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【五輪プレビュー】「本当の逆境は今」…追い込まれた日本、運命のスウェーデン戦は攻めの姿勢で逆転突破へ

2016.08.10

前日練習に臨んだ五輪代表 [写真]=千葉格

 スウェーデンとの第3戦のテーマは「耐えて勝つ」ではなく「攻めて勝つ」――。

 リオデジャネイロ・オリンピック日本代表にとって、いよいよ運命の一戦を迎える。現在グループBで2位につける日本は、最終戦でナイジェリアと戦うコロンビアの結果次第という他力本願の状況ではあるが、実質スウェーデンを下さないことには、未来の扉は開かない。

 このサバイバルマッチを迎えるにあたって手倉森誠監督は、きっぱりと言った。

「まず攻撃的に仕掛けないといけない。世界での1勝が決勝トーナメントへの1勝になるように、攻守ともに連動したサッカーをやっていきたい」

 これまでの戦いでは「前半は粘り強く守り、後半に入って仕掛ける」という「後半勝負」のゲームプランを描いてきたが、スウェーデン戦で何よりも必要なのは「先制点」だ。前半からラッシュを掛けて先制し、同点を狙って出てくる相手に対してカウンターから追加点を奪う――そんな展開が望ましい。

「自分が前線でもっとキープして先に点を取れるように頑張りたい」と話したのは、オーバーエイジの興梠慎三(浦和レッズ)である。また、キャプテンの遠藤航(浦和)も「もちろん慎重に戦う必要はあるけれど、大胆さも忘れずに攻めたい」と力を込めた。スウェーデンの1、2戦の試合内容を見る限り、そうした試合展開に持ち込むことが、決して不可能な相手ではない。

「組織的で、一人ひとりのポジショニングが良く、ボールを回すのが全体的に巧くてヨーロッパっぽいチーム。個に固執せず、チーム全体でボールを運び、組織で攻撃して、守ってくるチームだと思います」

 そう分析したのは、原川力(川崎フロンターレ)だ。実際、前線に陣取る背番号11番、アストリト・アイダレヴィッチ(エーレブルー)は190センチの長身を誇るというのに、彼にロングボールを放り込むわけではなく、ショートパスを丁寧につなぐオーソドックスな攻撃を採ってくる。

 クラブから50人以上の招集を断られ、メンバーを構成するのにも苦労したとあって、ナイジェリアのFWサディク・ウマル(ローマ/イタリア)や、コロンビアのFWテオフィロ・グティエレス(スポルティング/ポルトガル)のように1対1の対応で苦しめられる厄介な選手は見当たらない。だからこそ、原川は続ける。

「ナイジェリアほどディフェンスラインのルーズさはないけれど、日本っぽいチームなのでやりやすいと思う。感覚的にはJリーグのチームのような感じなので、いつも通りやればいいと思います」

スウェーデン戦の予想スタメン

スウェーデン戦の予想スタメン

 気になるスタメンについてだが、コロンビア戦の翌日に急きょマナウスに残って行なわれた2日前のトレーニングでも、スウェーデン戦前日に行なわれたトレーニングでも、戦術練習は行なわれず、回復メニューに終止している。そのため、スウェーデン戦のピッチに誰が立つのか、はっきりとした答えは分からない。ただし、これまでの指揮官の言動を見れば、そのヒントはいくつか見出すことができる。

「連投する選手とテコ入れするところがある」との前日会見での言葉から、何人かのメンバーを入れ替えて臨むのは間違いない。

 GKに関しては、コロンビア戦で好パフォーマンスを演じた中村航輔(柏レイソル)が続けてゴールマウスに立つのが普通だが、指揮官はコロンビア戦前に櫛引政敏(鹿島アントラーズ)に対して「必ず自信を回復させる機会をつくるから」と声をかけている。スウェーデン戦で敗退が決まってしまえば、「回復の機会」がなくなってしまうため、チーム立ち上げの頃から正GKを務め、信頼の厚い櫛引を送り出す可能性も少なくない。

 また、大会前に指揮官は「間違いなく全員ピッチに立ちます」と宣言している。ここまで出場機会がまったくないのはDF岩波拓也(ヴィッセル神戸)ただひとり。おそらくスウェーデン戦のスタメンに名を連ねるはずだ。

 さらに、コンディション面を考えれば、サイドバックのどちらかに変えて、亀川諒史(アビスパ福岡)を起用したい。2試合続けてフル出場している室屋成(FC東京)に疲労が溜まっていること、オウンゴールを犯した藤春廣輝(ガンバ大阪)に自信を回復させる機会を与えたいことから、亀川は右サイドバックとしてピッチに立つのではないだろうか。

 スウェーデン攻略のポイントとして手倉森監督は「相手のスローテンポに付き合わないこと。相手の組織の間、早く取って早く入れて破るというような、攻撃を仕掛けて行かなければいけない」と語っている。だとすれば、コロンビア戦ではスーパーサブに回った大島僚太(川崎フロンターレ)と南野拓実(ザルツブルク/オーストリア)をスタメンに復帰させる手が考えられる。

 逆に前線には、コロンビア戦でフル出場した浅野拓磨(アーセナル/イングランド)を再びスーパーサブに戻し、2戦目に出場機会がなく「代表の誇りを持って戦うという気持ちに満ち溢れている」と、準備万端の鈴木武蔵(アルビレックス新潟)を起用するのも一考だ。

 気になるのは、浅野が右かかと痛、南野が右足首痛のため、スウェーデン戦前日のトレーニングが別メニューだったことだ。ただし、チーム関係者によれば、いずれも「試合に出られないほどではない」という。スウェーデン戦前日に報道陣の前に立った浅野は「(負傷箇所の回復具合は)明日になってみないと分からないけど、僕自身はやりたいと思っている」ときっぱりと言った。

 2014年1月のチーム立ち上げから2年半。オマーンで行なわれたAFC U-22アジアカップでも、韓国の仁川で開催されたアジア競技大会でもベスト8で敗れ、「勝負弱い」と言われてきた集団が次第に逞しさを身につけ、オリンピックの舞台までやって来た。

 集大成となる戦いが迫っている。だが、このスウェーデン戦を最後の戦いにするつもりもない。

「ここで終わるわけにはいかない。このチームでもっと戦いたいという想いはある」

 そう語った遠藤は、自らの言葉を噛みしめるようにして続けた。

「僕らはU-19の頃にアジアで悔しい思いを味わい、難しいと言われていた中でアジア最終予選を突破して、自分たちの逆境をはねのける力に対して自信が持てるようになった。ただ、本当の逆境は今、迎えていると思う」

 この修羅場を乗り越えてこそ、本当に逆境に強いチームになれる――。運命のスウェーデン戦は8月11日朝7時(日本時間)にキックオフの笛が鳴る。

文=飯尾篤史

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