フットサル日本代表、8年ぶりアジアの頂点へあと一つ　途中出場GK黒本が値千金の活躍

　AFCフットサルアジアカップクウェート2022に出場しているフットサル日本代表が、6日の準決勝でフットサルウズベキスタン代表と対戦した。

　今大会で最も集中した試合の入りを見せた日本は、開始45秒で水谷颯真がファーストシュートを放つなど好調をうかがわせた。しかし、決定機を作りながらもクロスバーやポストに阻まれ、ゴールを割ることができない。拮抗した展開のなか、17分には先制を許し、第1ピリオドを0－1とウズベキスタンのリードで折り返した。

　1点ビハインドの日本は、第2ピリオドでも積極的に攻撃を仕掛ける。23分にセットプレーからオリベイラ・アルトゥールがシュートを突き刺し同点に追いつくと、30分には左CKを獲得し、石田健太郎とニアの上村充哉との連係から金澤空がゴール。この試合ではじめてリードを奪った。直後にはGKピレス・イゴールが負傷しピッチを去るという想定外のアクシデントに見舞われる。しかし、グループステージ第1戦以来の出場となったGK黒本ギレルメが、緊張を感じさせないプレーを見せる。8分近くを残しパワープレーを受けた日本だったが、何度か危ないシーンを作られながらもピッチに立つ全員が気迫のこもったプレーでゴールを守った。

同点ゴールを決めガッツポーズをするアルトゥール　[写真]=AFC

　残り30秒を切り、ゴールまで10メートル付近からウズベキスタンのチョリエフが放った強烈なシュートを黒本がはじく。こぼれたボールをカムロエフが頭で合わせた時、黒本はひざをついた体勢だった。万事休すと思われたが、素早い反応を見せてボールを左手ではじき出してピンチを救う。最後までリードを守り切った日本が2－1で勝利し、決勝へ進出。この試合のあとに行われた準決勝第2試合でイランがタイを下し、決勝の対戦カードは日本対イランに決まった。

　途中出場という難しい状況のなか、値千金の活躍を見せた黒本は、この試合の「Player of The Match」に選出された。難しい状況での出場となったことについては「マジで？と思った」と笑いを誘いながらも「出るか出ないかは関係なく準備をしていた」と振り返る。イゴールの状態によっては決勝での先発もありえるが「もしもスタメンじゃなかったとしてもサポートをする。一番大事なのは優勝すること」と力強く語った。

　2014年の同大会でイランを破り優勝した経験のある内村俊太は、「（今大会の）初戦を落としたとき、チームの雰囲気はとても悪かった」と振り返る。2014年にもグループステージで一敗しているが「あの時とは違い、今回は悪い負け方だった」。今回の出場メンバーのなかで、当時を知る選手は内村と吉川智貴の2人のみ。初戦を終えた夜、吉川が内村の部屋を訪れ2人で話をしたという。その後、選手だけでミーティングも行った。初戦ではなかなか得点が生まれず、ミスが起こったときのベンチのリアクションもマイナスに作用した。

　しかし、短期決戦を乗り切る上で「ピッチの中で判断してプレーをする選手に対し、マイナスの言動は避けよう」という共通認識を持ち、2戦目以降はミスが起こってもポジティブな声が起こるようになったという。それに伴い結果もついてきた今、チームのまとまりを感じている。内村は今大会では思うように出場機会を得られていないが、屈強なピヴォを擁するイランに対し、フィクソとして相手を抑える準備は万端だ。

　今大会はDAZNの生中継で試合を見ることができる。普段、他競技を見ている層がフットサルを見る機会にもなっているが、木暮賢一郎監督は「なかなかこういった機会もないと思うので『フットサルの代表チームも素晴らしいんだ』ということが伝わるようなゲームをしたい。それによってこの大会が終わったあと、Fリーグや女子Fリーグ、地域リーグといった日本の各地で行われているリーグ戦が活発になることが僕の願いのひとつだ」と決勝への思いを語った。

　フットサル日本代表対vsフットサルイラン代表の決勝は、日本時間の9日午前2時から行われる。

取材・文＝しょうこ