2018.07.25

元イタリア代表GKが川島のパフォーマンスを分析「技術的なミスは2つのみ」

94W杯で3試合に出場したマルケジャーニ(左)とブッフォンのバックアッパーとして06年のW杯優勝に貢献したアメ―リア(右) [写真]=Getty Images
Giovanni Battista Olivero バーリ生まれ。愛称はG.B.(ジービー)。2000年『ガッゼッタ・デッロ・スポルト』に入社し、ミラン、ユヴェントスの番記者を歴任。2014年からは『ガッゼッタ』のインタビュー専門記者として多くの監督、選手の取材を行う。趣味はテニスでプロ級の腕前。

 称賛と非難、大手柄と大失敗、天国と地獄……。ゴールキーパーとは、その狭間を常にただよい続けるなんとも難儀な職業である。先日終了したロシア・ワールドカップにおいて、4試合フルタイムで日本代表のゴールマウスに立ち続けたエイジ・カワシマもまた、自身が担う役割の難儀さを改めて痛感したGKのひとりだったろう。

 今改めてそのプレーを見返してみると、確かにカワシマのポテンシャルを考慮にいれるなら、ベスト16に進出し、強国ベルギーを最後の最後まで苦しめた今回の日本代表を彼のプレーがもう少し助けられたのでは……そんな印象をどうしても持ってしまう。ただ、ミスを犯したのは彼だけではない。あのリオネル・メッシもクリスティアーノ・ロナウドも、それぞれ大事な場面でPKを外したではないか。フランスを20年ぶりの世界制覇に導いた名手ウーゴ・ロリスにしても、決勝戦という大舞台でクロアチアのマリオ・マンジュキッチに見事なアシスト(!?)を提供している。彼にとって幸運だったのは、あのミスが勝敗を分けるものではなかったことだ。もしあのミスで決勝戦の勝者と敗者が入れ替わっていたら……。ロリスは一生、あのミスの悪夢から逃れらなくなっていたに違いない。

文・インタビュー:ジョヴァンニ・バッティスタ・オリヴェーロ
翻訳:小川光生

「GKのミスというのは元来目立つもの」(マルケジャーニ)

[写真]=Getty Images

 カワシマのロシアでのプレーを分析するのに、私は2人の友人に助けを求めた。いずれも、世界で最も難儀な職業のひとつである代表GKの役を、「GK大国イタリア」という看板を背負いながら担ってきた人物たちである。一人目は、ルカ・マルケジャーニ。セリエAではラツィオ、キエーヴォなどでプレー。代表では、主にジャンルカ・パリュウカのサブとして、1992年から96年まで通算9試合に出場している。現在は、テレビ解説者として独特な視点からの分析が視聴者に好評だ。

 そのマルケジャーニが言う。
「今回のW杯においてカワシマが見せた技術的なミスは、2つのみだと思う。一つ目は、コロンビア戦、フアン・キンテーロのグランダーのFKをゴールにしてしまったこと。二つ目は、セネガル戦の中途半端なパンチングによる失点だ」

「まず、コロンビア戦のケースから解説していきたいと思う。シュートは壁の下を通っている。弾道が見えにくくなっていたことには同情するが、キンテーロがシュートを打った瞬間、そのことも予想しながらもう少し早く始動するべきだった。また、その後の動きももう少し迅速にできたのではないかと思う。確かに不運な面もあったが、代表GKならやはり止めてほしいゴールではあった」

「次にセネガル戦での失点だが、キャッチにいくかパンチングにいくか。それはGKそれぞれの考え方だ。ただ、いずれにしろカワシマはもう少しアグレッシブにボールに向かっていくべきだった。GKはエリアの中では守られている存在だ。たとえ、寄せてきていたサディオ・マネとの接触があったとしても、レフェリーは敵のファウルをとる可能性が高い。私なら、マネの動きが目に入っていたとしても、もっとずる賢くブロックを作るような形でキャッチ、あるいはパンチングにいく。それで衝突しても歩があるのはGKのほうだ」

「GKのミスというのは元来目立つものだが、今大会のカワシマには好セーブも何本もあった。セネガル戦の38分のセーブ、あるいはベルギー戦で再三見せた好守備。彼が防いだ失点は決して少なくなかった」

「もしあそこでスーパーセーブが出ていたら……」(アメ―リア)

[写真]=Getty Images


 もうひとりの論客、マルコ・アメーリアも「カワシマがロシアでおかした決定的なミスは2つだけ」と言う。クラブではリヴォルノ、ミランなどでプレー。アッズーリでは、2005年~09年まで活躍しキャップ数はマルケジャーニと同じ9。2006年ドイツW杯では、ジャンルイージ・ブッフォンの控えとしてイタリアの史上4度目の世界制覇をかげでサポートした。彼もマルケジャーニ同様、現在は解説者として活躍している。

