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【コラム】デビュー戦ゴールで確かな一歩…中島翔哉が代表争いに生き残る術は?

A代表デビュー戦でゴールを決め、アピールに成功した中島翔哉 [写真]=Getty Images

 23日のマリ戦(リエージュ)は、2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選のレギュラーだった原口元気(デュッセルドルフ)が左FWで先発することが有力視されていた。しかし、このポジションに陣取ったのは、彼のクラブの同僚・宇佐美貴史だった。2月から3月にかけてドイツ・ブンデスリーガ2部で4試合連続ゴールを決めた勢いをヴァイッド・ハリルホジッチ監督に買われ、このタイミングで抜擢されたのだ。

 開始10分に浮き球のパスから久保裕也(ヘント)の決定機をお膳立てしたところから始まり、直後には自らもドリブルで持ち込んでシュートを放つなど、宇佐美の得点意欲の高さは如実に感じられた。だが、こうしたチャンスの大半が足元でのプレー。「監督は『とにかくまずは背後』という言い方をしていた。そういう意識づけを後半からより強くしてやりましたけど」と本人も戸惑いを吐露したように、思うように相手の裏を取れずに苦しんだ。前半終了間際にPKで1点をリードされたことで、宇佐美はより危機感を募らせたが、結局のところノーゴールでピッチを後にすることになってしまった。

 その宇佐美に代わって60分から登場し、左に陣取ったのが中島翔哉(ポルティモネンセ)。「中島は練習でかなりよかったので見てみたい」と前日会見で指揮官が公言するほど、今シーズン、ポルトガル1部で9ゴール7アシストという結果を残すアタッカーに大きな期待を寄せていた。

中島翔哉

宇佐美に代わってピッチに立ち、A代表デビューを果たした [写真]=Getty Images

「どんどん前に行って、ドリブルでもパスでも仕掛けろ」とハリルホジッチ監督から指示された彼は、攻撃姿勢を前面に押し出していく。相手の体力が落ち、スペースが空いてきたことも追い風となり、中島はタテ関係の長友佑都(ガラタサライ)と連携しながら高い位置を取り、チャンスメークを試みる。85分にはペナルティエリア外側から思い切ってシュートを打ちに行き、停滞感が漂っていたチームに活力を与えた。

 そして迎えた後半アディショナルタイム。中盤で三竿健斗(鹿島アントラーズ)からボールを受けた中島はDF3枚を華麗なドリブル技術でかわし、左に開いた小林悠(川崎フロンターレ)に展開。彼のクロスにファーサイドから本田圭佑(パチューカ)が飛び込んだが、DFにクリアされる。次の瞬間、こぼれ球を拾った三竿が再びクロスをゴール前へ。これに反応した中島はボールウォッチャーになった相手の背後を鋭く突いて、左足を一閃。ボスニア人指揮官が求めるプレーを体現すると同時に、値千金の同点弾を奪うことに成功したのだ。

中島翔哉

劇的な同点ゴールを決めた [写真]=Getty Images

「三竿がすごいいいパスをくれたと思いますし、もう触るだけだった。ああいう位置にいられないこともあるので、今日のゴールシーンはよかったと思います」と164センチの小柄なアタッカーは満面の笑みを浮かべた。

 2016年のリオデジャネイロ五輪・コロンビア戦(マナウス)での同点弾など、手倉森誠監督(現代表コーチ)体制で通算19得点を挙げた「代表の申し子」は、A代表デビュー戦でいきなりゴールという離れ業をやってのけた。それも、敗色濃厚だったロシアW杯予選敗退国との一戦を引き分けに持ち込み、本大会出場国のプライドを保ったのだから、大きな価値ある1点だった。

「同点に追いついたのはチームが諦めなかった証拠。唯一ポジティブなことだった」と試合後、終始渋い表情だったハリルホジッチ監督も安堵感を垣間見せた。サイドからの得点力が生命線と言っていい今の日本代表にとって、今回の中島のゴールは数少ない朗報と捉えていいはずだ。

 この働きによって中島が左サイド競争から一歩抜け出したのは確か。だが「僕は1試合やっただけなんで、続けなければ意味がない」と本人も言うように、キャップ数1の男はまだ未知数の存在。これだけではロシア行き当確とは到底、言い切れない。

 ハリルジャパンの実績を見ると、最終予選序盤で4試合連続ゴールという日本新記録を樹立した原口の方がはるかに上を行っているし、ロシア切符を勝ち取った昨年8月のオーストラリア戦(埼玉)で先発出場した乾貴士(エイバル)も控えている。乾はハリル体制無得点という部分を懸念され、今回は選から漏れる形となったが、リーガ・エスパニョーラでコンスタントにプレーしていて、コンディションが悪いわけでは決してない。ゴールに直結するお膳立てにも優れているだけに、有力候補の1人であることには変わりない。このマリ戦で久しぶりに先発した宇佐美も指揮官の要求に応えることに苦労したものの、動き自体は悪くなかった。それだけ左サイド争いは熾烈を極めているのだ。

 まさに混とんとした状況の中、マリ戦でインパクトを残した中島が今後やるべきなのは、得点につながる仕事を継続すること。毎試合ゴールを奪えれば理想的だが、攻撃リズムの変化をつけたり、局面を打開するなど、ゴールにつながる有効なプレーをコンスタントに見せることも重要だ。それを要所要所で遂行できれば、ハリルホジッチ監督の評価はさらに上がるはずだ。

 加えて、オフ・ザ・ボールの動きの質を高めることも重要なポイント。とりわけ守備面ではよりアグレッシブさが求められてくる。「守備の部分ではまだまだボールを取れていないし、もっと力になれるようにしたいと思っています」と中島も自身の課題を自覚している様子だった。90分通して惜しみないハードワークを続け、攻守両面でより存在感を発揮できるようになれば、ロシア行きがより現実味を帯びてくる。本人もその確信を抱いたのではないだろうか。

 中島の真価が問われるのは、27日のウクライナ戦だ。マリ戦で出番のなかった原口が先発入りしそうだが、中島のプレー時間が増える可能性も少なくない。屈強なDFの揃う東欧の強豪国相手に、持ち前のゴール前の鋭い嗅覚を随所に示せるのか。攻撃の迫力不足に悩む日本代表をこの小柄なアタッカーが救ってくれれば最高だ。

文=元川悦子

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