FOLLOW US

【コラム】シリア戦は「4-3-3」を採用? カギを握る負傷明けの今野「本能のままに」

2017.06.05

5日に東京スタジアムでトレーニングを行った今野泰幸 [写真]=野口岳彦

 シリア戦(東京)を2日後に控える日本代表が5日、東京に場所を移して再始動した。この日から欧州組に加えて国内組11人も合流。これまで8日間の欧州組合宿でハードトレーニングをこなしてきた宇佐美貴史(アウクスブルク)も正式に追加招集されることになった。

 同日夕方17時半から試合会場の東京スタジアム(味の素スタジアム)で行われたトレーニングには、前日まで2日間欠席した浅野拓磨(シュトゥットガルト)を含む26人全員が参加。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が前日の穏やかさとは打って変わって声を荒げながら選手たちを鼓舞してから、練習が始まった。

 前日のリーグ戦に先発した倉田秋、井手口陽介、三浦弦太(いずれもガンバ大阪)、宇賀神友弥、遠藤航(ともに浦和レッズ)の5人が別メニューでクールダウンに努める一方、21人の選手たちが走りから練習をスタートさせた。その後、浅野だけが大事を取ってランニングを続行。「足はいい感じ」と本人も話しており、順調な回復傾向にあるようだ。さらに、川島永嗣(メス)、東口順昭(G大阪)、中村航輔(柏レイソル)の3人もGK練習へ移動。残りの18人が各々のポジションについてアップを消化した。

 その布陣は3月の2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選・UAE戦(アルアイン)と同じ「4-3-3」。中盤はアンカーの位置に山口蛍(セレッソ大阪)と加藤恒平(PFCベロエ・スタラ・ザゴラ=ブルガリア)、右インサイドハーフに今野泰幸(G大阪)、左インサイドハーフに香川真司(ドルトムント)と宇佐美が陣取った。センターバックは吉田麻也(サウサンプトン)が右に入り、左には昌子源(鹿島アントラーズ)と槙野智章(浦和)が位置した。昌子の方がアップのスタート順が先だったことから、彼の先発抜擢が有力視される。

 いずれにせよ、指揮官はUAE戦で奏功したこのフォーメーションで再び中東勢に挑む考えのようだ。となると、やはり気になるのはインサイドハーフが機能するか否か。UAE戦では今野が1得点を含むスーパーな働きを見せ、「12人分って言ったら変ですけど、今ちゃんがすごい運動量で、得点も取ったし、本当にすごい。チームで一番素晴らしいプレーヤーだったんじゃないかと思います」と香川も最大級の賛辞を送った。今野自身は「もうできすぎっすね。奇跡、奇跡」と笑っていたが、日本を勝利に導くという大仕事は立派に果たしてくれた。

 しかしながら、その奮闘によって、34歳のベテランMFは右足小指を骨折。2カ月半の長期離脱を強いられることになった。4日のジュビロ磐田戦でようやく復帰し、60分から30分程度ピッチに立ったが、「0-3で負けている状況で攻撃を活性化してくれと言われて入ったのに、流れを変えられなかった。力不足を感じたし、終わってからもショックだった。どうすればいいのか悩んだ」と理想と現実のギャップに苦しんだようだ。

 シリア戦までわずか2日しかないため、コンディションを一気に上げるのは難しいが、今野という選手は追い込まれた時ほど凄まじいパフォーマンスを出せる。過去に数々の修羅場をくぐってきた逆境の強さとタフさを今こそ発揮してくれるだろう。

 本人も「自分のよさを出さなくちゃいけない」と、いい意味で覚悟を決めている。

「自分のよさって何だろうって考えたら、やっぱり球際で負けないとか、チームのために走るとか、そういうことだと思う。それが出せなかったら自分じゃない。そういう特徴を出していければいいし、それしかできないですからね」と彼は決意のほどをのぞかせた。

 2005年の東アジアカップ・中国戦(韓国)で初キャップを飾ってから足掛け13年で88試合もの国際Aマッチの舞台に立ってきた今野は、誰よりも代表の重みをよく理解している。ケガ上がりだろうが、コンディションが100パーセントでなかろうが、戦うべき時は戦う。それがこの男の信条だと言っていい。

「ガンバで試合に出ていないのに呼んでくれたのは光栄なことだし、呼ばれたからには責任感を持ってやらなくちゃいけない。サッカーは勝たなくちゃいけないと思うし、代表は絶対に勝たなくちゃいけない場所。親善試合かもしれないけど、とにかく勝ちにこだわったプレーを一人ひとりがやらなくちゃいけない。自分は試合になったら一生懸命やるだけだし、体が動くままに、本能のままにやりたいと思います」

 UAE戦も本能のままにプレーして、あれだけのスーパーな活躍ぶりを見せてくれた今野。シリア戦はおそらく時間限定の出場になるだろうが、次のイラクとの大一番につながるような仕事を見せてほしい。「4-3-3」を機能させるポイントは彼の一挙手一投足だといっても過言ではない。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

SOCCERKING VIDEO