2018.06.09

4年ぶりの本職で守備奮闘もゴールに絡めず…本田圭佑のトップ下起用の是非は?

本田圭佑
スイス戦はトップ下で先発出場した本田圭佑 [写真]=Getty Images
日本代表から海外まで幅広くフォローするフリーライター。

「スイス戦(8日=ルガーノ)に限って言えば守備で試したいパターンがある。はめれたパターン、はめれない場合のプレス。大きく言えばその2つをしっかりポジションを確認しながらやりたいですね」

 2018 FIFAワールドカップ ロシアの初戦・コロンビア戦(サランスク)を11日後に控えた前哨戦で、2014年ブラジル・ワールドカップ以来となる4-2-3-1のトップ下で先発した本田圭佑(パチューカ)は大きなテーマを掲げていた。彼が言うように、守備にメドをつけることは本番で躍進するための絶対条件。慣れ親しんだ4バックに戻し、本大会レベルの強豪を封じられれば、日本としても大きく自信と手応えを得られる。それを果たすべく、彼らはピッチに立った。

 序盤はスイスが様子見で来ていたこともあり、日本のコンパクトな守りはある程度、機能した。最前線の大迫勇也(ケルン→ブレーメン)と本田はアグレッシブに前からプレスをかけに行き、サイドにボールを出された時は人数をかけてフタをする。ジェルダン・シャチリ(ストーク)とブリール・エンボロ(シャルケ)という速さと高度な技術を併せ持った相手に対しては2~3人がかりでマークに行き、危険を未然に防ぐ。こうした基本原則をチームとして徹底させていた。

 ただ、本田はその仕事に忙殺されるあまり、攻めの厚みを発揮できない。ボランチの長谷部誠(フランクフルト)も「ミスからいい形でボールを奪って相手の陣形が整っていない時にカウンターみたいな攻めも結構あったけど、どうしても迫力を出せない。手詰まり感を感じた」と指摘した通り、ペナルティエリア外でのパス回しはできても中には入って行けない。本田自身が危険なエリアに侵入するシーンもごくわずか。前半38分に大迫からボールを受けてフリーで打ったシュートも、勢いなくGKロマン・ビュルキ(ドルトムント)にキャッチされてしまった。周囲のメンバーもチームの状況も違うから比較のしようがない部分もあるが、ザックジャパン時代の背番号4と比べると輝きが失われていた印象だった。

本田圭佑

ゴールを狙うも見せ場は作れなかった [写真]=Getty Images

 1点をリードしたスイスが後半、プレスをかいくぐる策を講じてくると、日本の状況はより厳しくなった。本田自身に何度か巡ってくるリスタートのチャンスも相手の屈強なDF陣にはじき返された。背番号4にとって最も悔やまれたのは、60分に長友佑都(ガラタサライ)の横パスをフリーで受けたシーン。素早くシュートを打っていれば何かが起きたかもしれなかったが、コントロールに時間をかけすぎて相手に詰められ、シュートに持ち込めずに終わってしまう。その判断も4年ぶりのトップ下で感覚的なズレがあったのだろう。結局、75分間で交代。本人が重要視した守備は献身的姿勢こそ示したものの、肝心の攻撃で仕事らしい仕事は見せられなかった。加えてチームも痛いミスから2失点して完敗。これで欧州組を加えたベストメンバーで7戦未勝利となってしまった。

「(5月30日の)ガーナ戦(横浜)もこの試合も、チャンスをもらって2試合結果を出せてない。それはよくないことだし、危機感も感じています。サブには一応、僕のライバルでもある真司(香川=ドルトムント)が控えていて、結果を出さないとポジションを取られるという危機感を持たないと話にならない。そこはホントに反省しないといけない」と本田自身も敗戦の重責を強く感じていた様子だ。

 とはいえ、西野朗監督が試合後、「圭佑はかなり良かったんじゃないか。予想以上に動きも取れていたし、ディフェンスに入る意識、連動していこうとする意欲、守から攻に切り替わるところのつなぎ(もよかった)。全体的には(運動)量的にもあった」と高評価を与えたことから、本田の先発トップ下起用は今後も続くだろう。指揮官の発言を聞く限りでは、今大会を「本田と心中する」くらいの覚悟で挑もうとしているようにも映る。

 それだけ西野監督が本田を重要視する理由は大きく言って2つある。1つはチーム唯一のレフティという点。右寄りの位置からのFKや右CKは彼しか蹴る人がいない。この日は残念ながらほとんど得点機につながっていなかったが、ここから10日間で一番ゴールの確率を引き上げられるのがセットプレーだ。そういう意味でも、今のチームは本田を抜きに語れない部分があるのだ。

本田圭佑

本田圭佑はブラジルW杯初戦のコートジボワール戦で先制点を決めた [写真]=Getty Images

 もう1つは、2010年南アフリカ、2014年ブラジルの両ワールドカップのそれぞれ初戦でゴールを奪っている勝負強さだ。「コロンビア戦はもう紙一重の戦いになると思いますよ。その紙一重を引き付ける『何か』がまだ足りない。だから負けてるんですよ」と本田は言う。その「何か」を実際に引き寄せ、ワールドカップの大舞台で結果を残してきたのもこの男である。本人はそれを取り戻そうと今、躍起になっているのだ。

「ここからは(得点感覚)を研ぎ澄ませていきますよ。決めないといけないという認識を僕は持っているんで。チャンスが1本かもしれないけど、それを決められるかどうか」と本田は鬼気迫る表情で語っていた。その言葉通り、最も重要なコロンビア戦でゴールを叩き出してくれれば、スイス戦の一挙手一投足は何でもいい。現時点ではトップ下合格とは言い難いが、短期間で劇的に状況を改善できる底力が彼にはあるはずだ。

 同じポジションを争う香川も「チームとしても個人としても何か1つストロングなところを持ってワールドカップに行きたいし、それを見出したい」と目をぎらつかせていた。その香川の追い上げもいい刺激にして、2人が90分間を補完し合いながら戦えるような体制が作れれば、まさに理想的だ。

 いずれにしても、限られた10日間でゴール前の嗅覚を最大限引き上げること。そのための連携と連動を周囲と作ること。本田にはそこに全力を注いでほしいものである。

文=元川悦子

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