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【インタビュー】堂安律~圧倒的に変わった“自信”~ 「未来を見据え過ぎず」に歩む成長の道

2022.06.03

5月末、インタビューに応じた堂安 [写真]=須田康暉

 開幕前には移籍も噂された中、PSVに復帰した2021-22シーズン。リーグ戦で8得点、公式戦では二桁得点を記録した堂安律

 チームとしてはカップ戦を制覇するなど、一定の結果は残したものの、自身としてはリーグ戦24試合の出場、うち先発は17試合と激しいポジション争いを繰り広げつつ過ごしたシーズンとなった。

 シーズンが終わり、日本代表に合流する直前の5月末、堂安に19-20シーズンにPSVでプレーした時からの変化や成長、1月以来となった日本代表についてなどを聞いた。

インタビュー=小松春生
取材協力=プーマ ジャパン株式会社
※取材日:2022年5月末

■圧倒的に“自信”が変わった

堂安律

[写真]=須田康暉

―――今シーズンを振り返って、いかがでしたか?

堂安 少し特殊なシーズンだったと思っています。すべての時間でプレーできたわけではないので、そこに満足はしていないですけど、出た試合では確実に仕事ができた感覚はあるので、少し不思議な感覚です。仕事ができた感覚があれば、普通は達成感があるんですけど、完全にやり切った達成感はなくて。昨シーズンはビーレフェルトで中心選手としてやらせてもらっていましたけど、今シーズンはクラブ規模も大きくなり、完全なスタメンとして90分間出たな、という実感はなかったので、もっとやれた感覚と仕事をした感覚が両方あるということです。

―――リーグ戦では8得点1アシストでした。個人の数字はいかがでしょう。

堂安 もっと点は取れました。足りないです。PSVで試合に出ているのであれば、15点は確実に取れると思うので、全然足りないです。もちろん出場時間もありますし、ポジション争いが激しく、、仕方ないところもありました。ただ、出たときにはしっかりと結果を出したので、そこは評価していいと思っています。

―――チームとしてはリーグ戦2位、カップ戦では優勝を果たしました。

堂安 何か特別なものをもっと勝ち取るべきチームだったと思います。クオリティはすごく高かったですし、チームも監督も人格者ばかりで。このチームなら、もっと何かを成し遂げられたなと今は感じています。

―――PSVに加入した19-20シーズンは、うまく過ごせたシーズンとは言えませんでした。ビーレフェルトでの1年を経て、戻ってきた今シーズンはどこが変わっていたと思いますか?

堂安 圧倒的に“自信”が変わりました。“自信”という言い方は単純に聞こえるかもしれないですけど、“マインドセット”がまったく違ったんです。サッカーという競技は、技術のゲームでも、体力のゲームでもなく、マインドセットのゲームだと最近思っていて、その部分がすごく成長したと思います。例えば、激しくポジションを争っていて、アピールしないと次の試合に出られない状況の中、緊張して硬くなるのか、ビビッて大人しいプレーになってしまうのか…。いろいろな状況がありますけど、そういう状況をすべて受け入れて、自分のプレーに集中できたシーズンだったので、だからこそ途中出場が多かったですけど、さっきも言ったような仕事ができた感覚につながったと思います。

―――フローニンゲンに加入してから、海外のプレーは5年が経ちました。その成長過程はいかがでしょう。

堂安 確実に成長していると、はっきりと言えます。成功している感覚はまったくないですけど、毎年、毎日、成長している感覚です。目標に近づいていないからダメという感覚ではなく、自分の成長を地に足付けて、足元を見つめて感じているので。これからも成長を求めてやらないといけないですし、必ず成功する日が来ると信じているので。すごくいい人生を歩んでいると思います。

―――「成長」と言うと、精神的に落ち着いてきてメンタル面で折り合いがつけられるようになったと捉えられることもありますが、ギラギラしたものを持ちつつ、冷静でもあると。

