2017.12.10

【コラム】川島を超えるインパクト…好セーブ連発の中村航輔が目指すのは「どんなシュートも止めるGK」

中村航輔
存在感を見せつけた中村航輔 [写真]=Getty Images
日本代表から海外まで幅広くフォローするフリーライター。

 2017年6月のシリア(東京・味の素)・イラン(テヘラン)2連戦で日本代表に初招集されてから半年。22歳の若き守護神・中村航輔(柏レイソル)が満を持して2017年東アジアカップ(E-1選手権)初戦・北朝鮮戦(東京・味の素)で初キャップを飾った。同じくこの日が代表デビュー戦だった同い年の右サイドバック・室屋成(FC東京)が「前半は硬かった」と打ち明けたように、国際Aマッチ初戦は独特の緊張感を覚える選手が多いが、彼の場合は全く違った。「いい準備ができて、ボールもしっかり見えていた。いつも通りできたと思う」と堂々たる風格をピッチ上で示したのだ。

 始まりは前半25分のチョン・イルグァン(11番)の飛び出しに対するスーパーセーブだった。これで勢いに乗った次世代のGKは直後の27分にキム・ユソン(23番)とリ・ヨンジ(16番)のシュートを立て続けに防ぎ、絶体絶命のピンチを逃れる。前半の日本は北朝鮮のパワフルな攻撃に押されがちで、DF昌子源(鹿島アントラーズ)とDF谷口彰悟(川崎フロンターレ)の両センターバックの連携にもギクシャク感が見て取れるなど、守りに一抹の不安があった。が、中村が最後の砦として立ちはだかったことで無失点で乗り切ることができた。

 後半に入り、MF高萩洋次郎(FC東京)に代わってMF伊東純也(柏)が登場。FW小林悠(川崎)が中央に映って4-4-2に近い布陣になってからは、ようやく日本の攻撃が活性化し始めたものの、北朝鮮の猛攻は続いた。その最たるシーンが後半24分のチョン・イルグァンのヘディングシュート。これも中村の横っ飛びでゴールを割らせない。後半38分の決定機も含め、彼が4から5回のビッグチャンスを全て止めてくれたから、最後の井手口陽介(ガンバ大阪)の決勝点につながった。

中村航輔

横っ飛びでゴールマウスを死守 [写真]=Getty Images

 シュート数7対12と相手に上回られながら、1-0で重要な初戦をモノにできたのは、守護神の活躍によるところが大。キャプテンマークを巻いた昌子も「今日の航輔はすごかった。試合後に『助かったよ』と言いました」と心からの安堵感を吐露した。この強烈なインパクトは、2010年の南アフリカワールドカップ直前に先輩・楢崎正剛(名古屋グランパス)からレギュラーを奪取し、スーパーセーブを連発した川島永嗣(メス)を彷彿させるものがあった。当時の川島は27歳で、A代表デビューから2年以上の月日が経過していたが、中村はまだ22歳。しかも今回が初キャップだ。今季Jリーグベストイレブンに選ばれた実力をそのまま北朝鮮戦でも出し切った若きGKは未来への大いなる可能性を示すのに成功したと言っていい。

 2002年日韓ワールドカップで大活躍したドイツ代表のオリバー・カーンに憧れてGKを志してからというもの、中村は努力に努力を重ねてきた。小学校5年生から柏のアカデミーに所属し、U-15世代から年代別代表入り。2011年U-17ワールドカップ(メキシコ)、2016年リオデジャネイロ五輪に参戦するなど、傍目からはエリート街道を歩んできたように映るが、本人は決して順風満帆なキャリアだったとは考えていないという。

 大きな挫折の1つが、柏U-15時代の2009年に挑んだ高円宮杯全日本ユース選手権(U-15)準決勝のヴィッセル神戸戦。DF岩波拓也(ヴィッセル神戸)擁するタレント軍団相手に一進一退の攻防を繰り広げ、延長戦に突入しながら、相手と1対1の状況で股間を抜かれるという悔しいミスを犯して号泣。中村は自らの力不足を痛感することになった。

「自分は全力を尽くしましたけど、サッカーの敗戦の多くの責任はGKにある。そのことを痛感しました。責任が重いからこそ、それを乗り切った時に得るものは大きい。そう思って前向きに頑張ろうと思ったんです」と彼は転機になった出来事を明かす。

 柏U-18時代の2012年夏の日本クラブユース選手権決勝、横浜F・マリノス戦も2つ目の挫折と言える出来事だ。中村は当日の朝に右腕を骨折し、欠場を余儀なくされた。自らに代わってピッチ上でタフに戦ってくれたチームメートが優勝してくれたことで、彼はまたも大泣きする。「サッカーは仲間に支えられてこそ成り立つ」という重要な事実を再認識した中村はチームを勝たせるためにより一層、ストイックにGK道を追求するようになったという。

中村航輔

苦難を乗り越え、今季はベストイレブンに選ばれる [写真]=JL/Getty Images for DAZN

 身長184㎝と現代サッカーの守護神としては決して恵まれた体躯とは言えない彼が追い求めたのは「どんなシュートでも止められるGK」。これまで憧れてきたのは、カーン、川口能活(SC相模原)、ダビド・デ・ヘア(マンチェスター・U)と鋭い反応を武器にスターダムにのし上がった守護神たちだ。こうした面々と同じように北朝鮮戦で相手のシュートを止めまくり、存在感を示した中村が6カ月後の2018年のロシアワールドカップに大きく前進したのは間違いない。

 11月のブラジル代表(リール)・ベルギー代表(ブリュッセル)2連戦では、西川周作(浦和レッズ)の復活によって代表GK3枠から押し出される格好となったが、これだけのパフォーマンスを示した男をヴァイッド・ハリルホジッチ監督も放っておくわけにはいかないだろう。川島、西川、東口順昭(G大阪)という30代GKの実績と経験値は大きな壁だが、22歳の彼には勢いと伸びしろがある。それをE-1選手権でこの先も感じさせ、日本を2大会ぶりの優勝へとけん引できれば、守護神の序列は確実に変わる。場合によってはロシア本大会のピッチに立つことも夢ではないのだ。

「日本を背負って立ちたい」と本人も強い覚悟を口にした。その言葉通り、まずは今回のE-1選手権で日本代表をリードし、頂点に立たせる仕事に集中すること。それが彼の大願成就への重要な一歩となるはずだ。

文=元川悦子

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