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【コラム】「“新人”じゃなくて“一員”」…17歳の中村敬斗に芽生える自覚と自信

今季G大阪に飛び級で加入した中村敬斗 [写真]=Getty Images

 遠藤保仁からの縦パスに反応した17歳の新人FW中村敬斗は左に流れた長沢駿にボールを預け、迷うことなくゴール前へ突き進んだ。次の瞬間、リターンパスを受けて右足を一閃。ゴールマウスを守るクォン・スンテも微動だにできない強烈なシュートは惜しくも左ポストを直撃し、得点には至らなかった。

「ファーもニアもどっちも空いてて、どっちに蹴っても入ると感じていました。ただ、ファーに少し昌子(源)さんが来てた気がしたんで、もしゴロで打って足に当たったら嫌だなと。ニアでも決めれる自信はありましたし、そっちを選びました。正直、打った瞬間『入った』と思ったんですけど、ちょっとの差でしたね。あれが入っていたら今日は間違いなく勝っていた。悔しいですね」とガンバ大阪の背番号38を着ける次世代のエース候補は熱い胸の内を吐露した。

 3日の明治安田生命J1リーグ第2節・鹿島アントラーズ戦。1週間前の開幕戦・名古屋グランパスとの壮絶な打ち合いの末、2-3で落としたG大阪にとって、この試合は何としても白星がほしい一戦だった。前半は長沢と遠藤の2トップで戦ったが、鹿島に主導権を握られ、思うように攻撃を組み立てられない。

 そこで、指揮官が後半頭から投入したのが中村だった。かつてセレッソ大阪で17歳だった香川真司(ドルトムント)を大胆抜擢して才能を開花させた目利きの名将は、似たような非凡さを感じている様子。だからこそ、開幕から2試合連続で重要局面でのジョーカー起用に踏み切ったのだろう。

中村敬斗

積極果敢な姿勢で攻撃を活性化させた [写真]=Getty Images

「前半を見ていても分かる通り、シュート本数とか前に進むことがチームとして少なかったんで、監督は僕を投入してくれた。前に仕掛けていくことが自分の役割だった」と背番号38は言うように、ボールを受けると前へ前へという意識を強く押し出した。自身が生まれた2000年にJ1で3冠を達成した小笠原満男が軸を担う鹿島ボランチ陣と対峙しても、距離感を測りながら受け、臆することなく突破を試みる。その冷静さと強心臓ぶりは見るものをワクワクさせるものがあった。

 最大の見せ場が冒頭の決定機だ。2016年のAFC U-16選手権(インド)で2ゴール、17年のU-17ワールドカップ(インド)で4ゴールを挙げ、森山佳郎監督(現U-16日本代表監督)からも絶賛されたフィニッシュの鋭さは、この場面でも遺憾なく発揮されたと思われた。が、同年代の世界大会とプロの公式戦は何かが違う。中村のゴール前の感覚に微妙な狂いが生じたのかもしれない。しかも、対面にいたのは昌子、植田直通というロシアW杯メンバー有力候補のDF陣だ。本人は「絶望的に劣っている部分はなかった」と少なからず自信を覗かせたが、「総合的にスピードだったり、判断の速さだったりを身につけないといけない」と課題も口にした。Jリーグ初ゴールという結果が出ていれば、確固たる手応えを掴めていたはず。それを得るためにまだまだ自己研鑽が必要なのだ。

「ああいう場面でも外国の同年代の選手だったら決めきる力を持っていたんじゃないかなと。そう考えるとすごく嫌になります」と中村はU-17W杯で苦杯を屈したイングランドのジェイドン・サンチョ(ドルトムント)やフィル・フォーデン(マンチェスター・C)らの一挙手一投足を脳裏に浮かべながら、悔しさをむき出しにした。すでにブンデスリーガやプレミアリーグでデビューを果たしている世界のライバルたちに比べたら、J1デビューしたばかりの自分はまだまだ。負けん気の強い男はそういう高い意識を持っているに違いない。

中村敬斗

昨年のU-17W杯で得点を量産。Jクラブがこぞって獲得に乗り出した [写真]=Getty Images

 17歳でのプロデビューは日本では「非常に若い」という印象で捉えられがちだが、今季のG大阪は世代交代が一気に進み、遠藤や東口順昭以外は20歳前後の選手が数多く試合に出ている。中村も「自分は『新人』じゃなくて、『チームの一員』という扱い。戦力とも考えられていると思うんで、シュートを外したことも間違いなく自分の責任です」とキッパリ言い切るほど、自らチームをけん引していかなければならないという自覚を持っている。結果的に自身がビッグチャンスを逃し、鹿島のエースナンバー10番を背負う金崎夢生に決勝点を奪われ、開幕2連敗した責任も痛感。「ガンバは昔から強いチームなんで、2連敗してしまったことはいけないことだと思う。次は必ず勝ちたい。早く点がほしいです」と語気を強め、7日のJリーグYBCルヴァンカップ・サンフレッチェ広島戦での得点を誓った。今後担うポジションもこの日のようにトップ下か1トップなのかは分からないが、どこで出ても存在感を出し、ゴールに絡む回数を増やすこと。それが今の中村に課せられた命題だ。

 かつて稲本潤一(北海道コンサドーレ札幌)や新井場徹が高校生Jリーガーで頭角を現した20年前、G大阪は強豪チームの一角にのし上がりる凄まじい勢いを感じさせた。中村や同じくルーキーの福田湧矢の台頭は同じ歴史を作る大きなきっかけになるかもしれない。20年の東京オリンピック、22年カタールW杯と日本の近未来を担うであろうスケールの大きな点取り屋の動向から目が離せない。

文=元川悦子

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