堂安 オランダではフローニンゲンという規模の小さいチーム、PSVという規模の大きいチーム、ドイツではビーレフェルトで残留争い、日本代表も経験して、チャンピオンズリーグの舞台はまだですけど、経験値は間違いなく増えていて、いろいろな角度でサッカーを経験できています。マインドセットもそうですが、受け止め方はうまくなったと思います。ただ、僕の性格的に丸くなることはないので、ギラギラして日々過ごせたらいいですね。

■未来を見据えすぎていない

堂安律

[写真]=須田康暉

―――4月からは『NEXT10 FOOTBALL LAB』というスクールを始めました。堂安選手にとって新しいチャレンジでもあります。

堂安 2年くらい前にアニキ(堂安憂)がケガもあって戦力外になったんですが、子どもが好きで、サッカーから離れたくないということもあり、スクールをしようというところから始まりました。他にもきっかけはあって、海外、特にブラジルなどの南米の選手は、地元にスクールを作り、子どもたちにタダで開放するんです。コーチなどは雇うので、赤字は毎月あるんですけど、子どもたちのために投資をする感覚があるとチームメイトから聞いて、すごく「かっこいい」と思ったんです。

 僕たちがサッカーをしている理由の根本はそこにあると思っていて。日々努力して「あの人のようになりたい、と思われる人間になりたい」と僕も感じてサッカーを始めたので。スクールの子どもたちには、先日初めて会いましたけど、改めて「憧れられるサッカー選手にならないと」と強く思いましたし、その環境を子どもたちに与えられる力があるのであれば、力があるうちにやりたいという気持ちから始めました。

―――子どもたちに姿勢を示す、刺激をもらうことにもつながりますね。

堂安 スクールの終わりに子どもたちへのメッセージを求められて、「夢を実現するために日々考えて行動してください」と伝えたんですけど、それは自分自身に言っていることと同じで。その日の夜にメッセージを思い起こして、自分に対しても言えるなと。自分の気持ち、考えをアウトプットすることで、頭の中を整理してやっていく性格なので、子どもたちと触れ合うことは自分にとってもいいことです。そのサイクルをここ4、5年はエネルギーに変えてやっています。

―――今後のキャリアはどう描いていますか?

堂安 昔は遠い目標を見がちだったんですけど、最近はそれがダメだと気付いて。サッカー選手に限らず、過去と未来を考えすぎて、今を生きられずに失敗することもあると思います。19、20歳の時、大きな夢を持っていたことはよかったですけど、そこに対して地に足をつけて、今をちゃんと生きることができていなかったところがありました。そこは今、すごく成長したところですね。しっかり今を見てやることが5年後につながるので、未来を見据えすぎていないです。1年1年、地に足をつけてしっかりやって、5年後に振り返った時にしっかりと成功した選手になっていることが理想なので、今は成長を求めて毎年やっています。

■僕の立場ははっきりしている

堂安律

[写真]=須田康暉

―――日本代表としては最終予選を終え、4連戦に向けて再び招集となりました。

堂安 楽しみですし、テストマッチの相手として強豪国と戦えることはこれ以上ないと思っているので、チームとして、個人としてすごくいい機会になると思っています。

―――W杯出場を決めた3月は招集外となるなど、もどかしい思いもあった最終予選でもあったと思います。

堂安 最終予選で僕は何もしていないので、すごく悔しい思いと、自分に対するもどかしさ、チームにまったく貢献できていない気持ちを持ちながら過ごしていたので、それを示せるチャンスが今あるので、そこにしっかりと集中してやりたいと思います。

―――本大会まで時間がない中でのサバイバルとなります。チームが第一でありつつ、個人としての結果についてはいかがでしょう。

堂安 まずはしっかり1試合1試合、目の前のことをしっかりとやって、もしチャンスがあれば全力でプレーするだけです。僕の立場ははっきりしているので、それに対して話すことはないと思っています。目の前にチャンスが来たら、しっかりと掴めるように準備するだけです。W杯は意識しますけど、意識し過ぎていいことはないので。W杯はゴールではなく、1日1日成長している姿を見せれば、W杯出場も近づくという考えなので、本大会まで半年という短い期間ですけど、未来を見過ぎず、しっかりやりたいです。

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