2016.12.29

【コラム】敗戦がハリルジャパンにもたらした“変化”…激動の2016年から何を学ぶか(後編)

原口元気
代表での存在感を一気に高めた原口元気 [写真]=Getty Images
スポーツライター。日本代表の国際Aマッチは、2000年3月からほぼ全試合を現地取材。

 敗戦は、変化を呼ぶ。

 9月1日のUAE戦に敗れた日本は、5日後にバンコクでタイと向き合う。ロシアW杯アジア最終予選の第2戦だ。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、この試合で原口元気と浅野拓磨をスタメンで起用する。先発から外れたのは、清武弘嗣と岡崎慎司だった。

 アウェイゲームとはいえ、グループ内でもっとも力の落ちる相手である。勝点3を確実に持ち帰らなければならない。経験重視のスタメンが予想されたなかで、ハリルホジッチ監督はフレッシュな戦力を抜擢した。

 果たして、采配は的中する。原口は先制点を、浅野は追加点をあげ、2-0の勝利に貢献したのである。

浅野拓磨

タイ戦でゴールを挙げ、本田(右奥)や香川(手前)の祝福を受ける浅野(左)[写真]=Getty Images

 UAE、タイとの連戦を終えたハリルホジッチ監督は、「所属クラブでしっかり試合に出場できていない選手が多く、彼らはフィジカルコンディションに問題を抱えていた。ケガ人も負傷明けの選手もいた。私が監督に就任して以降、もっとも難しい時期だった」と話した。しかし、指揮官の悩みはさらに深まっていく。1か月後の10月に集合したチームは、所属クラブでコンスタントに出場機会を得られない選手をさらに多く抱えることとなる。本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、吉田麻也らに加え、新天地セビージャで好スタートを切っていた清武も、ピッチから遠ざかっていた。

 連敗スタートのイラクを迎えた最終予選の第3戦は、開始早々にいきなりピンチを迎える。左CKからヘディングシュートを許し、左ポストに辛うじて救われた。

 それでも、26分に先制する。所属クラブで定位置をつかんでいる原口が、2試合連続弾を技巧的なヒールで流し込んだのだ。

 大切なのはここからである。追加点の好機を逃す場面が続けば、UAE戦の記憶が立ち上がってくる。それなのに、チャンスを生かせない。それどころか、60分に追いつかれてしまうのだ。UAE戦と同じリスタートから、ヘディングシュートを決められたのだった。

 このまま1-1で引き分けていたら、ハリルホジッチ監督は解任されていたかもしれない。だが、これまで数多くのドラマを生み出した埼玉スタジアムで、チームはドラマティックな勝利をつかむ。90+5分、山口蛍が起死回生の右足ミドルを突き刺したのだ。

 5日後にはメルボルンへ舞台を移し、ここまで2勝1分けのオーストラリアと対峙した。ハリルホジッチ監督は岡崎をスタメンから外し、本田を1トップで起用する。2列目の右サイドには小林悠を指名した。リスタートからの失点が続いており、オーストラリアの高さに対抗するための手当てだった。トップ下で起用された香川真司も、序盤から守備に奔走する。

 自分たちの良さを出すよりもまず、相手の良さを消し去るサッカーである。1-1で迎えたゲームの最終盤には、原口に代わって丸山祐市が投入された。センターバックの彼は、そのまま2列目のポジションに入った。

 敵地で勝点1をつかむことは、相手に勝点3を与えないことを意味する。「アウェイはドローでOK」という原則に基づいた指揮官は、プラグマティックな戦略を貫いたと言える。ただ、物足りなさは募った。所属クラブで試合に出ている選手を有効活用せず、日本らしさを封印したからだった。

 最終予選の折り返しとなる11月のサウジアラビア戦に向けて、ハリルホジッチ監督はひとつの決断を下す。15年6月のシンガポール戦を最後に国際Aマッチに出場していない大迫勇也を、サウジ戦のスタメンに加えるのだ。2列目の右サイドにはリオ五輪世代の久保裕也が、トップ下には清武が入る。本田、香川、岡崎をベンチ置く新たな布陣は、「勝つためにより良いチームを選ぶ」(ハリルホジッチ監督)という判断に基づいたものだった。

 果たして、日本は勝利をつかむ。ここまで3勝1分で首位に立つサウジを、2-1で下したのだ。同日のゲームでオーストラリアがタイと引き分けたため、勝点10の日本はグループ2位で前半戦を終えたのだった。

大迫勇也

サウジアラビア戦に出場する大迫(中央)

 もっとも、楽観視できる状況ではない。首位のサウジに勝点で並んだものの、3位のオーストラリア、4位のUAEとの勝点差はわずかに「1」である。

 ロシアW杯へストレートインできる2位以内の確保には、勝点20以上が安全圏だ。前半戦同様に3勝1分1敗以上の成績が必要だが、中東勢とのアウェイ3試合を残している。

 海外組のコンディションも不透明だ。フランクフルトでリベロを任されている長谷部、ハンブルガーSVでキャプテンを務める酒井高徳、移籍1年目のマルセイユでレギュラーを張る酒井宏樹、原口、大迫らは、来年3月以降もゲーム体力やゲーム勘に不安はなさそうである。岡崎と吉田麻也のプレミア勢も、シーズン開幕当初より所属クラブでの見通しは明るい。

 その一方で、本田、香川、長友、清武らはチーム事情に揺さぶられている。ハリルホジッチ監督は引き続き、彼らのコンディションに神経を尖らせていかなければならない。

 いずれにせよ、正しい競争原理を持ち込まずしてチームの成長はない。最終予選突破はもちろんその先に見据える世界仕様のレベルアップも、アンタッチャブルな選手を作らないことが大前提になる。何をすべきか、何をすべきでないのかは、歴史が教えてくれている。

文=戸塚啓

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