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【コラム】「勝負強さと思い切りのよさ」でトップ下の壁に挑戦 香川&清武を越えたい小林祐希

2016.11.06

6日のトレーニングに参加した小林祐希 ©JFA

 2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選4戦終了時点で勝ち点7とB組3位に甘んじている日本代表。11月15日の第5戦・サウジアラビア戦(埼玉)で勝ち点3を逃すようなことがあれば、本大会切符を自動的に得られる2位以内浮上が相当厳しくなる。結果次第ではヴァイッド・ハリルホジッチ監督の進退問題に発展しかねない大一番に向け、彼らは6日から茨城県内で事前合宿に入った。

 練習初日は、J2の公式戦がある山口蛍(セレッソ大阪)を除く国内組9人と4日にオランダ・エールディヴィジのスパルタ戦を終えて帰国した小林祐希(へーレンフェーン)の10人でトレーニングがスタートした。初冬のような肌寒さを考慮したのか、指揮官は冒頭ミーティングを2分程度で打ち切り、ランニングやミニゲームなどコンディショニング中心のメニューを約1時間、選手たちに課した。小林祐希は30分程度で一足先に上がり、入れ替わるように空港から直行してきた原口元気(ヘルタ・ベルリン)と酒井宏樹(マルセイユ)がグランドに登場。やはり30分ほどの軽い調整を行った。長谷部誠(フランクフルト)、本田圭佑(ミラン)ら欧州組の主力は7日以降に合流する見通し。彼らが揃ってから11日のテストマッチ・オマーン戦(鹿島)とサウジ戦に向けた戦術確認に入る模様だ。

 8月に念願だった海外移籍を果たし、今回初めて「海外組」として代表合流した小林は、初キャップを飾った6月のボスニア・ヘルツェゴヴィナ戦(吹田)の時に比べると、かなり肩の力が抜けた印象だった。

「日本にいた時と変わったのは、スプリントの回数が確実に増えてるのと、カバーリングの意識、空中戦の競り合い。この3つは自分でもかなり手応えを感じてます。パスでリズム作る、中盤で受けてチャンスメークっていうのは日本にいた時からやってたけど、もうちょっと高い位置で作るとか、点に直結するプレーを出すという要求に応えつつ、自分を出していきたい」と本人も短期間で大きな自信を得たという。

 そういう実感を得られたのも、9月10日のトゥヴェンテ戦でオランダデビューを飾って以来、2カ月間でリーグ8試合に連続出場しているから。現所属先では4-3-3の左MFで起用されるケースが多く、ジュビロ磐田でトップ下だった時より明らかに守備やハードワークへの意識が高まっている。5カ月ぶりに再会したハリルホジッチ監督からは「もっと守備の間合いを詰められる。自分で運んでドリブルでスピードアップしてシュートまで持っていくように」と指示を受けたと言い、そのアドバイスも素直に受け入れていた。

 ただ、残念ながら新天地ではまだゴールもアシストも記録できていない。ポジションが磐田時代より低めになったとはいえ、もともと目に見える結果に強くこだわっている男がこの現状に満足しているはずがない。

「アシストもゴールも1つもついていないのに代表に呼ばれたのは(違った部分を評価してもらえたという意味で)素直に嬉しかった」と今回の抜擢を前向きに捉えつつも、「俺が香川(真司=ドルトムント)君や清武(弘嗣=セビージャ)君との違いを何か見せるとしたら、勝負強さとか、ゴール前での思い切りのよさ。自分で判断して『こうしてみよう』と思い切って取り組む意欲、勇気を俺は持ってる」と本人も語気を強めたように、やはりここ一番で得点に直結するプレーを大胆にやってのけるのが、小林の真骨頂なのだ。

 国際Aマッチ83試合出場27ゴールの香川、同40試合出場3ゴールの清武に比べると、まだAマッチ1試合の小林は実績面では大きく劣る。その彼が代表の攻撃的MFとして定着し、レギュラーポジションを勝ち取るためには、恐れることなく積極的に行くことしかない。それだけの覚悟が今の彼にはある。

「(2人は)今でもすごい高い壁ですけど、いつまでも壁だ壁だって言ってたら、俺の成長も止まる。彼らもどんどん先に進んでるんで、それに追いつけ、追い越せ、そして突き放していかなきゃいけない。今回は(久しぶりに)彼らのプレーを間近に見て、一緒にパス交換できるチャンス。今の自分のレベルや立ち位置は、1個のパスをするだけで分かる。その手応えをつかむ意味でも、すごく大事な1週間弱になるかなと思います」

 最終予選に入ってから停滞感を打破しきれていないハリルジャパンには、こういう大胆不敵な若武者のエネルギーが必要だ。小林にはオランダで得たものを存分に発揮して、代表の雰囲気をガラリと変えてもらいたい。

文=元川悦子

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