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苦境に追い込まれるほど輝く本田圭佑 ミランでの鬱憤を晴らし、存在価値の証明を

2016.08.29

29日に日本代表へ合流し、トレーニングを行った本田圭佑 [写真]=JFA

 9月1日の2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選初戦・UAE(アラブ首長国連邦代表)戦(埼玉)に向け、28日から埼玉県内で始動した日本代表。2日目の29日は本田圭佑ミラン/イタリア)、岡崎慎司(レスター/イングランド)、吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)、酒井高徳(ハンブルガーSV/ドイツ)、武藤嘉紀(マインツ/ドイツ)の5人が合流。22人でトレーニングを実施した。上記5人はクールダウン中心のメニューをこなし、前日到着の長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)と香川真司(ドルトムント/ドイツ)は別メニューで走りやパス交換などを行った。それ以外のフィールドプレーヤー12人は6対6やクロス&シュートといった実戦的内容を1時間半にわたって消化。GK3人を含めてかなり追い込んだ印象だった。

 盟友・岡崎とのコンビで、長谷部・香川組との2対2のサッカーバレーで練習を締めた本田は、久しぶりの代表合流に上機嫌の様子だった。6月のキリンカップ2連戦(ブルガリア&ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)は負傷で棒に振ったため、代表戦のピッチは3月の2次予選ラストのシリア戦(埼玉)以来。本人もひと際高いモチベーションを抱いているに違いない。

 とはいえ、ミランでの状況は当時より確実に厳しくなっている。シニシャ・ミハイロヴィッチ監督が率いていた3月時点では右サイドの定位置を確保。イタリア国内での評価も右肩上がりだった。ところが4月にクリスティアン・ブロッキ監督が後を引き継ぐと出場機会が激減。今シーズンの動向が危ぶまれていた。その予想通り、新たに就任したヴィチェンツォ・モンテッラ監督は右サイドにスソを抜擢。本田は今シーズン開幕から2試合出場なしという苦境にあえいでいるのだ。

「序列のスタート地点に関して、今までと何か変わったかというと、僕が『契約満了に向かっている選手』っていう扱いになってきている気がする。だからやっぱり(序列が)低いんで、もう少しアプローチのやり方も変えないと、簡単には試合に出られないのかなという気がしますけどね」と本人は冷静に自身の立場を分析していた。

 公式戦に出ていなければ、試合勘やコンディションに問題が出ても不思議はない。「その質問も何回も受けているんですけど、問題ない状況でないと試合に出るべきではない。心身ともに準備できているつもりでいます」と本田は強気の姿勢を示していたが、UAE戦はふたを開けてみないと分からないところがある。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督もナーバスになっていることだろう。

 しかしながら、彼はここ一番の絶対的な勝負強さを持つ男。4年前の2014年ブラジルワールドカップアジア最終予選序盤戦でも本田の真骨頂がいかんなく発揮されている。

 初戦・オマーン戦(埼玉)を控えた本田の状況は決して順風満帆とは言えなかった。当時所属のCSKAモスクワで右ひざ半月板損傷、左太もも負傷と立て続けにケガを強いられていたからだ。日本代表は2011年8月の日韓戦(札幌)から2012年5月のアゼルバイジャン戦(エコパ)まで9カ月もの長期欠場を余儀なくされ、直前のアゼルバイジャン戦(エコパ)で復帰したばかり。いくら心機一転、背番号を18から4に変更したといっても、最終予選で活躍できる確信は本人にもなかったに違いない。

 ところが、オマーン戦の開始12分、本田は電光石火の先制弾を挙げる。長友佑都(インテル/イタリア)の左クロスに絶妙のタイミングで飛び込んで左足を一閃。チーム全体に火をつけ、3-0の圧勝のけん引役となった。続くヨルダン戦(埼玉)でハットトリックを達成し、さらにオーストラリア戦(ブリスベン)でも栗原勇蔵(横浜F・マリノス)の先制ゴールを巧みにお膳立てしてみせた。序盤3連戦の本田の爆発がなかったら、日本がブラジルへ行けていたかどうかも定かではない。それほど彼の存在感は際立っていたのだ。

 その勝負強さは30歳になった今も健在だ。ハリルホジッチ監督体制移行後も、昨年11月の2次予選・カンボジア戦(プノンペン)終了間際にダメ押し点を奪うなど、大黒柱らしさを随所に見せつけている。苦境に追い込まれれば追い込まれるほど、凄まじい集中力を発揮するのが本田圭佑の凄さ。そこは今回も信じていいだろう。

「勢いは大事なんで、いい雰囲気で初戦を乗り切りたいですね。UAEも身体能力が高い選手が増えてきて、ある程度戦えるメンツになってきた。そこは我々もすごく警戒しているところ。いいプレッシャーを感じながら、しっかりやるべきところを徹底すれば、必ず行けると思います。前回の最終予選より今回の方が厳しくなるってことは、相対的に日本の成長率が周りに比べて落ちているということ。追いつかれているってことになってしまいますので、そうではいけないという結果を僕は見せたいと思ってます」と彼は改めて語気を強めた。

 UAE戦は2015年アジアカップ(オーストラリア)のリベンジを果たすとともに、ミランでの鬱憤を晴らす絶好のチャンス。本田圭佑の存在価値を改めて世界に知らしめてほしいものだ。

文=元川悦子

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