反撃ののろしを上げる得点をアシストした遠藤 [写真]=佐藤博之
試合開始7分で2失点の事態が、逆に落ち着きをもたらした。今大会初スタメンに「思っていたよりも緊張しました」というMF遠藤渓太(横浜F・マリノス)。「2失点してから吹っ切れて、いけましたね」と劣勢の状態に陥り、スイッチが入った。
FIFA U-20ワールドカップ韓国2017 グループD第3節のイタリア戦、遠藤は左サイドでDF杉岡大暉(湘南ベルマーレ)、MF原輝綺(アルビレックス新潟)と連係しながらボールを動かす。得意のドリブルで仕掛ける場面は少なかったが、「テンポよく回すこと」を意識しつつ、課題でもあった「ビルドアップに参加すること」を実践しながら攻撃のリズムを作っていった。
22分に生まれた1点目は、ピッタリと息の合ったゴールだった。遠藤がゴール前に鋭いクロスポールを入れると、そこに勢いよく顔を出したMF堂安律(ガンバ大阪)がジャンピングボレーで合わせた。
「自分がカットインした時に律が動いているのが見えました。点と点で合わせられた。アシストしている僕も気持ち良かった」
今大会に向けて「ここで結果を残さなかったら、わざわざ日本を離れてここに来た意味がない」と強い覚悟を示していただけに、遠藤は1つ結果を残せたことで少しホッとした様子だった。イタリア戦前日に「序盤のまだみんな体力がある時から自分の良さを出せるかどうか」と心配していた立ち上がりも、「しっかりと自分のリズムを作れたし、左サイドでいい連係ができた。少しずつ自分も成長してやっていけているのかな」とまずまずの手応え。「アシストという数字を残せたのは良かった」と充実した表情を浮かべた。
同時に「ゴールを決めたい」という気持ちが大きくなる自分がいた。静岡での直前合宿から好調を維持しながら、ここまでの2試合でスタメン落ち。68分から途中出場した初戦では決勝点の起点となったが、「やや絡んだだけ」と自嘲気味に話していた。アシストの次はゴールを――。
ところが日本が同点に追いつき、60分を過ぎた辺りから互いにゆっくりとボールを回し始める。このまま引き分ければ、イタリアは2位通過が確定。日本も3位でグループステージ突破が決まるため、過剰にリスクを冒す必要がなくなったのだ。そんな展開に「ゴールを決めたい」遠藤はウズウズしていた。
「最後は欲が出ちゃって。焦れて、焦れて。正直、自分ですっげー仕掛けたかったんですけど、(その気持ちを)抑えて後ろに戻したり。こういうサッカーも知らないといけないと思いましたし、しっかり自制してがんばりました」
そう笑いながら本音を吐いた遠藤だが、世界大会で勝ち進むためには時に“したたかさ”や“駆け引き”が必要なことは分かっている。本当は自分がゴールを決めたかったし、堂安のようにケガでチームを離れるFW小川航基(ジュビロ磐田)のユニフォームを掲げたかった。「(ゴールパフォーマンスは)取られちゃいましたね」と冗談交じりに話してはいたが、悔しさもあっただろう。それでも「自分だけの大会ではない」とグッとこらえて賢い戦いを演じたことの意味は大きい。日本に足りないものの1つに挙げられることの多い“したたかさ”を世界舞台で見せた。遠藤が「勝つことよりも、ある意味大きな経験ができた」と口にするように、これからチームが駒を進めていくために必要な要素であるし、選手にとっても今後のサッカー人生において大きな糧になるはずだ。
イタリア戦でたまったフラストレーションは、決勝トーナメントで爆発させればいい。「本当に楽しみですし、ここからの時間を存分に楽しみたい」。どんな強敵であろうと、俊足アタッカーはゴールをこじ開けるつもりでいる。
取材・文=高尾太恵子
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By 高尾太恵子
サッカーキング編集部


