2017.08.28

【コラム】再び定位置を掴み代表合流…GK川島永嗣、若い世代を後押しする精神的支柱に

川島永嗣
日本代表を最後尾から支える川島永嗣 [写真]=佐藤博之
日本代表から海外まで幅広くフォローするフリーライター。

 2018 FIFAワールドカップ ロシア出場権のかかるアジア最終予選の大一番・オーストラリア戦(埼玉)まであと3日。27日から埼玉県内で事前合宿に入っている日本代表だが、初日に間に合わなかった本田圭佑(パチューカ)や香川真司(ドルトムント)ら海外組が2日目に大量合流。26日のカーン戦で今シーズン、リーグ・アン初出場を果たした34歳のベテラン守護神・川島永嗣(メス)も加わり、運命の一戦に向けて初練習を消化した。

 新天地に赴いた昨シーズンは第3GKからのスタートを余儀なくされながら、2部降格危機に瀕したリーグ終盤に正守護神の座を掴むことに成功。チームの1部残留の原動力となった。その実績を引っ提げ、今シーズンは8月5日の開幕節、ギャンガン戦から常時ピッチに立つと目された。プレシーズンの調整試合にも出場し、コンディションは万全だったが、信頼関係を構築していたはずのフィリップ・ヒンシュベルガー監督は開幕直前になって昨シーズン序盤の正GKトマ・ディディヨンをいきなりレギュラーに指名。アカデミー出身の21歳の守護神を夏の移籍期間内に売りたいクラブ側の意向が反映された模様だが、梯子を外される格好となった川島は複雑な心境だったに違いない。

「ずっと準備して開幕を迎えるってところで監督から『試合に出ない』って言われたので、少しモチベーション的に難しかった。ただ、自分としては練習から自分がやれることを見せるしかないと思った」と本人も言うように、絶対に意欲を失わずに戦い続けられるのがこの男の凄み。リザーブチームで試合に出るなど地道なアピールを続けた結果、指揮官は開幕3連敗を喫した時点でついに川島のスタメン抜擢を決断。カーン戦は惜しくも0-1で敗れたものの、彼自身は出口の見えないトンネルから脱出した印象だ。

代表合流前に公式戦に出場できたことはプラスとなる [写真]=Fred Marvaux/Icon Sport

「(カーン戦の)結果は残念でしたけど、まあ第一歩としては良かったかなと。よりいい状態で代表にも来れたのかなと思います」と代表合流した川島は安堵感をにじませた。

 この上昇気流はオーストラリアとの最終決戦にもプラスとなるはずだ。しかも彼には2014年ブラジルW杯の切符を獲得した4年前の宿敵との決戦(1-1)の経験値もある。それも今回の天王山に大いに役立つだろう。

「あの時は先に失点して苦しくなったんで、まず失点しないことが大切。向こうも勝たなければいけないと思うし、本当にゲームが始まった時からの駆け引きになる。ホームの僕らは失点しないことを考えつつも、どれだけ勝ちに行けるかが大事になりますね」と川島は少し前に前回対戦をこう振り返っていた。その教訓を生かすことがまずは先決だ。

 オーストラリアの進化は、彼らの自国開催だった2015年のAFCアジアカップや昨年10月のアジア最終予選でのアウェイ戦(メルボルン)、今夏のFIFAコンフェデレーションズカップ(ロシア)などを通して十分に理解している。

「彼らはアジアカップの時からチームを作ってきて、チーム完成度だったり、やろうとしていることにかなり自信を持って臨んでくると思う。相手のフィジカル的な強さもそうだし、ビルドアップも含めて、相手がやりたいようにやらせるんじゃなくて、自分たちがどれだけそれを抑え込んでいけるかが重要なポイントになってくるかなと感じます」

「とにかく『次のオーストラリア戦に勝てばいい』という楽観的な考え方は危険。可能な範囲内で最高の準備をすることが重要だと思います」と彼は過去に修羅場を潜ったあらゆる経験を凝縮させて、大一番で勝利を掴みに行くという。

 最後尾から守備陣を動かす立場として、一つやらなければならないのが、6月のイラク戦(テヘラン)から吉田麻也(サウサンプトン)と昌子源(鹿島)の新センターバックコンビをスムーズに動かすこと。川島は昌子の成長を心強く感じているようだ。

「昌子は6月の1試合目(シリア戦/東京)より2試合目(イラク戦)の方が良かったと思うし、その時点でベストだと監督が判断したから使った。イラク戦に先発した(井手口)陽介(ガンバ大阪)も良かったですし、新しい選手が入ってくることでチームとしての可能性はどんどん広がると思います」と若い力の台頭を前向きに受け止めている。

 実際、川島自身も27歳で挑んだ2010年南アフリカW杯でスーパーセーブを連発。川口能活(SC相模原)、楢崎正剛(名古屋グランパス)の両ベテランにはない躍動感とフレッシュさをチームにもたらした。

「自分もむしろ若い時の方が何も考えずにプレーしていたのかな。一つひとつのことに集中していたし、練習の時から『こういうシーンが来たらこうしよう』という感覚を養っていたので、本番でもあまり考えずにそのままプレーできましたね」と彼自身も述懐したことがある。サッカーだけではないが、人は時として経験のなさが武器になることもあるのだ。

 W杯のかかる大一番を戦ったことのない選手は昌子だけではない。今の中心メンバーである山口蛍(セレッソ大阪)、原口元気(ヘルタ・ベルリン)や大迫勇也(ケルン)といった面々も未知なる領域である。そんな若い世代が伸び伸びとプレーできるように、川島が的確な指示の声を出し、彼らを動かしていけば、チーム全体がより安定を増すはずだ。5カ月ぶりに代表に戻ってきた盟友・長谷部誠(フランクフルト)とともに、ベテラン守護神は統率力を発揮し、宿敵から大きな白星をもぎ取ってもらいたい。
 
文=元川悦子

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