2017.03.29

【総括コラム】日本が得た収穫は「勝ち点6」…UAE・タイとの2連戦で見えた課題

日本代表
タイに快勝した日本代表だが、課題が多く見つかる内容でもあった [写真]=Getty Images
スポーツライター。日本代表の国際Aマッチは、2000年3月からほぼ全試合を現地取材。

 日本代表の3月シリーズの収穫は、最大勝点の「6」を積み上げたことだろう。

 昨年11月のサウジアラビア戦から今回の連戦まで、ほぼ4カ月の空白が横たわっている。しかも、トレーニングの回数は限られていた。新しいものに取り組むよりも、既存のオートマティズムを頼りにしたいゲームである。ところが、キャプテンの長谷部誠がUAE戦を前にチームを離れてしまう。

 ここで、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は思い切った選択をする。

 およそ2年ぶりに招集した今野泰幸を、長谷部の代役としてスタメンに抜擢したのだ。さらに、GKには川島永嗣を指名する。FCメスで出場機会のない彼も、昨年6月のブルガリア戦を最後に国際Aマッチから遠ざかっていた。

 今回と同じUAEを舞台とした2003年のワールドユース(現U-20ワールドカップ)に出場しているふたりは、チームの苦境を鮮やかに救う。「4-3-3」のシステムでインサイドハーフを務めた今野は、圧倒的な活動量でシステムの練度不足を補った。川島も1-0とリードした直後の一対一阻止で、試合の流れを引き寄せることに貢献した。

 チームの勝利を後押ししたのは、ふたりのベテランだけではない。

 3トップの右ウイングで先発した久保裕也は、13分に貴重な先制弾をマークした。今野の2点目もアシストした。所属クラブでの好調を持ち込んだ彼は、ハリルホジッチ監督の起用に鮮明なる解答を示した。ミランでベンチを温める本田圭佑よりも、現時点でスタメンにふさわしいことを結果で証明した。

 大迫勇也の貢献度も見逃せない。サウジアラビア戦に続いて最終予選2試合連続でスタメン起用された彼は、最前線でしっかりとボールを収めた。「攻撃のタメは作れたけど、個人的にはまだまだ」と自己評価は厳しいが、この26歳は今野の2点目に絡んでいる。吉田麻也のロングフィードを空中戦に競り勝ち、久保へつなげたのだった。

 ところが、勝点3と引き換えに、日本は今野と大迫を失う。ケガで戦線離脱をしてしまったのだ。

 アル・アインでのUAE戦から5日後の28日、日本はタイをホームに迎え撃つ。ハリルホジッチ監督は岡崎慎司をセンターフォワードに指名し、酒井高徳をボランチで起用する。MFの立ち位置も逆三角形からダブルボランチ+トップ下へ修正し、酒井高と山口蛍がダブルボランチを組む。トップ下は香川真司だ。

 日本がUAEを下した23日のゲームで、タイはサウジアラビアに敗れていた。ただ、チャンスの数では劣っていなかった。決定機を生かしていれば、0-3というスコアにはならなかっただろう。

 埼玉スタジアムへやってきたタイも、専守防衛を決め込んではいなかった。日本は8分に先制点を奪い、19分にも追加点をあげるが、足元は不安定なのだ。自分たちのミスでタイに攻撃の糸口を与え、やがて翻弄されていくのである。

 リードをしているのにリズムが悪いままで前半を終え、ハーフタイムを挟んでも修正が効かない。後半に2点を追加したものの、力の差を見せつけられないまま終了のホイッスルを聞いたのだった。

 タイ戦からポジティブな要素を探せば、3人の得点者にスポットライトがあたる。香川と岡崎は、最終予選7試合目で初ゴールをマークした。取るべきふたりがようやくネットを揺らしたのは、チームの推進力となるだろう。

 久保の2試合連続弾も頼もしい。最終予選前半に得点源となった原口元気だけでなく、23歳のリオデジャネイロ・オリンピック世代が存在感を高めたことで、3トップを採用するメリットがはっきりと表れた。

 ディフェンスラインの背後を突いていく久保のフリーランニングは、ハリルホジッチ監督が求めるタテに速いサッカーを体現する。右から久保が、左から原口が攻撃に深さを作り出すことで、トップ下の香川やボランチがスペースと時間を持つことができる。MFの立ち位置は流動的だが、前線を3枚で構成するのはこのチームの基本布陣となっていくはずだ。

 2試合を通したプラス材料はどうだろう。

 UAE戦の「4-3-3」は、戦術的なオプションとなったのか? タイ戦では「4-2-1-3」のような布陣で戦ったため、「4-3-3」は今野ありきとなっている。

 長谷部も今野もいなかったボランチに、酒井高を起用したのは今後につながるか? 所属するハンブルガーSVではボランチでもプレーしているが、何しろ急造のコンビネーションである。そして、時間の無さを個人の頑張りで補う意味で、今野ほどのインパクトは残せなかった。ボランチの選択肢になっていくかもしれないが、評価は持ち越された。

 そもそも、選手層は本当に厚くなったのか? 

 ハリルホジッチ監督はUAE戦、タイ戦ともに3枚の交代カードを切ったが、フレッシュな人材はUAE戦の倉田秋だけだ。タイ戦での本田、清武、宇佐美貴史の投入は、彼らのゲームフィーリングを呼び覚ますためのように映る。所属クラブで試合に出ている浅野拓磨や小林悠にチャンスを与えることで、彼らが自信を磨く機会にすることもできたのだが……。

 アンタッチャブルな存在を作らないハリルホジッチ監督の選手起用は、チーム内に〈正しい競争〉をもたらしている。それこそが勝点6奪取とグループ首位浮上を後押ししたのだが、日本は何も手にしていない。いまはまだ、収穫よりも課題に眼を向けていく時期である。

文=戸塚啓

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