しようとしても、そうそうできるものではない。ドイツのマヌエル・ノイアー、アントニオ・リュディガー、ニクラス・ズーレといった守備陣も驚くに違いない。

 とりわけ、ズーレは速さ対応に少し難があるといわれる。しかも序盤のエンジンのかかりが遅いという。ニコ・シュロッターベックも同様な傾向があると見る向きもあるだけに、そこを狙ってボールを奪いに行き、前田が鋭く背後に飛び出せば、瞬く間に先制点のチャンスが巡ってくる可能性も大なのだ。

 4年前のロシアW杯、初戦のコロンビア戦でも、日本が迫力を持ってゲームに入った途端、相手に退場者が出て、香川真司が先制PKをゲット。大会の流れをグッと引き寄せた。日本は今回も立ち上がりに勝負をかけるべきだ。

「ミーティングした時に意外とスペースがあると。カウンターの時に後ろの選手が上がってスペースもあった。そういったところは突けれたらいい。僕が出た時にはスイッチ役となってチームを連動させられたらいい。スピードでビビらせればと思っています」と本人も“ドイツ撃破の急先鋒”になるべく、不敵な笑みを浮かべた。

 前田がここへ来て大会のキーマンになれたのも、雑草魂でここまで泥臭く這い上がってきたことが大きい。

 一つのきっかけになったのが、プロ1年目に松本で出会った大先輩の田中隼磨だ。オシムジャパン時代に日の丸をつけ、2010年には名古屋グランパスのJ1制覇の原動力にもなったプロ意識の高い右SBは、新人時代の彼に期待を込めて、あえて厳しく接した。

「僕が1年目の時、すごくハユさんに怒られて、サッカーをやりたくないくらいになりました(苦笑)。2年目に水戸(ホーリーホック)へレンタルに行き、3年目に帰ってきたら怒られなくなった。すごく認めてもらったんだなと感じました。それこそ、あの人がいなかったら、ここまで来れていない。そういう人が自分にはたくさんいる。そういった人のために、この大きな舞台で活躍しているところを見せられたらいい」と前田はしみじみと語ったのだ。

 その言葉に呼応するかのように、田中隼磨は自身の現役ラストマッチとなった20日のJ3最終節、SC相模原戦で終盤にピッチへ。約2年ぶりの公式戦出場を果たし、90分の中山陸の決勝点の起点を作った。右足でまともに蹴れない状態だったため、左足で上げたクロスから値千金のゴールが生まれたというのは特筆に値する。

 短時間で大仕事をしてしまう40歳の大ベテランの様子を、遠いカタールにいる前田もしっかりとチェックしたはず。印象的なラストパフォーマンスに刺激を受け、「自分もやってやろう」と決意を新たにしたことだろう。

 彼が奮起し、身を粉にして戦い続けることは、日本代表はもちろんのこと、かつて所属したクラブや仲間たちのためになる。山梨学院大学附属高校(現:山梨学院高校)時代から多くの人々のサポートを受け、ここまで辿り着いた前田は心から感謝しながら、強豪に立ち向かっていくに違いない。

「僕は1人でこの舞台に立てたわけではなくて、多くの人に支えられてこの舞台に来たと思っている。そういう人の思いを背負って、僕はこのW杯だけではなく、そういう生活をしているので、その気持ちは常に持っています。自分のプレースタイルはアグレッシブにやることだと思うので。それがなくなったら、何ができるということは全然ないと思う。僕はみんなのために走って、ハードワークして、その中でゴールを取ってチームを勝たせられればいいと思います」

 献身性の先にあるのは、日本を勝利へと導くゴール、そして“アンパンマンパフォーマンス”だ。それを実現させるべく、爆発的スピードを誇る男は偉大な敵に勇敢に立ち向かっていく。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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