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【コラム】指揮官交代を乗り越えロシアへ…槙野智章が挑む最後の戦い

ロシアW杯の最終メンバー入りへ、槙野は度重なる監督交代を乗り越えコンスタントな活躍を求める [写真]=Getty Images

 4月とは思えない初夏の陽気となった21日の埼玉スタジアムで行われたJ1リーグ、浦和レッズ対コンサドーレ札幌。槙野智章はキックオフ直前、柏木陽介、興梠慎三とともに敵将かつ恩師のミハイロ・ペトロヴィッチ監督の下へ駆け寄り、愛情溢れる抱擁を受けた。

「2006年にプロ生活をスタートさせた時から長いこと監督であり、サッカーを離れれば父のような存在だった。苦しい時も声をかけてくれたし、今の僕がいるのもペトロヴィッチ監督あってこそ。だからこそ、素晴らしいプレー、素晴らしい結果、ゴールで恩返しできればと思っていました」と赤き軍団の背番号5は普段以上に強い決意を胸に秘め、ゲームに挑んだ。

 試合前の順位は10位と4位。札幌の方が上にいる状態だったが、日の丸経験者をズラりと揃える浦和が主導権を握る。ペトロヴィッチ監督時代の定位置、3バックの左に入った槙野は機を見て攻め上がり、虎視眈々と得点を狙う。65分に柏木の左CKに頭で合わせたシーンなどは、ネットを揺らしてもおかしくなかった。が、「最後のクオリティに問題があった。ラストパスやシュートの精度に少し欠けていた」と彼自身も認めるように、この日の浦和は13本ものシュートを放ちながら、スコアレスドロー。恩師に圧倒的実力差を見せることは叶わなかった。

 しかしながら、大槻毅暫定監督体制の浦和はリーグ戦3勝1分、ルヴァンカップ1勝1分と無敗で乗り切ることができた。短期間でチームを再建し、その役割を終えることになった強面指揮官に対し、槙野は最大級の賛辞を送った。

「大槻さんにあって、堀(孝史前監督)さんにないものは『話術』。ミーティングでも毎回かなりの名言を残していて、言葉で人を動かす力はホントに感じました。この3週間でチームや個人が何をしなければいけないのかを理解できた」と、Jリーガー屈指の喋りのセンスを誇る男が言うのだから、大槻監督の豊かな表現力は傑出したものがあるのだろう。

2人の新指揮官の下、求められるコンスタントな活躍

西野朗監督とオズワルド・オリヴェイラ監督。日本代表、クラブで新たに就任した監督の下、槙野は結果を求める [写真]=Getty Images

 トーク力という部分では、4月7日に電撃解任された日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ前監督もある意味抜きん出ていた。ミーティングや記者会見の長さは歴代の代表監督の中で紛れもなくトップだろう。2015年3月の就任時から継続的に呼ばれ続けた槙野は、ボスニア人指揮官から怒られ、罵声を浴びせられた回数が最も多い選手の1人。奇しくもこの日、再来日したハリル氏が羽田空港で涙ぐんだことを伝え聞くと、思わず複雑な表情を浮かべた。

「僕はハリルホジッチ監督にすごく怒られましたし、褒められた数はあんまりない。ただ、よくなるためにいろんな言葉を浴びせられ、映像を見せてもらったからここまで来ることができた。それは間違いなくハリルさんのおかげでもある。一緒にワールドカップへ行くって大きな目標を掲げていた方と行けなくなるのは寂しい気持ちですけど、こればっかりはね……」と3年間築いてきた強固な絆を白紙に戻さなければいけない辛さを改めて吐露した。

 昨年夏にペトロヴィッチ監督と離れ、今月に入ってから大槻監督、ハリルホジッチ監督という信頼を寄せた2人の指揮官とも離れることになった槙野。クラブと代表で同時期に監督交代に直面することは滅多にないが、そういう難しさを乗り越えていかなければ、選手としての責務は果たせない。浦和は25日の柏レイソル戦からオズワルド・オリヴェイラ監督が指揮を執ることになるし、代表も5月21日の直前合宿から西野朗監督体制で再始動する。どちらの監督からも存在価値を認められ、恒常的にピッチに立つこと。それが槙野にとって当面の重要テーマになってくるのは間違いない。

「オリヴェイラ監督が鹿島で指揮を執っていた時、韓国でオールスターがあって、僕はそこに呼んでもらったことがありますけど、ミーティングは非常に長くて、質も高かった印象があります。(2007~2009年の3連覇をともに果たした)興梠選手からも厳しい方というのは聞いている。そういうタイプはウチの選手一人ひとりのキャラクターを考えたら合ってるんじゃないかと思いますね。代表の方も西野監督になった中で、自分もその一員になるためにやらなくちゃいけないことはまだまだ沢山ある。残された時間でできるだけ厳しい環境を作ってレベルアップすること。それに尽きると思います」と槙野は自身のやるべきことを明確に見据えている。

 クラブでの好調維持、コンスタントな活躍がなければ、ロシアW杯の最終メンバー入り、代表レギュラー獲得はあり得ない。2010年南アフリカ、2014年ブラジルと2度ワールドカップを逃した30歳のDFにはその厳しさが誰よりもよく分かっている。ペトロヴィッチ監督から学んだプロフェッショナルとしての意識、大槻監督から学んだ言葉の表現力、そしてハリルホジッチ監督から学んだデュエルの重要性をしっかりと自分のものにして、世界と互角に戦えるような頼もしい存在に飛躍することを今一度、目指してほしいものだ。

文=元川悦子

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