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勝利必須の中国戦へ…冨安健洋が示すべき『アーセナルの選手』としてのプライド

今夏アーセナルへ移籍した日本代表DF冨安健洋 [写真]=Getty Images

「(中国戦は)本当にチャレンジして、アグレッシブにプレーすることが必要ですし、シンプルに1試合と考えて、いつも通りプレーできればいいなと思います。あとは『アーセナルの選手』と見られるので、そのプライドを忘れずに、しっかりプレーしないといけないと思っています」

 2022年カタールワールドカップ(W杯)に向けた最終予選の一発目で、出鼻をくじかれた日本代表。最終予選初戦黒星というのは、5年前のUAE戦(埼玉)でも経験しているが、今回のオマーン戦(吹田)はシュート数や決定機の数を含めて完敗。ボローニャからアーセナルへの移籍手続きを優先するため欠場した冨安健洋も、これには「まさか」というのが、率直な感想だったという。

 自らが離れている間にチームが危機的状況に陥ったのだから、「巻き返さなければいけない」という思いはひと際、強い。しかも、今回はアーセナルの一員となって初の公式戦。冒頭のコメントの通り、プライドを賭けた戦いとなる。

「最終予選というのは取り返しのつかないゲームしかない」と38歳のベテラン守護神・川島永嗣も強調していたが、同じミスを繰り返さないためにも、守備陣がこの先、1点も与えないくらいの覚悟が必要だ。どの試合もクリーンシートで終われば、最低限の勝ち点1は確保できる。

 もちろん、オマーン戦で3ポイントを失った日本にとって中国戦は白星しかあり得ないが、そのためにも、とにかく失点ゼロという絶対条件をクリアすることが肝要だ。東京五輪から出ずっぱりの吉田麻也や無所属の長友佑都らベテラン勢をカバーすべく、冨安には獅子奮迅の働きが強く求められる。

 とりわけ、中国のエースFWエウケソン封じは至上命題と言っていい。2日のオーストラリア戦では不発に終わったものの、彼の決定力の高さは過去のAFCチャンピオンズリーグを見ればよくわかる。今季中国リーグでも2桁ゴールを記録するなど潜在能力はやはり高い。一瞬でもフリーにしたら、失点を覚悟しなければならない。それだけの鋭さと輝きを秘めていることを忘れてはいけない。

 さらに言うと、前回出番のなかったアラン・カルバーリョやアロイージオといった他のFW陣も要注意だ。初戦黒星で中国メディアから容赦ない批判にさらされている李鉄監督は、持てる駒をすべて使ってがむしゃらにゴールを奪いにくるだろう。パワープレーや強引な仕掛けも辞さないはず。VARもあるため、日本守備陣は細心の注意を払わなければ、PKを献上してしまう恐れもある。本当に気の抜けない戦いになるのは間違いないのだ。

「オマーン戦では攻守の切り替えのところで、いつもだったら奪われた後、何も考えずにみんなで即時奪還しに行くところを、1秒くらい足が止まっていた。その分、遅れてはがされて、カウンターを受けるといったシーンが結構多かったです。本当にいつもやっていることができていなかった」と冨安は修正点を明確にしている。その分析通り、後ろからしっかりと指示の声を出し、ボール奪取の精度を上げていけば、エウケソンら帰化選手たちが決定的チャンスを迎える回数も減るはずだ。

 そうやって相手を苛立たせ、焦らせる方向にもっていけば、日本は無失点勝利に大きく近づく。冨安には吉田と並ぶほどの存在感とリーダーシップを示してもらわなければ困るのだ。

 東京五輪直前に負傷し、復帰した途端、イエローカードの累積で肝心な準決勝・スペイン戦を欠場するなど、最近の冨安は日本代表のために十分な働きができたとは言い切れないところがある。吉田も「ここ4~5カ月、決していい状態ではないというのは、隣でやっていてよくわかっているつもり。本人もこのままではよくないとわかっていると思う」と発言した通り、パフォーマンス的にも万全ではなかった。

 そのことは、誰よりも彼自身が強く自覚しているに違いない。

「麻也さんの言う通りだと思っています。イタリアに行ってからの2年間で4~5回、筋肉系のケガをやっていますし、コンディション面もよくなかった。それに伴って100%でできず、満足いくパフォーマンスが全くできていなかった。ポジティブな方向に向かわせないといけません」

 つねに謙虚な冨安は神妙な面持ちでこうコメントしていた。ゆえに、今回の中国戦で完全復活への布石を打ちたいところ。これを機に調子を上げ、新天地・イングランドで新たなキャリアを描くことができれば、理想的なシナリオになるはずだ。

 今季のアーセナルは開幕から守備崩壊状態が続き、まさかの最下位に沈んでいる。ミケル・アルテタ監督の解任論も日増しに高まっているなか、冨安には救世主としての期待が寄せられる。そこで定位置をつかみ、チーム浮上の切り札となれれば、彼の評価は一気に上がるし、本人も大いなる自信をつかめる。そういった輝かしい道を切り開くためにも、1つ1つの試合で確実に結果を出していくしかない。

 2019年10月のパナマ戦(新潟)での初キャップから丸3年。年齢はまだ22歳と若いが、冨安には日本の若きリーダーに君臨してもらう必要がある。いつまでも吉田や長友ら30代の面々に引っ張ってもらう代表のままでは大いなる飛躍は望めない。冨安にはピッチ内外で停滞感を打ち破るだけの迫力と存在感を改めて強く期待したい。

文=元川悦子

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