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【コラム】代表復帰戦で堂々の2得点…エース候補に名乗りを上げた大迫「次が大事」

2016.11.12

1年5カ月ぶりの代表復帰戦で圧巻の2ゴールを挙げた大迫勇也 [写真]=三浦彩乃

「結果にこだわってやりたい。ゴールだけを狙っていく」

 日本代表合宿に合流した7日、大迫勇也が口にしたその言葉からは、確かな自信が感じられた。今シーズンはヨーロッパで戦う多くの日本人選手が苦境に立たされているが、大迫は在籍3シーズン目を迎えたケルンで確かな存在感を示している。チームの絶対的エースであるアントニー・モデストとともに攻撃陣をけん引し、ここまで公式戦4ゴール。

「FWで出られているので。そこが一番大きい」。本人の言葉通り、好調の理由は起用されるポジションにある。ケルンでの過去2シーズンはサイドで使われることも多く、ゴールから遠い距離でのプレーを強いられていた。だがその状況も一転、今シーズンは開幕から一貫して本来のポジションであるFWとしてピッチに立っている。不本意なポジション起用に泣かされた過去と決別し、ブンデスリーガで躍動する大迫は“日本代表待望論”を巻き起こすまでになった。

 迎えた11日のキリンチャレンジカップ2016、オマーン戦。スタメンとして3トップの中央にいたのは、大迫だ。およそ1年5カ月ぶりとなる日本代表のピッチ。与えられた役割は本分であるストライカー。舞台は古巣・鹿島アントラーズのホーム、カシマサッカースタジアム――。燃えないはずがなかった。

「内容どうこうよりも点を取ること。それしか考えていなかった」。試合後に語った通り、大迫は61分にピッチを退くその瞬間まで、オマーン代表にとって“危険な存在”であり続けた。中盤まで下がって組み立てに参加することは最小限に留め、常に相手の最終ライン付近に位置して好機をうかがう。相手DFとポジションを争いながら、何度も、執拗に“裏への抜け出し”を狙う。マークについていた背番号4のナディル・バイト・マブルーク、背番号13のアブドゥル・サッラム・アルムハイニは、明らかに大迫を捕まえ切れていなかった。

 そうして迎えた32分、歓喜の瞬間は訪れる。ゴール前の混戦から左サイドでボールを拾った清武弘嗣(セビージャ)が、中央に視線を向ける。その時、ゴールに最も近い位置で手を挙げてクロスを要求したのが大迫だった。清武がクロスを送った瞬間、大迫は一度足を滑らせたがすぐに動き直し、ファーで待つ本田圭佑(ミラン)と重なりながらも頭で合わせた。日本代表で実に3年ぶりとなる大迫のゴールは、貪欲さと使命感にあふれるものだった。

 カシマスタジアムの熱狂に押された大迫は42分、さらなる輝きを放つ。右サイドに開いた清武から山口蛍(セレッソ大阪)を経由して中央の本田にボールがつながると、再びボールを受けた清武からオフサイドラインぎりぎりにポジションを取っていた大迫に鋭い縦パスが送られる。大迫はチェックに来た相手DFをあざ笑うかのように反転してかわすと、GKとの1対1を制して追加点を挙げた。

 日本代表はその後、清武、小林祐希(ヘーレンフェーン)が追加点を奪い、4-0と快勝を果たす。4日後に迎える大一番に向けてこの上ない弾みとなったこの試合、主役は間違いなく大迫だった。周囲の期待に押し潰されることなく、自信を力に変え、何より欲した“結果”を残した大迫。「懐かしい感じがしました。匂いというか……。自然とモチベーションが上がりました」。試合後、報道陣の前に現れた大迫は、古巣サポーターの前で挙げた2ゴールに充足感をにじませた。しかし、ここで足を止める気はない。

「次が大事です。次の試合でまた点が取れるように。まだまだこれからなので、頑張ります」

 その視線は、すでに次のサウジアラビア戦に向けられている。“日本代表のエース”の座を懸けて、大迫が再び勝負の時を迎える。

文=関口剛

By 関口剛

1984年、埼玉県生まれ。2014年のブラジルW杯開幕直前にフロムワンに入社。2019年10月から雑誌『SOCCER KING』編集長に。2023年に退社し、雑誌以外の世界へ活躍の場を広げる。

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