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【コラム】槙野智章、夢のロシアW杯を手繰り寄せる反撃弾…香川の来訪にも刺激

2017.11.13

ブラジル戦で得点を挙げた槙野智章 [写真]=Getty Images

 ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)による吉田麻也(サウサンプトン)のPK献上でゲームプランが崩れ、36分までに早々と3失点してしまった10日のブラジル代表戦(リール)。ディフェンスリーダーの大きなミスで日本は瞬く間に崩れ、キャプテンの長谷部誠(フランクフルト)も「行くべきか守るべきか」の意思統一できなかったことを悔やんだ。

 吉田とセンターバックのコンビを組んだ槙野智章浦和レッズ)も「麻也が守備を引っ張ってきてくれて、頼りっぱなしという部分もあったけど、自分が入ったからには全体をオーガナイズする。鼓舞する、ラインの上げ下げなど、できることはしっかりやろうと考えていた」という。吉田のPK献上直前にはゴール前に飛び込んできたガブリエル・ジェズス(マンチェスター・C)に体を寄せて間一髪でピンチを回避。その後も世界最高クラスのアタッカー陣を相手に果敢に体をぶつけに行っていた。

 攻撃面でも前半は久保裕也(ヘント)へのサイドチェンジを数回作りチャンスメークに貢献。後半には井手口陽介(ガンバ大阪)の左CKに反応し、自ら一矢報いるヘディング弾も挙げた。王国に対するゴールは2006 FIFAワールドカップ ドイツでの玉田圭司(名古屋グランパス)以来、11年ぶりのこと。それを含めて、槙野の奮闘は見る者の目を引いた。

槙野智章

CKから反撃の一発を頭で叩き込む [写真]=Getty Images

「こういう相手はやっぱり1人じゃ守れないですね。昨日も麻也や(長友)佑都のコーチングだったり、状況判断の声が僕らを動かしてくれていたし、僕らはまとまってこそのチームだと思う。1人で輝くよりも、みんながまとまって同じ画を描きながらでないと、いい結果は出せない。苦しい時に耐えて跳ね返すメンタルも備えていかないといけないのかなと思います」

 本人は神妙な面持ちで言うが、2018 FIFAワールドカップ ロシア・アジア最終予選の終盤に昌子源(鹿島アントラーズ)にポジションを奪われてからの巻き返しは凄まじいものがある。10月のニュージーランド代表戦(豊田)でも鬼気迫る守備を見せ、吉田に「ただ単にお笑い担当じゃないんだよっていう意思はすごい感じた」と冗談交じりに称賛されている。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝・上海上港戦でのフッキとのマッチアップにも象徴されるが、ここ最近の槙野は本来の接近戦の強さに磨きがかかっている。「個人としても今年に入ってセンターバックとしてのプレーの幅、広がりも増えてるんじゃないかと思います」と彼自身も手応えをつかんでいる様子だ。

 30歳を過ぎてから成長スピードを一気に加速させている背景には「ロシアが最初で最後のワールドカップだ」という強い危機感がある。岡田武史監督(FC今治代表)が率いていた2010年1月のイエメン代表戦(サナア)で初キャップを飾った時、槙野は22歳。結果的には断ったものの、南アフリカW杯のサポートメンバーにも選ばれ、近未来の代表の中心的存在になると周囲から大きな期待を寄せられていた。だが、アルベルト・ザッケローニ監督時代は今野泰幸(G大阪)や森重真人(FC東京)が重用されて定着は叶わず、ブラジルW杯は落選。ハビエル・アギーレ監督時代も招集を見送られた。ともにユース時代から戦ってきた内田篤人(ウニオン・ベルリン)、香川真司(ドルトムント)らが表舞台に立ち続ける中、自分はどこか「出遅れ感」を抱いてきたことだろう。

槙野智章

初のW杯へ懸ける思いは強い [写真]=Getty Images

 しかしながら、ここへきて内田は度重なる負傷に苦しみ、香川も今回の2連戦で代表落選というまさかの事態に直面。槙野の方がブラジル相手に奮闘していて、立場逆転とも言える状況になっている。それでも、彼の中では「もう一度、真司たちと一緒に日の丸を背負いたい」という思いが強いはず。代表落選の悔しさを胸に、わざわざドルトムントからリールまでブラジル戦を観戦に訪れた香川に、「いつでも待ってる」と声をかけたことも明かした。

「真司は『ゴール決めて良かったね』と言ってくれましたけど、本人的にも思うところは沢山あっただろうし、難しい立場の中、こうやって試合を見に来る姿というのは僕も本当にプロ意識を感じた。『チームのために何かやりたい』『何か行動を起こしたい』というのは彼からも感じるし、後輩ながらもリスペクトしかないですね。そういう態度も行動も変わったと感じるし、試合を見に来ている格好、コートもオシャレになったしね(笑)。そういうところも変わったところじゃないですか」と槙野はジョークを織り交ぜながら香川の変貌ぶりを評したが、メンタルに課題があると言われてきた男が自らアクションを起こせるようになったのは大きな出来事。もともと自分から動けるタイプの槙野にしても「もっとやらなければいけない」といういい刺激になったことだろう。

 14日のベルギー戦も引き続き先発入りが濃厚で、直後の18日には敵地・リヤドでのアルヒラルとのACL決勝第1戦が待っている。12月のFIFAクラブワールドカップ2017出場権を取れるか取れないかは、彼自身のキャリアを大きく左右する重要テーマに他ならない。ブラジル戦を含めると1週間で3試合の超過密日程を強いられるが、「いい相手とできることは選手としてポジティブ。個人的には多くの試合に出たいし、いろんなチームや選手とやって経験を積みたいという意味では、スケジュールうんぬんじゃなくて、沢山試合をしたくてうずうずしている」とどこまでも前向きだ。

 そういうポジティブな空気を日本代表浦和レッズの両方にもたらせるのは、やはり根っからの明るさを備えたこの男。自分の長所を遺憾なく発揮して、クラブW杯とW杯の両獲りを果たしてほしいものである。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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