2018.06.28

【コラム】マネを封じた酒井宏樹、ポーランド戦で期待するのは「楽しかった」と振り返るプレー

酒井宏樹
マネを徹底的に封じた酒井宏樹(左)、気付けば右サイドバックが日本のストロングポイントになっていた [写真]=Getty Images
サッカー総合情報サイト

 セネガルのエースを封じる。それはスタンドから見ているよりもずっと、壮絶な戦いだったに違いない。だからこそ、試合を終えた酒井宏樹が充実した表情を浮かべ、「すごく楽しかった」と振り返った時、このサイドバックのたくましい成長を見た思いがした。この日の2失点を、酒井は「僕らの責任」と語った。しかし、“サディオ・マネを抑える”という彼個人のタスクに限れば、ほとんど完璧な仕事をしたと言っていい。

 セネガル戦を迎える日本代表にとって、マネは最も危険な、警戒すべき相手のはずだった。しかし、“世界最速”とさえ表現されるそのスピードを、エカテリンブルク・アレーナの観客はほとんど目にすることができなかった。相対する酒井が激しく体を当て、進入するコースをふさぎ、時にファウルすれすれのタックルをしかけてマネの自由を奪っていたからだ。粘り強く、ずる賢く、一瞬も隙を作らない。それは彼がマルセイユで培った、2年間の経験のすべてが凝縮されたようなパフォーマンスだった。

 マルセイユに移籍して数カ月はフランスリーグへの順応に手間取った。アフリカ系の俊足FWにドリブルで抜かれ、翻弄される日々に、ドイツで得た自信はすぐに壊された。試合前は「必ず映像をチェックするようになった」と言う。「対面する選手をリスペクトして、自分よりもポテンシャルが高いと思うようにした」。

 プレーに変化が表れ始めたのは、リュディ・ガルシア監督と出会ってからだ。自分よりも走力や瞬発力がはるかに高い選手と真っ向勝負したところで勝てるわけがない。ならば、一対一に持ち込む前に予測して優位なポジションを取り、前を向かせなければいい。「一対一」に対する考えを根本から変え、どうすれば抜かれる危険を減らせるか、という対処法を急速に身につけていった。

 予測と先読み。ガルシア監督の下で「守備の仕方」を学んだ酒井は、この2年間で“マルセイユの戦士”と呼ばれるまでに成長した。自信を取り戻したことで、明らかに顔つきも変わった。セネガル戦では、その成長のすべてをぶつけたいという思いが表れていたように感じる。試合後に酒井はこんなことを言っていた。

「セネガルとの対戦はマルセイユのサポーターも見てくれていると思う。2年間やってきたことがここで生かせたのであれば、それは幸せです」

 もちろん、マルセイユのサポーターは見てくれているだろう。そしてきっと、誇らしい気持ちを感じているだろう。それは日本のサポーターも、私たち取材陣も変わらない。

 マルセイユでも、日本代表でも、酒井は誰からも好かれる”愛されキャラ”だ。ファンだけでなく、取材陣に対しても笑顔を絶やさず、優しい物腰で接してくれる。取材陣の中に、酒井を苦手だという記者は一人もいないだろう。答えに困るような質問を投げられても嫌な顔一つせず、負けた試合の後でさえ、いつも“神対応”をしてくれる。ピッチで見せるたくましさとは違う、謙虚で明るい一面も彼の魅力であり、強さでもある。

 酒井の存在は、右サイドに安定感をもたらしているだけではなく、このチームの空気を確実にポジティブなものにしている。グループステージはあと1試合。ポーランド戦でも、酒井が「楽しかった」と振り返るようなプレーを見せてくれたら、と願わずにはいられない。

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