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UAEの「戦術にはまった」  酒井宏ら出場メンバーが語る真の敗因、求められる自覚とは

2016.09.02

UAEに敗れ、本田とともにピッチを後にする酒井宏樹(右) [写真]=兼子愼一郎

 9月1日に行われた2018 FIFAワールドカップ ロシア アジア最終予選第1戦・UAE(アラブ首長国連邦)戦で、1-2とまさかの逆転負けを喫した日本代表。6大会連続となるW杯出場にいきなり暗雲が立ち込めた。悪夢から一夜明けた2日、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督と選手たちは10時から埼玉県内のグラウンドに集合。6日に行われる次戦・タイ代表戦(バンコク)に向けて新たな一歩を踏み出した。

 この日は、UAE戦にフル出場したMF香川真司(ドルトムント/ドイツ)と後半途中で交代したFW岡崎慎司(レスター/イングランド)がミーティングに参加した後、大事を取って室内で調整した。それ以外のスタメン組はランニングや体幹トレーニングで回復に努め、途中出場したFW宇佐美貴史(アウクスブルク/ドイツ)、FW原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)らは5対5の実戦的なメニューなどをこなした。

 この練習では原口がトップ下の位置に入った。タイ戦では2トップの背後で彼がプレーする可能性もありそうだ。本人は「今はああいう位置で考えられているので、毎日毎日が練習だと思う。普段チームでできていない分、ここで吸収しないといけない。あのポジションで(試合に)出たら怖がらずにやりたいし、たとえボールを取られても、自分が追いかけたら(ボールを)取り返せると思う」と意欲的に語っている。UAE戦の控え組がチーム活性化に燃えているようだ。

 ハリルホジッチ監督はこの日、“初戦黒星を引きずらずに前向きになること”の重要性を再三、強調したという。とはいえ、UAE戦の敗因を客観視することも重要だ。もちろんカタール人主審の不可解な判定、FW浅野拓磨(シュトゥットガルト/ドイツ)のゴールを見逃されたプレー、UAEの2カ月に渡る長期合宿の成果などさまざまな要因はあるだろうが、日本がつけ入る隙を作ったことも事実だろう。

 右サイドバックでフル出場したDF酒井宏樹(マルセイユ/フランス)は「特に2失点した後はサイドを上がらされて、クロスを入れるように仕向けられた」と敗因を分析する。

「(酒井)高徳(ハンブルガーSV/ドイツ)とは、“両サイドバックがどうだったか”を今日、2人ですり合わせました。ポジショニングは試合状況によってコロコロ変わったけど、本当に2失点目の後は相手に上がらされた。向こうも引いてきて、自分が前にポジションを取らない選択肢はなかった。クロスを上げさせられる場面もかなり多かったので、(ポジションを)上げない勇気も必要だったかもしれない。向こうの戦術にはまって悪い方へ悪い方へ進んだ気がします」

 岡崎も試合後に言っていたが、今の日本には長身FWがいない。単純なクロスを上げても相手DFに跳ね返されるだけだ。UAE戦の日本はセカンドボールをうまく拾えず、効果的な二次攻撃、三次攻撃を仕掛けることができなかった。

「最終予選になって1つレベルが上がった状態だと、セカンドボールも五分五分になってくる。よりアラートな(研ぎ澄まされた)状態にしておかないといけなかった。俺のサイドの選手は守備をしないという情報もあって、あれだけ前に行かせてもらっている中で、絶対に結果を出さないといけなかった。そこはかなり重く受け止めています。次は相手の状況を見て、しっかりと整理していきたいと思います」

 酒井宏はサイド攻撃の改善点を口にした。アジアの相手は日本に対して引いて守ってくるのが常。それを攻略するために、効果的なサイドアタックは不可欠だ。そこが機能しなければ、UAE戦の二の舞になることも十分考えられる。彼や酒井高ら、前回のアジア最終予選経験者にはより意識を高めてもらうべきだろう。

 大一番で代表デビューを果たしたMF大島僚太(川崎フロンターレ)も練習前にFW本田圭佑(ミラン/イタリア)からアドバイスを受け、問題点を整理したようだ。

「もう少し、中と外の使い分けができれば状況も変わったと思う。僕はボランチなので、そういう使い分けができるように、全体を見るようにしないといけないなとは思いました」と若きボランチは淡々と語っていたが、確かに彼のところで攻撃の流れが止まったり、とMF長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)の連係不足が垣間見えるなど、まだまだプレーが洗練されていない印象も強かった。彼らのような若い世代がUAE戦の敗因をしっかりと分析し、今後に向けてフィードバックしていくことができれば、日本はもう少しバリエーションのある戦い方ができるはずだ。

 本田・香川・岡崎の三枚看板に依存せず、誰が出ても自分で判断してプレーできるような集団になれるのか。日本が逆境を克服していくためにも、これまで主力ではなかった選手たちの強い自覚が求められる。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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