2016.07.07

悪夢のケガを乗り越え…世界への挑戦権を手にしたDF室屋成「五輪はチャンス」

室屋成
サッカーキング編集部

 苦難の約4カ月間を乗り越え、リオ行きの切符を掴み取った。6月29日にリオデジャネイロ・オリンピック前の国内最終戦として開催されたU-23南アフリカ代表戦。逆転ゴールにサポーターから歓喜の声が上がった時、ピッチにはガッツポーズを作るDF室屋成の姿があった。「できることはやった」。大一番でアシストを記録し、手倉森誠監督の目の前で健在ぶりをアピールした。

 果たして、7月1日に行われた最終メンバー発表会見で指揮官の口から室屋の名前がアナウンスされた。2月の左足骨折から復活を遂げた22歳は、以前よりもたくましく、精悍さが増したように感じる。己の可能性を切り開くために――。よみがえった攻撃的サイドバックが大きな野望を抱き、夢の舞台へ挑む。

室屋成
インタビュー・文=高尾太恵子
取材協力=ナイキジャパン

入院中は苦しかった。でも、「絶対に戻ってやろう」という意地があった

――手倉森ジャパン初招集から約2年が経ちました。(編集部注:チーム立ち上げは2014年1月。室屋は2014年8月の福岡合宿で初めて招集された)
室屋成(以下、室屋) 僕はメンバーに定着するまで時間が掛かりました。リオ五輪アジア一次予選(2015年3月開催)も追加招集でしたし、何度かメンバーを外れて、また戻って来る、みたいなことが多かった。その度に、今の自分に足りないものは何かを考えさせられました。でも、そういう経験ができたことはすごく良かったと思っています。その悔しさだったり、「必ずこのチームに戻って来て、絶対にポジションを奪ってやる」という気持ちがあったからこそ、アジア最終予選はスタメンで戦えたと思う。この2年間、テグさん(手倉森監督)と一緒にやることができて本当に幸せでしたし、自分にとっては代表に関わることができたおかげで、大きく成長したと思っています。

――具体的にプレー面で変化を感じる点は?
室屋 守備面ですね。テグさんは守備の部分で厳しい要求をしてくるので、一対一の部分もそうですけど、クロスボールの対応は自分のマイナスポイントだということに気付かされました。テグさんと話し合ったり、クロス対応の練習もしましたよ。このチームに携わったことで、守備面が本当に成長したと感じています。

――得意とする攻撃参加を磨いたというよりも、足りない部分を強化できた?
室屋 そうですね。やっぱりサイドバックなので、まずは守備が大前提だと思うんです。しっかりとした守備があってこそ、武器とする攻撃の良さが出ることに気付かされた。それはテグさんのおかげですし、このチームで学んだことです。

――本大会に向けて、そしてFC東京とプロ契約を結んでこれからという時期に左足ジョーンズ(第5中足骨基部疲労)骨折で全治3カ月と診断されました。
室屋 手術を終えてから約2週間の入院生活では、リハビリもほとんどできない状況だったので、正直焦りはありましたね。

――入院中は感情のコントロールが難しかったのでは?
室屋 難しかったですね。一日中寝たきりで過ごしていたので(笑)。1時間くらい、ただ壁を見つめている時もありました。周りがすごく期待してくれていた中でのケガだったので、不甲斐なさというか、申し訳ない気持ちがすごくあった。それが苦しかったですね。

――どのようにしてモチベーションを保ったのでしょう?
室屋 FC東京で試合に出ることと、オリンピックに出場すること。この2つが支えになりました。医師の「本大会には間に合う」という言葉を信じてやってきましたし、この2つの目標があったからこそ、ここまで戻って来られたと思います。

――本大会前に戻って来る自信はありましたか?
室屋 「絶対に戻ってやろう」と思っていました。自信というか、もう意地ですね。

室屋成

――実際にリハビリで取り組んだことは何でしょう?
室屋 できる限り復帰した時にスムーズに入っていけるコンディションを目指して、とにかく筋力を落とさないように取り組みました。体の使い方や、体重の掛け方が悪かったから疲労骨折をしたと思うので、左右のバランスを意識した体作りをやっていました。最初は歩くだけでも痛い時があって、正直、「本当に間に合うのかな?」と不安になることもありましたよ。

――地道なリハビリを経て、藤枝MYFC戦(6月12日開催のJ3第12節)に出場。FC東京のユニフォームを着て、プロデビューを飾りました。
室屋 J3ではありましたけれど、ピッチに入った瞬間にたくさんの人が僕の名前を呼んでくれたんです。自然と熱いものがこみ上げてきましたし、「やっと戻って来られた」、「サッカーができて幸せだな」って実感しましたね。あれだけ大勢のサポーターが声を掛けてくれるなんて、今まで経験したことがありませんでした。大好きなサッカーを職業にできていることが、いかにすごいことかを改めて感じましたね。

――そして、手倉森ジャパンにも復帰。南アフリカ戦では矢島慎也選手のゴール(チーム2点目)をアシストし、復活をアピールしました。
室屋 久しぶりの代表戦でしたけど、そんなに緊張することなく試合に入れました。やっぱりサポーターの声援が大きくて気持ち良かったですし、プレーしていて楽しかったです。確かにアシストは良かったと思いますけれど、試合全体を見たら満足はできない。復帰してから4試合目で90分間プレーできたことは収穫でしたけれど、もっと質を上げていかないといけないという気持ちのほうが大きいですね。

――本番まであと約1カ月あると考えた時に、現状のコンディションは自分の中で合格ラインに達していますか?
室屋 そうですね。正直、もっと動けないと思っていましたから(笑)。ああいった緊張感のある試合で想像以上に動けたので、手応えはあります。ここまで回復できたのは、FC東京のスタッフやトレーナー、周りのサポートのおかげだと思っています。本当に感謝したいです。

室屋成

オリンピックで活躍すれば、日本だけではなく世界で評価される

――改めて、室屋選手にとってオリンピックとはどんな舞台ですか?
室屋 オリンピックは誰もが知っていて、日本国民全員が見るような大きな舞台。僕も小さい頃から見ていましたし、そういう舞台で日本を背負って戦えることは本当に誇りです。注目度も高いですし、そこで活躍して次のステップに行きたいという気持ちが強いですね。

――次のステップとは?
室屋 オリンピックの先にはA代表があると思っています。テグさんも「オリンピックがすべてではなく、オリンピックで活躍することで次のステップが広がってくる」と常に言っていましたし、自分もそこを目標に置いています。

室屋成

――開催国のブラジルは、オーバーエイジ枠でネイマール(バルセロナ)、ドゥグラス・コスタ(バイエルン)といった世界トップクラスの選手が出場します。
室屋 すごいですよね。ぜひ、マッチアップしてみたい。もし、止めることができたら周りも黙ってはいないと思うので、やっぱりオリンピックはチャンス。非常に楽しみですね。ネイマール選手だけでなく、世界のビッグクラブでプレーしているような才能ある選手が出場してくる大会。ディフェンダーが最も評価されるのは、優れた相手を抑えた時だと思います。そういう選手たちを自分がどれだけ止められるか、どれだけ戦えるのかを見せたいです。

――次のステップに行くためにも、まずはオリンピックでしっかりと結果を残したいですね。
室屋 そうですね。オリンピックで活躍すれば、日本だけではなく世界で評価されるはず。世界中からスカウトマンが見に来るだろうし、そういう意味でも多くの可能性がある大会だと思っています。だからこそ、活躍して自分の可能性をどんどん広げたい。今は楽しみで仕方がないです。


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