 アメーリアが付け加える。
「ルカが挙げた2つに加えて、もう少し厳しく見るなら、決勝トーナメント1回戦のベルギー戦、敵の追撃弾となったゴールへの対応で、もう少し何かできたかなとは思う。もっとも、ヤン・フェルトンゲンのヘディングはゴールを狙って打たれたものではなかっただろう。とにかく中央に折り返し、誰かがそれを押し込んでくれたらいいという感じに見える。ただ、その時のエイジのポジションを見ると決して理想的なものではない。一概にどことは言い難いが、次のプレーを事前に読み、ポジションを変える。技術というより経験によって少しずつ培われていく能力だ。彼ほど国際経験の豊富なGKなら、あの場面でもう少しその能力を発揮してもらいたかった。もしあそこでスーパーセーブが出ていたら、ベルギーも精神的に追い込まれていっただろう。そういう意味では勝敗を分けたプレーのひとつだったとも言える」

「高さがなければ“特別な武器”を常に進化させていく必要がある」

[写真]=Getty Images


 世界の守護神の高身長化が進む中で、やはり日本のGKは高さでどうしても劣る部分がある。この“高さ不足”の側面について2人はどう考えているのだろうか。

 アメーリアの意見はこうだ。
「もちろん、高さがあるほうが助かるよ。あとは手足の長さも。腕を広げた時、ゴールを覆うイメージが強くなれば、シュートを打つ敵へのプレッシャーも大きくなる。あとは単純に、コーナーやFKなどのセットプレーの時は高さが大きな武器になる。もしそれがない場合は、俊敏さ、それからさっき言ったポジショニングセンスあるいは次のプレーを読む能力、そういった“特別な武器”を持ち、それらを常に進化させていく必要がある」

 マルケジャーニの意見はどうだろう。
「高さが役に立つこともある。ただ必ずしもそうだと言い切れないのは、例えば低いボールへの対応などハンディキャップとなる部分も備えているからだ。私はGKの理想というのは、バランスだと思う。もちろん、背が高く俊敏で足技に長けていたら、それに越したことはないわけだが……」

「イタリアに秘訣があるとすれば優秀なGKコーチがたくさんいるということ」

[写真]=Getty Images

 イタリアはGK大国。ブッフォンは代表引退を表明したが、マッティア・ペリンやジャンルイージ・ドンナルンマなど、脈々と受け継がれている伝統を継ぐものは今後も出続けていくだろう。日本がGK大国になるためには何が必要なのだろうか? 2人にはその点についてもたずねてみた。

 マルケジャーニ:「それについては、一朝一夕で解決できるものではない。時間と忍耐が必要。まずは指導者が育ってこないと。そして彼らから選手がみっちり子供のころから、日々進化していく守護神の技術を教え込まれていかないと。しばらくたって、成果が出てくる話だと思う。イタリアに秘訣があるとすれば、その部分。優秀なGKコーチがたくさんいるということ。あのブッフォンもパルマからユーヴェに移ってさらなる成長を果たした。そのかげにはGKコーチのクラウディオ・フィリッピの力があったことはいうまでもない。まずは、“よい導き手”を作り出すことだ。つまり、『近道はない』ということ」

 アメーリアもまた同様の意見を持っていた。
「イタリアには確かに多くの優秀なGKコーチがいる。ひとつ提案なんだが、日本のクラブは、彼らのうちの何人かを雇ってみたらどうだろう? あるいは、若いコーチをイタリアに派遣して勉強させてもいい。同時に優秀なGKは、レギュラーを失うリスクを恐れずに積極的に欧州の主要リーグ(例えばプレミアリーグ、セリエAなど)で自分の力を試してみることだろう。そして引退後は、そこで得た経験を後進に伝えていく。それを繰り返していくしかない」

「ぜひ4年後のカタール大会まで頑張ってほしい」

[写真]=Getty Images

 最後にマルケジャーニがおもしろい話をしてくれた。彼は、「カワシマは決して悲観することはない」と言うのだ。元ラツィオの守護神が語る。

 「今回のカワシマを見て、私は1978年アルゼンチン大会のディノ・ゾフのケースを思い出していた。あの大会、アッズーリは4位に終わるが、2次リーグの最後と3位決定戦での彼のプレーが非難のまとになった。特にオランダとの三位決定戦では、遠目からの2本のシュートにまったく触れることのできなかったゾフに厳しい声が集中した。もっとも今見ると、2本とも彼の責任ではまったくないシュートだけれどね(笑)。当時、ゾフは36歳。その大会を最後に代表から引退しようと考えていた。ところが、その不当な非難を受け、彼の闘争心は再び燃え上がったというんだよ。彼は代表でのプレーし続けることを決め、1982年スペイン大会、40歳でキャプテンとしてチームを引っ張り、イタリアを優勝へと導いたんだ。特に準決勝のブラジル戦でみせたスーパーセーブは今でもイタリアでは語り草になっている。エイジは今35歳だって? まだやれるよ。もし彼の中にまだ熱いものが残っているなら、私はぜひ4年後のカタール大会まで頑張ってほしいね。そう、屈辱を4年後の栄光につなげた偉大なGK、ディノ・ゾフのように……」

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