2017.09.04

【コラム】ロシアW杯開幕まで残り9カ月…今、日本代表がすべきこととは

ロシアW杯出場権を獲得した日本代表 [写真]=Getty Images
1968年生まれ、栃木県出身。1993年に(株)ベースボール・マガジン社に入社し、2004年からワールドサッカーマガジン編集長、週刊サッカーマガジン編集長を歴任。現在はフリーランスとして活動中。

◆“世界仕様”でアジアを突破

 ようやく「二重基準」の罠から抜け出した。天敵オーストラリア代表を破り、ロシア行きを決めた日本代表のことだ。

 二重基準とは、アジア仕様と世界仕様の戦い方が大きく食い違うという意味である。対アジアでは自分たちがボールを持って戦い、対世界では相手に持たれて戦う。歴代のチームは、その狭間で揺れ動いてきた。

 アジア最終予選を突破すれば、ポゼッション型からカウンター型へ転換するのが常だった。その「慣例」を破った数少ない代表が、ジーコジャパンと4年前のザックジャパンだ。本大会でもポゼッション型で押し通したが、グループステージで敗退の憂き目に遭っている。

 逆にカウンター型(世界仕様)でアジア最終予選に臨んだのが、今回のハリルジャパンだ。しかし、本田圭佑ら主力の多くはポゼッション型で主軸を担ってきた上に、アジア勢相手では日本がポゼッションで優位に立ちやすい。面子も戦法も噛み合わないのは半ば当然だった。そして、面子をがらりと変えた昨年11月のサウジアラビア代表戦で快勝。戦い方が同じなら、人を代える以外に手はないからだ。

得意の抜け出しから先制点を挙げた浅野拓磨 [写真]=Getty Images

 今回のオーストラリア戦でも組み替えが進んでいる。言わば奪取速攻――プレス・アンド・ラッシュに適した人材だ。そこには本田も香川真司もいない。中盤にはアンカー手前に井手口陽介と山口蛍というプレスの申し子を並べて、両翼にはドリブル(乾貴士)とスピード(浅野拓磨)で一気に縦へ持ち出し、鋭く敵のゴールへ迫るカウンターの適材を据えている。しかも、ボールを持って戦うチームへ様変わりしたオーストラリアが相手だ。まさに嵌まるべくして嵌まったゲームだろう。格下のUAE代表に不覚を取りながら、最大のライバルと目されたオーストラリアには1勝1分け。世界仕様で押し通したことの「功罪」が、この奇妙な戦績に如実に表れている。

 もっとも、アジアの関門さえくぐれば、あとは奪取速攻を強力に推進するだけだ。実のところ、ベスト16へ駒を進めた2002年の日韓W杯と2010年の南アフリカW杯は、いずれもカウンター型である。強豪がひしめく本大会では、ツボに嵌まりやすい。ただし、攻めに転じた際は前線の「個の力」に依存するのが宿命だ。プレスが空転し、自陣深く押し込まれてしまえば、余計にそうなる。攻めの効率を上げるには、ボールの回収地点を相手ゴールに近づけるしかない。その意味で先のオーストラリア戦の2点目は象徴的だ。敵陣の深いゾーンで原口元気が敵に食いつき、こぼれ球を拾った井手口がそのまま持ち込んで豪快な一発を決めている。これこそプレス・アンド・ラッシュの見本だろう。

井手口は攻守両面で存在感を見せた [写真]=Getty Images

 もっとも、この手のハイプレスを持続させるのは簡単ではない。もとより、本大会で対峙する強国の多くは、日本のプレスをはがす力を持っているはずだ。おそらく、オーストラリアのそれとは比べものにならない。戦況次第では闇雲に食いつかず、コンパクトなブロックを作って相手の攻めをやり過ごす「二段構え」のディフェンスが必須だろう。もっとも、このあたりの感覚は実戦の中で掴み取っていくしかない。要するに強国とのテストマッチを重ねることだ。

 いかに実のある相手と強化試合を組めるか。JFA(日本サッカー協会)のマッチメーク力が問われている。10月のキリンチャレンジカップでハイチ代表との一戦が組まれているが、必要なのは本大会でぶつかる可能性が高いヨーロッパ勢とアフリカ勢との戦いだろう。欲を言えば、ロシアとの強化試合もセットしたい。今回はFIFAコンフェデレーションズカップに参加しておらず、キャンプ地など諸々の視察を兼ねて、現地に赴くことには大きな意味があるはずだ。第二次岡田ジャパンも本大会に先立って南アフリカに遠征していた。

◆ロシア行きを懸けたサバイバル

 最後にもう一つ触れておきたいのが「人選」だ。井手口を含め、大迫勇也、長谷部誠、吉田麻也、川島永嗣という縦のライン(背骨)が、ほぼ固まった感もある。また、長友佑都と酒井宏樹の両サイドバックも第一選択肢だろう。反面、何らかの理由によって彼らを失ったときのオプションを探しておく必要がある。特にアジア最終予選を通じて固定化が進んだ最終ラインには、計算できる駒を用意しておきたい。

 センターバックにはケガで戦列を離れた森重真人がいるものの、どこまでトップフォームに戻せるか。保険をかける意味で植田直通を試したい。吉田の相棒となった昌子源と鹿島アントラーズでペアを組んでいる利点を生かせるからだ。また、中盤には「奪取力と推進力」に秀でた駒が、もう一つほしい。3月のUAE戦で結果を出したベテランの今野泰幸もいるが、新しい駒に食指を動かすなら、ジュビロ磐田で目覚ましい成長を遂げているボランチの川辺駿が面白い。トップ下でも十分な力を示しており、代表仕様のインサイドMFにも難なく適応できるだろう。逆にアタック陣の駒は豊富に揃っている。その中で大迫だけは別格だろう。前線であれだけボールの収まる人材は、ちょっと見当たらない。不在時は徹底的にラインの裏を突くような別のソリューションが必要か。

負傷中の清武。復帰が待たれる [写真]=Getty Images

 もとより、ハリルホジッチ監督は特徴の異なる駒をオプションとして抱え込む算段だろう。実際、アルジェリア代表を率いた4年前のW杯ブラジル大会でも対戦相手や戦況に応じて手持ちの駒を使い分け、戦術転換を試みている。現状、明らかに足りないオプションは前線の高さとセットプレーのキッカーだ。カウンター型の泣きどころは相手に守られたときの打開策を持ちにくいことにある。そこでパワープレーとセットプレーを準備しておきたい。待ち人は清武弘嗣だろうか。インサイドMFの適性を含め、最も汎用性の高い大駒だ。柴崎岳にも期待は懸かるが、例のデュエルでベンチを納得させるだけの力を示せるかどうか。生き残りのカギは、そこかもしれない。

 メンバーの固定化を進めるメリットは大きい反面、デメリットもまた大きい。主力が欠ければ、あるいはベストの状態でなければ、チーム力が極端に落ち込む恐れがあるからだ。それよりも手広く構え、デメリットを最小限に抑える。やり直しの効かない短期決戦では、そちらの方に利がある、と指揮官は考えているのではないか。最後まで扉が開かれた代表ならば、高い競争力を維持できる。リオ世代の躍動を考えても、まだまだ「余白」はあると思う。

文=北條聡

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