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「夢のまた夢」からのメンバー入り…超万能型・旗手怜央が挑むACLと東京五輪

東京五輪の日本代表メンバーに選出された旗手怜央 [写真]=Getty Images

 コロナ禍で日程が二転三転した2021年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が、6月下旬からスタートした。昨季のJ1リーグ&天皇杯王者・川崎フロンターレは26日(日本時間27日未明)に、今季Kリーグ4位の大邱FCと対戦。初戦ならではの重圧に苦しみながらも、かつてJリーグで活躍したイ・グノらを擁する強敵相手に3-2で逆転勝利を収め、幸先のいいスタートを切った。

 東京五輪最終登録メンバー18人滑り込みを果たした旗手怜央も左インサイドハーフで先発フル出場。攻守両面で献身的なプレーを見せ、52分にはレアンドロ・ダミアンの2点目の起点となるパス出しを見せるなど、チームの勝利に貢献した。ウズベキスタンという未知なる環境でアジアの難敵と対峙することは大きな困難を伴うが、直後に控える五輪本番のいいレッスンと言っていい。

 1次ラウンドは11日まで続き、帰国後すぐに五輪代表に合流して臨戦体制に入るスケジュール。心身両面で過酷な状況を余儀なくされるが、高校サッカーの名門・静岡学園で厳しく鍛え上げられてきた彼にはそれほど大きな問題ではないはずだ。

「高校3年間で技術を磨いたり、理不尽な走りをしたり、いろんなことをやったからこそ、どんなことにも対応できるようになった。その経験をピッチで還元したいし、『あれは静学の選手だ』と思ってもらえるようなプレーをしたいです」と本人も語気を強めていた。同校の川口修監督から「UEFAチャンピオンズリーグ(CL)に出られるような選手になれ」とハッパをかけられた旗手は、順天堂大学時代もつねに高いレベルを意識して取り組んできたのだ。

 その成果もあって、大学在学中から森保一監督の目に留まり、東京五輪代表候補として国際大会に参戦する機会も得た。しかしながら、大学卒業直前に挑んだ2020年1月のAFC U-23選手権(タイ)は3戦未勝利のグループ最下位というまさかの惨敗。自身も仕事らしい仕事ができず、東京五輪が果てしなく遠いものに感じられたという。

「現状では自分が五輪に出られるとは思ってないし、夢のまた夢だと思っています。ただ、フロンターレで試合に出れば可能性はある。そこにチャレンジしてチャンスをつかみ取りたいと思っています」

 タイから戻った1月末、新人研修会に参加した旗手は自らに言い聞かせるように力を込めた。とはいえ、タレント揃いのチームでコンスタントに出番を得るのは難しい。しかも直後のコロナ禍でJリーグが長期中断。東京五輪1年延期という予期せぬ事態にも見舞われた。夏以降のリーグ再開後もすぐには定位置をつかめず、苦悩の日々を強いられる。同じ大卒ルーキーの三笘薫がイキイキとピッチを躍動し、ゴールを量産するのを横目で見つつ、焦りを覚えたこともあったという。

「薫とは比べられることが多かったけど、自分は薫にはなれないし、薫も僕にはなれない。でも『あいつみたいになりたい』とはすごく思いましたし、同期入団の選手があれだけ活躍しているんだから絶対に負けていられないと刺激をもらいました。彼の存在が自分を上へ上へと高めてくれた。本当にいい仲間を持ったなとありがたく感じています」

 そうやって何事もポジティブに捉える旗手を鬼木達監督も高く評価し、両サイドやインサイドハーフで起用していた。が、指揮官はJ1優勝決定後の12月5日の清水エスパルス戦から左サイドバック(SB)に抜擢するというサプライズに打って出る。ここまでアタッカーとして生きてきた本人にしてみれば驚きを禁じ得なかっただろう。それでも「試合に出られるなら何でもいい」と意欲的に取り組んだ結果、登里亨平の穴埋め役以上の存在感を発揮するようになったのだ。

 左SBというのは日本サッカー界で穴の1つと言われるポジション。日本代表を見ても、長友佑都が2008年から13年間もレギュラーに君臨し続けていて、後継者と言える人材が思うように育っていない。U-24世代を見ても、当初期待された杉岡大暉が鹿島移籍後に苦境に陥り、マルチ型の原輝綺も長期離脱。センターバック(CB)兼任の古賀太陽や中山雄太は攻撃の迫力という部分でどうしても見劣する印象が否めなかった。

 そんな中、攻撃面で違いを作れる旗手がすい星のように現れたのだから、森保監督も「使ってみたい」と思わないわけがない。3月、6月と2度のU-24日本代表活動を経て、確かなポテンシャルを見極めた指揮官はとうとう18人枠に抜擢。旗手は1年半前には想像もしなかった「DF登録」で五輪の大舞台に挑むことになったのだ。

「長友選手の成長曲線はわからないですけど、僕は僕。SBをやっていてもまた違ったSBだと思いますし、前のポジションをやってもほかの選手とは違う。見えるものも毎試合変わりますし、それに対して臨機応変に対応していかないといけない。今はその対応がうまくいっているんじゃないかと思います」と彼は左SBとしての進化に手応えをつかんでいる様子だ。

 とはいえ、大舞台で対峙するのは南アフリカ、メキシコ、フランスという強豪ばかり。これまで体感したことのない強度やフィジカルコンタクトの中で相手を完封しなければならない。それは「新人SB」にとって至難の業だ。直前のACLでインサイドハーフを主戦場としているのだから、感覚的な違いを埋めるのも容易ではない。それでも、劇的な成長を遂げている旗手なら乗り切れる可能性が十分にある。持てるすべての力をぶつけるしかない。

「間違いなく世界から注目されると思いますし、こういう時期にやるので沢山の人も気に掛けると思う。そこで結果を出せばさらに注目されるし、人生を変えるきっかけにもなる。出るだけじゃなくて、活躍できる大会にしたいと思います」

 その前にまずはACLでしっかりとした結果を残すことが先決だ。川崎はここから北京FC、ユナイテッドシティらと中2~3日で5試合を消化する。旗手にはさらなるタフさと逞しさを養い、一段階飛躍した状態で五輪本番を迎えてほしい。

文=元川悦子

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